ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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春ですね。だんだんと過ごしやすい気候になって来ました。ナザリック地下大墳墓もポカポカ陽気でみんなのんびりしています。
ありんすちゃんはマーレのハンモックでお昼寝しています。とても気持ち良さそうですね。
おや? ……ありんすちゃんの頭に花が……? 一輪の花が生えています。一体どうしたのでしょう? ありんすちゃんはスヤスヤ眠っていて、気がついていないみたいです。
しばらくするとありんすちゃんが目覚めました。寝ぼけ眼でボンヤリと周りを見回してからウーンと背伸びをします。それからハンモックから降りるとヨチヨチと歩き出しました。ありんすちゃんの頭の花もユラユラ揺れます。
水がめの水で顔を洗い、タオルできれいに拭きます。第六階層のアウラとマーレの居住区ですが、まるで自分の家みたいに手慣れていますね。
さらにヨチヨチと歩き出すと戦闘メイドのソリュシャンと会いました。
「おや、ありんす様。アウラ様はどちらにいらっしゃるかご存知でしょうか?」
「アウアウは……わからないでありんちゅ」
ありんすちゃんは可愛らしく小首を傾げながら答えました。頭の花がプルンと大きく揺れます。
「……さようですか。では、失礼致します」
ソリュシャンは丁寧にお辞儀をするとありんすちゃんに背を向けました。
「待つでありんちゅ。ありんちゅちゃんも一緒に探すでありんちゅよ」
ありんすちゃんはソリュシャンを呼び止めて一緒にアウラを探しに行く事にしました。
「あの……ありんす様。質問があるのですが……」
「なんでありんちゅか?」
ありんすちゃんが頭の花を揺らしながら振り向きました。
「……その、ありんす様はアインズ様の妻の座はもう望んでいないのでしょうか?」
「うーん……難しいでありんちゅね……」
ありんすちゃんは腕を組んで悩みました。かつてシャルティアだった頃にはソリュシャンが指摘したようにアインズの妻の座をアルベドと争ったものでした。では、今はどうでしょう?
「うーん……アインジュちゃまの娘でありんちゅね」
ありんすちゃんは考え考えゆっくりと答えました。
「アインジュちゃまのかわいい娘でありんちゅね」
改めて言葉を足してもう一度言いました。
「……残念です。私はありんす様、シャルティア様こそがアインズ様に相応しいと思っておりましたので……」
ありんすちゃんはソリュシャンの言葉に答えずにヨチヨチと歩いていきます。それにつれて頭の花もユラユラ揺れました。
「あれぇ? ソーちゃんとありんすちゃんじゃないっすか? アウラ様でも探しに来たっすか?」
木の上から突然声が聞こえてきました。「ほいッ」とかけ声と共にルプスレギナが飛び降りてきました。
「ブヒャヒャヒャ! なんすか、これ? ありんすちゃんの頭に花が生えてるっすけど」
ありんすちゃんは慌てて頭に手をやりましたが、よくわかりません。
「本当です! なんか生えてます!」
今頃になってソリュシャンも気が付き驚いて叫びました。
ソリュシャンは小さな手鏡を取り出してありんすちゃんに見せます。確かに小さな花がありんすちゃんの頭で揺れていました。もしかしたらさっきからやたらと眠かったり、ヨチヨチ歩きになっていたのはこの花のせいかもしれません。
「ありんすちゃん、引っこ抜いていいっすか?」
ありんすちゃんが頷いたので、ルプスレギナはありんすちゃんの頭の花を引っ張りました。
「イタタタ……イタいでんちゅ!」
ありんすちゃんが痛がるのでルプスレギナは花から手を離しました。
「なんでしたら私が食べてしまいましょうか?」
「……このままでよいでありんちゅ」
よほど痛かったからか、ありんすちゃんはソリュシャンの申し出を拒絶してしまいました。
「これはほっとくと大木になって、面白い事になるっすよ、きっと」
ルプスレギナは他人ごとなので面白がっています。
「そうだ! きっとアウラ様マーレ様ならなんとかして貰えますよ。きっと」
ソリュシャンがありんすちゃんを励ました丁度その時──
「あれ? ありんすちゃんじゃん。アタシになんか用?」
「ソリュシャン、ルプスレギナも、こ、こんにちは」
アウラとマーレが現れました。
なんと……二人の頭にもありんすちゃんと同じ花がユラユラ揺れていました。