ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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今日のありんすちゃんはヴァンパイア・ブライドに身長を計ってもらっています。背筋を伸ばして息を止めて、少しでも高くなろうと力んでいますよ。そんなに頑張っても背は伸びないのですが……あれ? ありんすちゃんつま先立ちでズルをしています。すぐさま見つかってしまいましたが……まあ、気持ちはわかりますが、それでは身長測定する意味がないですからね。
ギュッと目をつぶっておまじないのように「伸びろ伸びろ」って呟いていますが、効果あるのでしょうか?
ヴァンパイア・ブライドがびっくりした表情でありんすちゃんの耳元で何やら呟くと、途端にありんすちゃんは跳ね回って喜びだしました。なんと、ありんすちゃんの身長が少し伸びたみたいです。
あまりにも喜び過ぎて転んでしまいましたが、ちっとも痛くないみたいです。そのまま飛び跳ねながらどこかへ行ってしまいました。
※ ※ ※
「あれ? ありんすちゃんじゃん。随分ご機嫌みたいだけど、何かあった?」
相変わらずに飛び跳ね続けているありんすちゃんがやって来たのは第六階層でした。
「あ、ありんすちゃん。転んじゃうんじゃないかな? ……その、危ないよ」
明らかに興奮して浮かれているありんすちゃんをアウラとマーレが心配しています。ですが、浮かれて飛び跳ねているありんすちゃんには届かないみたいですね。
「背がのびたでありんちゅ! のびたでありんちゅよ!」
きっといつかはアウラよりも身長が伸びて、かつてのようにアウラの事を『ちびすけ』と呼べるようになるかも知れませんね。
「……ふーん。でもさあ、アタシだっていつかはおっきくなってバインバインになるんだよ?」
アウラが口を尖らせて言い返します。
「ありんちゅちゃんもバインバインでありんちゅ! バインバイン! バインバイン!」
相変わらず飛び跳ねながらありんすちゃんはどこかに行ってしまいました。
※ ※ ※
「ありんちゅちゃん、背が伸びた! 伸びたでありんちゅ!」
第七階層を叫びながら走り抜けるありんすちゃんを、呆気にとられながら強欲と憤怒の魔将が見送りました。
どうやら何度か転んでしまったので飛び跳ねるのは止めたみたいですね。
※ ※ ※
第九階層の食堂にありんすちゃんがいました。ありんすちゃんの前には大きなケーキが置かれていました。ケーキには『ありんすちゃん 成長おめでとう』とデコレートされたチョコレートのプレートが飾られています。
「ありんすちゃん、おめでとう!」
「良かったね! ありんすちゃん」
食堂にいた一般メイド達も揃って祝福しました。ありんすちゃんは切り分けられたケーキをフォークで刺すとかぶりつきました。あらあら。顔が生クリームだらけです。
ケーキは居合わせた一般メイド達にもお裾分けされました。こうしてありんすちゃんの成長をみんなでお祝いしました。
※ ※ ※
ありんすちゃんの身長が伸びた話はすぐにアインズにも届きました。
(……これは、アンデッドであっても成長や進化が可能という事なのだろうか? ……今後のナザリック強化や自身の将来に関わる重大なファクターとなるかも知れないぞ。以前にデスナイトが武技を会得出来ないかという実験が不首尾に終わったが、単にやり方がまずかっただけかもしれない)
アインズは執務室のソファーに深く腰掛けて考えました。と、扉をトントンとノックする音がしました。
「アインズ様、ありんすちゃんがお見えになりました」
一般メイドのシクススに許可を出すと、得意そうな表情のありんすちゃんが入って来ました。
「アインジュちゃま、ありんちゅちゃん来ましたでありんちゅ」
アインズは手を上げてありんすちゃんに座るよう示すと優しく声をかけました。
「ありんすちゃん。何でも最近身長が伸びたと聞いたが、それは本当かね?」
「背が伸びたでありんちゅ! 伸びたでありんちゅよ!」
ありんすちゃんは興奮しながら答えました。
「素晴らしい! ……む、感情が抑制されたか……ありんすちゃんよ。これはアンデッドの可能性を示す一大事と言えるかもしれぬ。良くやった」
ありんすちゃんの顔がみるみる紅潮していきました。今にも爆発しそうな位、得意絶頂な状態です。
「……で、ちなみにどれ位身長が伸びたのかね?」
「…………5ミリ……でありんちゅ」
「は?」
うーん……まあ、ほんのわずかでも身長が伸びたのが余程嬉しかったのでしょう。仕方ありませんよね。何しろありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子に過ぎないのですから。