ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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いつものようにありんすちゃんは目覚めました。そして久しぶりにくしゃみをしました。
「くちゅん!」
とてもとても小さなくしゃみでしたが、久しぶりに本当に久しぶりにテレポートしちゃいました。
ゴチン!!!!
おや? ありんすちゃんは誰かの上に転移してしまったようです。怪しげなマントを頭からスッポリ被った女のような男のような人がありんすちゃんの下敷きになって気絶していました。
よく見ると怪しげな人は大事そうに鍵付きの箱を抱えていました。ありんすちゃんは箱をもぎ取ろうとしてみましたが、しっかりと抱え込んで放そうとしません。気絶してまで手放すまいとしているのですから、きっと高価なお宝が入っているのかもしれません。
ありんすちゃんはニッコリしながら爪を伸ばして鍵穴に差し込みました。カチャリと音がして箱が開くと中には薄い生地の服が入っていただけでした。
「これは食べられないでありんちゅね……」
ありんすちゃんはちょっぴりがっかりしましたが、生地を広げてみるとなかなか可愛らしいチャイナドレスだったので嬉しくなりました。オマケに何故だかかなり魔力が高いマジックアイテムみたいです。
ありんすちゃんがチャイナドレスを着てみるとありんすちゃんのサイズにぴったりになりました。
ありんすちゃんはクルクル回ってみました。足元にスリットがあってなかなか動きやすく、角がある蛇の模様もなかなか可愛らしいので気に入りました。それまで着ていたボールガウンをクルクルと畳んでいると、ポケットから一枚の布が落ちました。ありんすちゃんのではありません。両手で布を広げてみると水色地に白の水玉模様のビキニタイプのブリーフでした。
いつの間にポケットに入っていたのでしょう? ありんすちゃんには記憶がありませんでしたが、なんとなくマーレのもののような気がするのでした。
ありんすちゃんはしばらく考えていましたが、ビキニブリーフを箱に入れて鍵を掛けるとニッコリしました。
ちょっと肌寒くなって来たのでありんすちゃんは上からボールガウンを着ました。今更ながら周りを見回してみましたが、全く見覚えがない場所でした。
「ちょっと探検してみるでありんちゅ」
ありんすちゃんは歩き出しました。
※ ※ ※
ありんすちゃんが立ち去ってしばらくすると気絶していた怪しい人が呻き声を上げました。
「……う、うーん……な、何が起きた?」
すぐさま両手で抱え込んでいた箱を確かめます。大丈夫。鍵が掛かったままでした。彼──女ではなく男でしたが──の使命はこの法国の至宝を無事に届ける事でしたから、安堵のため息をつくのでした。
「はやく神官長様に届けなくては」
男は大急ぎで走り去っていきました。
※ ※ ※
「むう? ……こ、これは? ……いったい?」
土の神官長 レイモンは思わず呻きました。スレイン法国に伝わる秘宝、ケイセケコゥクを宝物庫に仕舞う為、箱を開けたのでしたがその形状が変化していたからです。
「ふむ。……かつての神々の言い伝えでは、始原の魔法が込められし秘宝の中にはその形態を変えるものがあると聞く……よもや現実に目の当たりにするとは思わなんだが」
水の神官長老ジネディーヌが重々しく口を開きました。
「破滅の竜王の復活、そして百年の揺り返しと思われる強大な吸血鬼の出現と始原の魔法すら行使する魔導王。……時が来たという事か」
「すると……ケイセケコゥクが進化してこの姿になったのでしょうか?」
老ジネディーヌにレイモンが問いかけました。
「そうとしか思えぬ。お主も知っているようにこの箱には魔法で鍵が掛けられており、我ら神官長クラスでなければ開けられぬ。しかも、見よ。強大な力を感じるマジックアイテムではないか」
ジネディーヌは水色地に白の水玉模様のビキニタイプのブリーフを広げました。
「G U N Z E……魔法の刻印でしょうか? ……この進化したケイセケコゥクならば魔導王にも使えるのでは?」
「かもしれぬ。……しかしながら焦りは禁物じゃろう。……まずは神官長会議にて報告すべきじゃな」
箱を再び閉めると二人の男は出ていきました。
※ ※ ※
カチャカチャ……
ありんすちゃんがその部屋を覗いてみると一人の少女がうずくまっていました。白と黒の二色に別れた長髪の少女は熱心に小さな箱で遊んでいました。
「なんでありんちゅか? それ」
ありんすちゃんが尋ねましたが少女は見向きもしないで答えました。
「……ルビクキュー」
「ありんちゅちゃんもやってみたいでありんちゅ」
「…………ヤダ。もう少しで二面そろうから話しかけないで」
なんということでしょう?こんなに可愛らしいありんすちゃんが頼んでいるのに拒否するなんて……とんでもないですよね。
「ありんちゅちゃんもやってみたいでありんちゅ!」
「…………」
今度は無視されてしまいました。おやおや? ありんすちゃんの顔が真っ赤になってきました。このままではありんすちゃんが爆発してしまいますよ。
「…………ん」
と、少女が相変わらずルビクキューを弄りながらあごで部屋の片隅を指しました。なんと、そこにはもう一つルビクキューがあるではありませんか。ありんすちゃんは喜んで少女の隣でルビクキューで遊び始めました。
ありんすちゃんはしばらく遊んでいましたが、お腹が減ってきたのでナザリックに帰りました。帰りはくしゃみではなくてグレーターテレポーテーションでしたが。
その日からしばらくありんすちゃんはルビクキューで遊んでいましたが、一面も揃えられずに飽きてしまったそうです。
仕方ありませんよね。ありんすちゃんは5歳児位の女の子なのですから。