アインズ様がシモベ達とイチャイチャする話。 作:らるらるはまて
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アインズ様がハロウィンにシャルティアとコスプレを楽しむ話です。独自設定かつ稚拙な文章がダラダラと続きます。アルベドはいつまで謹慎してるんだよ、とかそういうツッコミは無しで。
それでも良いという方のみ、お楽しみください。
「そう言えば今日はハロウィンだったな。」
アインズは今日が10月31日であることに気づく。
ハロウィンーー本来は子供が仮装して街を練り歩きお菓子をねだるという可愛らしいイベントだったと聞いているが、鈴木悟のいた世界では大人が日々のストレスから逃れる様に仮装して馬鹿騒ぎをし、気が狂った様に好き勝手に暴れる祭りと化していた。
それはユグドラシルも例外ではなく。ハロウィンの時は少し調子に乗ってしまい18禁に触れる行為に抵触→BANという流れを辿るプレイヤーが急増したりしていた。
しかし、アインズの様なレベル100に到達したガチプレイヤーだとハロウィンイベントの周回をしたりしているのでハロウィンを楽しむ余裕など全くもって無かったのだが…
(あー、やっちゃったな。コキュートスは蜥蜴人の集落だし、アウラとマーレは偽ナザリックの建築、デミウルゴスは聖王国でアルベドは謹慎中。今ナザリックにいるのはシャルティアだけだ。かといって遊ぶ為だけにみんなをわざわざ呼び戻すのは気がひける…。今年は諦めるしかないか。来年は忘れない様にしないと…。)
そんな事を考えていると今日の当番であるシクススが話しかけてくる。
「アインズ様。シャルティア様が面会を求められています。」
「もう定時報告の時間か。わかった、通せ。」
「畏まりました。」
ガチャ
「失礼します。第1、第2、第3階層守護者シャルティア・ブラッドフォールン。御身の前に。」
そんな事を言いながらシャルティアが片膝をついて忠誠の儀を行なっている。
ーー何故かバニーガールの姿で。
「……………。」
「アインズ様?」
「し、シャルティア …?その格好は、一体」
「よくぞ聞いてくださいましたアインズ様!!今日は10月31日!!トリックオアトリートでありんす!!お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうでありんす!!」
「…………。」
「は、反応なし?こ、これは…!イタズラしても良いという事でありんすn」
「違う」
やや食い気味に否定する。
「……一応、聞いておこう。シャルティア、何の真似だ…?」
「はい!我が造物主、ペロロンチーノ様が仰っていたハロウィンなるイベントが今日開催されると聞いておりんすので、ペロロンチーノ様から頂いたコスチュームに着替え、アインズ様にご褒美を貰いに来たでありんす!」
ーーまた、お前か。ペロロンチーノ。
アインズは心の中で盛大に溜息を吐く。
(アウラと湖で遊んだ時も気になってはいたが……ペロロンチーノ!お前シャルティアに何を持たせているんだ!!この様子だと絶対まだまだ他にも際どいモノを持っているだろう!!)
