ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ナザリック地下大墳墓第二階層 屍蝋玄室、ありんすちゃんの居室です。さっきからありんすちゃんは姿見の前でいろんなポーズをしています。この前にスレイン法国で手に入れたチャイナドレスを着た自分自身の姿に見入っているみたいです。普段と違って髪型もお団子二つに結っていてかわいらしいですよ。
ちょっとばかり前屈みになってパチパチとまばたきしていましたが、多分、ありんすちゃんはセクシーポーズでウインクしているつもりかもしれませんね。
ひとしきりいろんなポーズをとっているうちになにやら思いついたみたいです。屍蝋玄室の扉を開けっ放しにして部屋を飛び出して行っちゃいました。
※ ※ ※
ありんすちゃんは第一階層にやって来ました。いつもなら元気いっぱいに走るのですが、チャイナドレスを着たありんすちゃんは少し落ち着いた様子で歩いて来ます。気分は淑女、といった所でしょうか? ……もっとも気分だけで、周りの印象はいつものありんすちゃんだと思いますが……
どうやらありんすちゃんが目指しているのは地表のログハウスのようです。なる程、ログハウスならば当番の戦闘メイドがいますからありんすちゃんのチャイナドレスを見せるのにはうってつけですね。
ログハウスの近くまでありんすちゃんがやって来ると、なにやら丸い落とし穴みたいなものがありました。周りをロープで囲って看板まであります。
「んん……んちいりんん……おめか? でありんちゅ」
うーん……看板には『危険 立ちいり禁止 オメガ』と書いてあったのですがありんすちゃんは漢字が読めなかったみたいです。まあ、もっとも仮に読めたとしても好奇心旺盛なありんすちゃんが素直に指示に従ったかどうか疑問に思いますが……
「おもちろそうでありんちゅね」
ありんすちゃんは独り言を言うと辺りを見回しました。
周りに誰もいませんから誰の反応もありません。ありんすちゃんはもっと大きな声で言いました。
「おもちろそうでありんちゅから入ってみるでありんちゅ」
ありんすちゃんはまた周りを見回しました。もちろん何の反応もありません。
「おーもーちーろーちょーでーあーりーんーちゅーねー! はーいーっちゃーうーでーあーりーんーちゅー!!」
ありんすちゃんは大きな声で叫びました。何事かとログハウスから誰かが飛び出して来ました。
「ちょ、ちょっと待つっすよ! ……そこはオーちゃんが危険が危ないって言っていたっすよ!」
ありんすちゃんはルプスレギナの慌てる様子を見てようやく満足そうに笑うと落とし穴に飛び込みました。
──と、同時に──
ありんすちゃん「!!!!!!」
ルプスレギナ「!!!」
オーレオール「え?」
男「使え!」
シャルティア「くっ!!」
カイレ「な?」
──凄まじい閃光と衝撃が起こり、様々な事態が一斉に起こりました。
「……大変っす! なんか大変な事が起きたっす!」
ありんすちゃんの姿はどこにもありませんでした。後にはルプスレギナと慌てて周囲に撒き散らしてしまったポテトチップスが残されていました。
〈……ルプス姉さん、大変です。どうやら次元の狭間が生じてしまったみたいです〉
〈オーちゃんっすか? ありんすちゃんが消えちゃったっす。……あーー!〉
〈どうしましたか?〉
〈ポテトチップス全部こぼしちゃったっす!!〉
プレイアデスの末妹、桜花領域守護者のオーレオール・オメガはルプスレギナに対し冷静に指示を出します。
〈ルプス姉さんはシモベ達にこの空間の狭間を警戒して下さい。私はアインズ様に報告して対策を練ります。ありんすちゃんはきっと連れ戻します〉
〈了解っす〉
ナザリック地下大墳墓ではこれから総力を上げてありんすちゃんの帰還を目指す事になりました。一方、ありんすちゃんはどうなったのでしょうか?
「……びっくりしたでありんちゅ」
ありんすちゃんは周りを見回しました。さっきまであったログハウスもルプスレギナの姿もありません。どうやら落とし穴の発動に驚いてグレーターテレポーテーションを発動させてしまったのかもしれません。
ふと、ありんすちゃんは自分が誰かの上に座り込んでいた事に気が付きました。なんと、ありんすちゃんと同じチャイナドレスを着たシワシワのお婆さんが倒れていました。どうやらありんすちゃんはこのお婆さんの上に落ちてきてしまったみたいです。
「……ちんでいるみたいでありんちゅ」
そういえばありんすちゃんが落ちた時にありんすちゃんのチャイナドレスの竜の模様が光ってなにやら魔法が発動したような気がします。もしかしたらありんすちゃんも魔法を使い過ぎるとシワシワのお婆さんになってしまうかもしれません。
「……シワシワになりたくないでありんちゅね」
ありんすちゃんは先程強大な魔力の放出が着ているチャイナドレスから起きた事から、このまま着続けているとこのお婆さんみたいにシワシワになってしまうに違いないと思いました。
「帰ったらチャイナドレチュはしまう事にちまちゅか……」
ありんすちゃんは残念そうにチャイナドレスを着た自分自身を見下ろしました。と、不意にメッセージが聞こえてきました。
〈…………ちゃん、あーりんすちゃーん……聞こえますかー?〉
なんと、桜花領域守護者のオーレオール・オメガです。
〈……ありんちゅちゃんでありんちゅ〉
〈……良かった! ええと、ですねー今から私の座標にテレポーテーションを試して下さい。多分、次元の狭間が閉じる前ならナザリックの時空間に戻れるはずです〉
〈……わかりまちたでありんちゅ!〉
ありんすちゃんは〈グレーターテレポーテーション〉を発動させました。と、次の瞬間、ありんすちゃんはナザリック地下大墳墓の入り口のログハウス側にいました。
「良かったわ。無事にありんすちゃんが戻ってきて……アインズ様のお留守に問題を起こしたくないものね」
「おかえりー。良かったねーもう少しで大変な事になる所だったんだよー」
ありんすちゃんをアルベドとアウラが出迎えてくれました。とりあえずありんすちゃんは疲れていたのでその日は休む事にして、屍蝋玄室に帰りました。
チャイナドレスは魔封じの箱に入れてベッドの下にしまったそうです。何はともあれ良かったですね。もう少しでありんすちゃんの話が終わる所でしたから。
おやすみ。ありんすちゃん。