ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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前回のあらすじ
お腹が減っていたクレマンティーヌ改に吉備団子をあげたありんすちゃんはお礼に竜宮城に連れていってもらう。そこで秘密組織ズーラーノーンの存在を知ったありんすちゃんはアインズの特命を受けて潜入する。そんなありんすちゃんにクレマンティーヌ改はアダマンタイト級冒険者モモンの正体がアンデッドだという驚愕の事実を打ち明けるのだった。
※ ※ ※
ありんすちゃんのズーラーノーンの一員としての初仕事は『冒険者モモンを監視して弱味を見つけよ』でした。ありんすちゃんは張り切っていますよ。
え? あらすじが滅茶苦茶ですって? 申し訳ありません。ありんすちゃんがどうしてもそう書けと言うので仕方ないのでして……
改めて……今日のありんすちゃんは朝から張り切っていました。鹿撃ち帽を被りマントを羽織ってまさに気分はシャーロック・ホームズですね。ありんすちゃんは何でもよく似合っちゃいます。
エ・ランテルの街でこっそりモモンが現れるのを待ちます。
やがてモモンが姿を見せました。どうやらナーベと一緒みたいですね。
「ギリギリギリ……」
モモンとナーベは何やら親密そうに話をしています。ありんすちゃんはこのモモンが実はパンドラズ・アクターだと知っています。もちろん『美姫ナーベ』が戦闘メイドのナーベラル・ガンマだという事も知っています。
「ギリギリギリ……」
パンドラズ・モモンは派手な仕種でナーベをエスコートしながら馬車に乗り込みました。
「ギリギリギリ……」
ありんすちゃんはさっきから聞こえてくる音に気がつきました。よく見ると変なお面をつけた女の子がモモン達が乗り込んだ馬車を見つめていました。どうやらその女の子が歯ぎしりをしていたみたいですね。
どこかで見たような気もしますが、気のせいでしょう。ありんすちゃんにそんな変な知り合いはいないのでした。多分。
ありんすちゃんは馬車を追いかけました。すると仮面の女の子も馬車を追いかけているのに気がつきました。モモン達の馬車を仮面の女の子が追い、さらにありんすちゃんが追いかける、という図が出来上がりました。
モモンは冒険者組合でナーベと別れ、別の冒険者と馬車に乗り込みました。ありんすちゃんは馬車を追いかけているのにだんだん飽きてきてしまいました。
仕方ありませんよね。ありんすちゃんは5歳児位の女の子ですから。
見ると仮面の女の子はモモンを観察しながら何やらメモを取っているみたいです。もしかしたらありんすちゃんと同じようにズーラーノーンの指令でモモンを見張っているのかもしれません。
突然ありんすちゃんは閃きました。眷属の小さなコウモリを呼ぶと仮面の女の子を見張らせて、自分はナザリックに帰っていきました。
※ ※ ※
モモンの馬車を追いかけながらイビルアイはいろいろ考えていました。一目モモンの姿を見届けたいという思いでエ・ランテルに来てしまったが、いざモモンを目の当たりにすると声をかける事が出来ないでいたのでした。
「……うむ。や、やあ、モモン殿。息災であるか? ……これじゃダメだな。……うーん……も、モモン様。私を覚えていますか? 貴方のイビルアイです。……これは柄じゃないな……うーん」
イビルアイはモモンの後を追いながら声をかけるタイミングを見計らっていたのでしたが、肝心のセリフが決まりません。あれこれとメモしてみますが実際に言葉にしてみると恥ずかしいものばかりなのでした。
「まさか、この私がこんな乙女チックな悩みに落ちるとはな……」
イビルアイは溜め息をつきました。──仕方無いじゃないか。モモン殿はあんなにも格好が良いのだから──
やがて夕方になり今日の所は諦めて帰ろうか、と踵を返した瞬間、何者かに襲われてイビルアイは気を失ってしまいました。
倒れたイビルアイから誰かがメモを拾い上げました。なんとありんすちゃんです。なる程、自分でモモンを見張るのが面倒くさくなったから他に見張っている人間を利用したわけですね。……しかし、その仮面の人物は多分ズーラーノーンではないかと……
※ ※ ※
ズーラーノーンの秘密拠点の一つ──ありんすちゃんはメモを幹部に渡しました。
「……うむ。ご苦労。……なになに……モモン様ああモモン様モモン様……モモン様にすべてを捧げます……モモン殿が颯爽とマントを翻す様は実に格好がよいな、私はマントになりたい……モモン殿は右利きだな……モモン様、モモン殿、モモンさーーん……これは一体?」
メモは小さな字でびっしりとモモンを崇拝するような意味不明な言葉で埋め尽くされていました。幹部はあきれてしまい、得意げに胸を張るありんすちゃんに返す言葉がありませんでした。仕方ありませんよね。ありんすちゃんは5歳児位の女の子なんですから。
※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました