ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ありんすちゃんは今日もヴァンパイア・プライドに抱っこされて階層の巡回をしています。
「……プスゥ……」
何やら妙な音がしました。
「……プー……プー……プー……」
ヴァンパイア・プライドの歩みに合わせて変な音が続きました。ありんすちゃんは二人のヴァンパイア・プライドの顔を代わる代わる見ました。二人ともブルブルと顔を振って否定します。
ありんすちゃんは不満足そうでしたが、それ以上追求しませんでした。
お昼になり、ありんすちゃんが本日のスペシャルメニューのトリプルチーズバーガーにかぶりついた時にまたもや「プププースゥー」という音がしました。
すぐさまありんすちゃんは周りを見回してみましたが、誰もいません。そこにはありんすちゃんだけで、他には離れた席に一般メイドが三人いるだけです。
「ププププププー」
突然、ありんすちゃんのすぐ近くで音がしました。一般メイド達が遠巻きにありんすちゃんを見つめていました。ああ、なんという事でしょう? 彼女達はきっと今の音がありんすちゃんが出したと思っているに違いありません。ありんすちゃんは知らず知らず顔が赤くなっていくのを感じました。仕方なく食事を止めてそそくさと食堂を出て行くのでした。
第二階層屍蝋玄室のありんすちゃんの部屋のベッドに仰向けになって天井を眺めながら、ありんすちゃんは考え事をします。
時折、「ププー」と音がします。この部屋にはありんすちゃんしかいませんから音はありんすちゃんからしているとしか思えません。
ありんすちゃんは真っ赤になって恥じらうのでした。
「このままではプーさんになってちまうでありんちゅ」
ありんすちゃんは昨日ルプスレギナから聞いた『くまのプーさん』という話を思い出すのでした。
『くまのプーさん』とは……
※ ※ ※
「ありんすちゃんは知っているっすか? 『くまのプーさん』の話」
ありんすちゃんは首をブルンブルンと振りました。
「うーん……知らないなら幸せかもしれないっすね。……じゃあこの話はおしまいっす」
ルプスレギナは唐突に話を打ち切りました。しかしありんすちゃんは気になって仕方ありません。
「……やめた方が良いっす。ありんすちゃん夜トイレに行けなくなっても知らないっすよ?」
「いいから話すでありんちゅ」
ありんすちゃんに促されてルプスレギナは話始めました。
「あるところに熊の男の子がいたっす。ある日男の子は友達のおやつをこっそり食べちゃったっすよ。それ以来男の子はオナラが止まらなくなったらしいっす。皆は男の子を『くまのプーさん』って呼んで馬鹿にしたらしいっす。そのうちお腹のガスが溜まり過ぎて……」
ルプスレギナはそこで口を閉じました。
「どうなったでありんちゅ?」
ルプスレギナは意地悪そうな笑いを浮かべました。
「ドッカーーン! ……って爆発しちゃったっすよ。……馬鹿っすね。オナラが止まらなくなった時にあることをすればたすかっ……」
丁度その時にルプスレギナを呼びにシズが来たので話はそこで終わったのでした。
ありんすちゃんは立ちあがると裸になって姿見に自分の姿を映してみました。心なしかお腹が膨らんでいるみたいです。オナラは相変わらず止まりません。泣きそうになりながらありんすちゃんはルプスレギナを探す事にしました。
第一階層からログハウスにやって来たありんすちゃんはルプスレギナがいないか尋ねましたが、残念ながらいませんでした。
次に第六階層に行くとアウラとマーレがいたので尋ねてみました。アウラは一瞬怪訝な表情をしましたが、ありんすちゃんのただならない様子に気がつくと優しく語りかけました。
「あのさ、ありんすちゃん。ルプスレギナを探しているのはどうしてなのかな? 良かったらあたしに話してみなよ」
「ありんちゅちゃ、プーさん、プーさん……ありんちゅちゃ、ばくはちゅ、ヒック……」
アウラの優しい言葉に気持ちが緩んだのか、ありんすちゃんはとうとう泣き出してしまいました。アウラはありんすちゃんを優しく抱き抱えてあげました。
「いるんでしょ? ルプスレギナ、もういい加減にしときなよ?」
「なんだ、やっぱり気付かれていたっすね。ちょっとした可愛いイタズラっすよ」
不可視化を解除したルプスレギナが姿を現しました。ありんすちゃんは事態がよく解らずきょとんとしています。実はありんすちゃんの止まらないオナラはすべてルプスレギナのイタズラだったのでした。
そもそも『くまのプーさん』なんて話もすべてルプスレギナのでまかせだったのでした。何はともあれありんすちゃん、無事で良かったですね。