今回は、久々のオールドボトルに手を出してみました。その名の通りになるサントリー「オールド」です。

サントリーオールドは1950年に発売されましたが、その間にブレンドのほかに、ラベルも何度か変更されています。
現在でこそ「SUNTORY OLD」という表記ですが、発売当初は「Product of Japan SUNTORY WHISKY」で、1960年代半ばから1970年代にかけては、「VERY RARE OLD SUNTORY WHISKY」となり、「SUNTORY OLD」となったのは1970年代末からです。

1989年4月に消費税導入とともに酒税も改正され、ウイスキーの等級制度も撤廃されましたが、それ以外にも、社名や本社の住所表記など、どの期間に作られたオールドかを特定することが可能です。
  • 昭和20(1945)年3月:大阪市北区堂島浜通1丁目20
  • 昭和25(1950)年:サントリーオールド発売
  • 昭和33(1958)年3月:本社移転(大阪市北区中之島2丁目22 新朝日ビル)
  • 昭和38(1963)年3月:寿屋からサントリーに社名変更
  • 昭和46(1971)年4月:本社移転(大阪市北区堂島浜通2丁目1-40 サントリービル)
  • 昭和48(1973)年:住所表記変更(大阪市北区堂島浜2丁目1-40 サントリービル)
  • 平成元(1989)年4月:消費税導入 酒税改正による等級表示の撤廃(特級表記なしに)
今回、ネットオークションにて4本のオールドなオールドを手に入れました。
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まず1番左のボトルですが、ネック部分のラベルが一部剥がれていますが、よく見ると「大阪市北区中之島2丁目」となっており、1958~1971年のボトルだとわかります。
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そして正面のラベルは「VERY RARE OLD SUNTORY WHISKY」で、1960年台後半から1971年までに作られたと推測できます。だいたい46~50年ほど前のボトルといえるでしょう。
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残り3本のボトルは、いずれも「SUNTORY OLD」で、「特級」表記もありますから、1970年代終盤から1989年3月までのボトルといえます(厳密には1985年以降のボトルはSOが大きく書かれているのでさらに区別できますが...)。
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一方でネック部分のラベルを見ると、左から2番目は住所に番地表記がなく、原材料名も書かれていません。
右の2本では、住所名に番地まで表記され、原材料名もあります。
このことから左から2番目のほうが古いボトルだと推測できます。
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このほかにも、いくつかの種類があるほか、輸出向けのもの、さらにはお正月向けに販売される干支ラベルなど、これだけをコレクションするにも膨大な数になるでしょう。

ではテイスティングです。
今回は、現行品を加え、1960年代、1980年代の3本で飲み比べていきます。
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3本をそれぞれグラスに注いでみると下記の写真のような液色です。
見た目にはそんなに違いはありません。
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香りをそれぞれグラスから嗅いで見ると、1960年代は開栓したのが確認できたのですが、倉庫のような埃っぽさが目立ちます(ただし数日空気に触れさせるようにシェイクを続けていくと、その埃っぽさも薄れていき、樽やレーズンの香りが立ち上がるようになります)。
1980年代は、レーズンというかグレープジュースっぽさが目立った香りがメインです。
現行品は、ほかの2本に比べると目立った香りが立ちません。

まずストレートで飲んでみます。
1960年代は、ほこりっぽさはあるものの、奥からレーズンとピート、ナシ、ウッディさがしっかりと香ってきます。その後はナッツ、カカオも感じ取れます。
味わいはアルコール由来の辛さは少なめで、軽い酸味と甘さが主体です。

1980年代は、レーズンっぽさはあるものの、1960年代に比べると控えめです。その後のピートや樽の香りも目立ちません。
味わいはアルコールの辛さはさらに少なく、酸味が主体で後から甘さが追いかけてくる感じです。

最後に現行品ですが、アルコールからの刺激が目立ち、レーズンの後にウッディさをしっかり感じ取ることができます。
味わいは、アルコール由来の辛さが目立ち、あとから甘さが追いかけます。酸味はあまり感じられません。

次にロックで飲んでみます。
1960年代は、カラメルのような香りがレーズンを上回るようになりますが、ピートは強く立ち上がってスモーキーな印象が出てきて、樽の香りも広がります。また、青リンゴのような爽やかさも奥に潜むのも感じ取れます。
味わいは、甘さが主体となり、酸味も伴ってとてもフルーティに感じられます。

1980年代は、レーズンの香りが開くようになり、ピートやウッディさも現れてきます。また、青リンゴ、ナシ、ナッツも感じられます。
味わいは酸味が主体であることに変わりはなく、甘さは1960年代よりも少なめです。

現行品は、レーズン、ウッディさはあるものの、さほどには開かず、ピートもほとんど感じ取れません。
味わいも酸味主体で、甘さが追いかける感じですが、1980年代ほど強くはありません。

最後にハイボールで飲んでみます。
1960年代は、レーズンの後にピート由来のスモーキーが加わり、サントリーらしからぬパンチの効いた香りが出ます。
味わいもビターが目立ち、ドライな印象があります。

1980年代は、レーズンの香りが大半を占め、スモーキーは鳴りを潜めています。
味わいは甘さが主体になり、かなり飲みやすいハイボールになります。

現行品は、軽くゴムの香りの後、レーズンが追いかけます。スモーキーな香りはほのかなレベルです。
味わいは酸味がメインで、甘さがむしろ後退しています。

歴史的背景を考えると、1960年代はまだオールドは高嶺の花、1970年代に入って「二本箸作戦」として、和食料理店向けにオールドを置いてもらうなどの営業戦略によって普及し始め、1980年代にはメインストリームとして飲まれるようになったわけです。

改めて飲み比べると、1960年代のオールドは、実に高級酒らしい香り、味わいがあることをが実感できました。復刻版の角瓶でも感じたように、現在のサントリーとは異質な、ピートがしっかり効いたスモーキーさと、ストレートでもきつくないまろやかさがあります。
完全に未開栓で状態が良ければ、雑味もなく香り豊かなウイスキーを楽しめることでしょう。

本格的に普及した1980年代になると、スモーキーさを抑え、水割りやロックで飲むことを前提に、和食でもあいやすいようなブレンドに変化したことを感じられます。

現行品は、原点回帰を謳っているようですが、1980年代ほどの甘さがなく、むしろ角瓶やトリス同様にハイボールですっきり飲ませるような意図を感じられます。

時代やその時の戦略によって、オールドのブレンドが変化していることがわかりましたが、現行品にはシェリー樽原酒の良さも引き出せてないし、高級感も1960年代の足元にも及びません。

当時の物価に対する価格を鑑みても、1960年代のオールドが存在した価格帯には、今やその地位に響が鎮座しており、もはやオールド自体に私の父親以上の世代が持っていた高級感などすでにないことを実感しました。

30~40年前のオールドは、普及の度合いからしても、かなり倉庫や物置などに眠っていることがあるため、一度探索してみるといいかもしれません。