ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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第一階層の奥にナザリックの精鋭部隊が今まさに出動の時を迎えています。アインズの特命『至高のメンバーを捜索せよ』を実現する為の守護者統括アルベド直属の部隊──アルベド、パンドラズ・アクター、ルベド、さらにアインズ謹製のレベル90台のシモベ達が揃っている様はなかなかに壮観ですね。
「守護者統括殿、一つばかり質問があるのですが、よろしいですかな?」
パンドラズ・アクターが仰々しく挙手しながら発言しました。アルベドは投げやりな様子で許可を出すとパンドラズ・アクターは大げさに胸をそらして疑問をぶつけました。
「その……なんと申しますか……ルベド殿はルベド殿ではなくありんすちゃ──」
パンドラズ・アクターの質問が終わる前にアルベドとルベドが叫びました。
「ルベドよ! 紛れもなく!!」
「ルベドでんちゅ!」
そこにはこの件に関する他者の意見を抹殺するかのような明確な意志が込められていて、質問を許さない圧力がありました。
「……他に何かあるかしら?」
「……アリマセン」
すっかり意気消沈したパンドラズ・アクターは大人しく引き下がるしかありませんでした。客観的にはパンドラズ・アクターの指摘は正しいでしょう。明らかにルベドはありんすちゃんと同一にしか見えません。しかしながらこのプロジェクトに於いてはプロジェクトリーダーたるアルベドに全権があり、アルベドと自称ルベド本人がルベドだと断言する限り否定する事は不可能でしょう。
重い沈黙を破ってルベドが口を開きました。
「アルベド、目的はなんでありんちゅか?」
アルベドは小さいルベドを諭すかのように答えました。
「アインズ様の勅命を受けて他の至高のお方がこの世界にいないか探す事が私達に与えられた任務よ。……そして、それは他の守護者達にも秘密に行わなくてはならないの」
アルベドはメンバーを見回してから言葉を続けました。
「まずは……そうね。至高のお方の情報を探す事が必要ね。漠然と探すよりも誰かしら絞って探した方が良いかしら?」
「それならペロロンチーノちゃまの行方を探すのが良いでありんちゅ」
「ふむ、確かにペロロンチーノ様はアインズ様とも特に仲が良かったのでしたね。私も是非、見つけて差し上げるべきかと」
ルベドの案にパンドラズ・アクターも同意するのでした。
アルベドは少しばかり考え事をしてから結論を出しました。
「良いでしょう。まずはペロロンチーノ様の情報を優先して集めてみましょう」
アルベドは静かに夢想し始めるのでした。
『よくやった。アルベドよ。まさに私の願いを叶えてくれた。』
『……畏れ多いお褒めの言葉。これも守護者統括たる務め。当たり前の事に御座います』
『私の前で謙遜はいらぬ。私にとってお前は唯一無二の存在なのだ』
『ああ……アインズ様。このアルベドは身も心もアインズ様、いいえ、モモンガ様に捧げております』
『お前の忠義、嬉しく思う。アルベドよ。そしてお前の全てが私の物だと言うのであれば、この私の全てはお前の物だ』
アインズは強くアルベドを抱きしめて──
「──ベド? アルベド? ……どうちたでありんちゅか?」
いつの間にかアルベドは妄想の世界をさまよっていたようでした。心配そうに覗き込む小さな妹──ルベド──をわざとらしく咳払いでごまかしながら言葉を続けるのでした。
「ゴホンゴホン。さて、それではペロロンチーノ様の情報を集める為のアイデアを出していきましょうか」
ありん──ルベドがすぐさま手を上げました。
「ペロロンチーノちゃまはエロエロ大王とも言われてまちたでありんちゅ。『えろげ』なる物で誘うと良いでありんちゅよ」
「ふむ。『えろげ』とは……確か『あだるとげーむ』とかいう物でしたな。私の管理する宝物庫には残念ながらありませんね」
パンドラズ・アクターの言葉にアルベドはため息をつきました。
「残念ね。私も『あだるとげーむ』という言葉が何を指すのかはわからないわ。至高の方々の何人かはお持ちだったようだったけれど……」
「ペロロンチーノちゃまは『えろげ』でぶくぶく茶釜ちゃまの声でなえた、とかおっしゃっていまちたね。積んだりする物だとも……」
「──という話をありんちゅちゃんから聞いたでありんちゅ」
ルベドは慌てて言い足しました。あくまでもここにいるのはありんすちゃんではなくルベドなのでした。たとえ少しばかり共通点があるとしても……
※ ※ ※
「大変っす! どうやらありんすちゃんがお亡くなりみたいっす!」
突然、ルプスレギナが飛び込んで来ました。あり──ルベドは目をまん丸に見開いて驚いています。
「ありんちゅちゃん死んでちまったでありんちゅか!」
ありん──えっと……ルベド役のありんすちゃんの目にみるみるうちに涙が溢れてきました。
「うわーーん! ありんちゅ、ヒック、あり、ありんちゅちゃん死んぢゃったでんちゅ! うわーーん!」
ありんすちゃんはとうとう泣きながらかけ出して行ってしまいました。
うーん……ありんすちゃんは死んでいないと思いますが……仕方ないですね。何しろありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子に過ぎないのですから。