そんな事を考えながらシャルティアのコスプレを今一度しっかりと見てみる。
吸血鬼らしい、降ったばかりの雪のように青白い光のこもった冷たい肌に黒の光沢がかった薄いレザーの生地が肩から流れており、恥骨の所でぐいっと股に食い込ませられている。その切れ目からすべすべしていて油になじんだセーム革のような柔らかさがある太腿に網タイツが履かれている。
全体的な体のラインは細い喉から華奢な鎖骨の浮くデコルテまで続き、胸に行き当たると、とたんにどこか懐かしい丸みをおびた、まろやかな線に生まれ変わる。今日はパッドをしていないようだ。いつものガウンとは違って生地が薄いためずり落ちてしまうのだろう。
しかしこれはーー
「なんというか、犯罪的……だな。」
「犯罪的…でありんすか?」
「ああ、褒め言葉だぞ。」
「わーい!でありんす!!」
(何も知らないって、平和だな…。)
「……あー、それでシャルティア。お菓子…だったか?それなら残念だな。私は飲食が出来ない体だから、その様なものは持っていないんだ。」
「じゃあイタズラしちゃうでありんす!アインズ様、すぐに私の守護階層まで来て欲しいでありんす!」
「え、ええー…。まあ、うむ。わかった。少しだけだぞ。」
「はい!」
(そんなキラキラした目で見られると断れないじゃないか!俺ってこういうのに弱いんだよな。しかし、イタズラ…か。一体何をするつもりなんだろう)
ーシャルティアの部屋にてー
「では、これからアインズ様にイタズラしちゃうでありんす!覚悟はよろしいでありんすか?」
「あ、ああ。それで?イタズラとは一体何をするつもりなんだ?」
これがアインズの体を狙うものだった場合即座に宝物殿に転移する必要がある。
「安心してくださいでありんす。今回、アインズ様には私と一緒にコスプレをして頂いて、撮影会に参加して貰うだけでありんす。」
「……コスプレだと?」
「はい。こちらの衣装棚の中にペロロンチーノ様に頂いたコスチュームが大量にあるでありんす。アインズ様には、私が決めた衣装を装備して頂いて一緒に写真を撮って貰うでありんす!勿論私の衣装もアインズ様に決めて頂きたいと思っておりんす。そしてカメラマンはーー」
「カァメラマンはっ!ン私ぃ!パンドラズ・アクターがァッ!!!努めさせて頂こうと!!思います!!」
「帰れ」
ーー帰れ。
アインズは心の底からそう願った。
(自分がコスプレしているところを自分が作ったNPCに撮影されるなんて羞恥プレイも良いところじゃないか!こいつにだけは帰ってもらわないとな…。)
「オオゥ!!冷たいお言葉ァッ!!でもそんな所もス・テ・キデェス!!!」
アインズは思った。
ーーこいつだけは何がなんでも排除しないといけない、と。
「……シャルティア。コスプレなら時間が許す限り幾らでもするから、カメラマン、チェンジで頼めるか?」
「ほ、本当でありんすか!!!ーーという訳でパンドラズ・アクター、さっさと帰るでありんす。」
「酷ォい!!アインズ様ァッ!!」
そんな事をぼやきながらシャルティアのシモベに引きずられてパンドラズ・アクターは退場する。
(よし。ひとまず危機は去ったな。)
「ではカメラマンはお前にお願いしんす。」
シャルティアがカメラをヴァンパイア・ブライドに手渡す。
成り行きで参加することになってしまったが、これはこれでゲーム時代を思い出して少し面白い。ハロウィンイベントの時はみんなでワイワイと仮装を楽しんだものである。まあ異業種ギルドだったので普段から仮装してる感はあったが…。そんな事を考えてながら衣装棚が大量にある部屋に入る。そこの棚からシャルティアがアインズに着せる衣装をガサゴソと探る。
「じゃあ、アインズ様にはまずこれを来て欲しいでありんす!!!」
そう言ってシャルティアが取り出したのはーー
「…………。」
ーー可愛らしいフリルの付いたメイド服だった。
「……え!?シャルティアは俺にこれ着て欲しいのか!?」
「はい!きっとお似合いになると思いんす!!!」
そんな事を言ってシャルティアはニヤニヤと嬉しそうに笑っている。
(くっ…!さては楽しんでいるな?それならこっちだって容赦はしないぞ!!)
そう言ってクローゼットを開けて、衣装を探す。するとちょうど目の前に5着あったので取り出してみる。
・穴が空きまくったエプロン
・スクール水着(紺)
・超ミニサイズハイレグレオタード
・スクール水着(白)
・絆創膏
「ちょっと待て」
アインズはペロロンチーノの服の概念を疑った。
(どうやら俺のかつての友は相当な所まで精神が追い詰められていたらしい。そうでなければ衣装棚から絆創膏なんてものが出てくるはずがない。)
「さすがアインズ様お目が高い!その棚はこの部屋の中で1、2を争う過激な衣装が入っている棚でありんす!!」
「……シャルティアはこれを着ることになっても平気なのか?」
そう言って直径5センチほどの絆創膏を指でつまんでヒラヒラと空中に泳がせる。
「それはまあ、少し恥ずかしいでありんすが…この部屋にはアインズ様しかおりませんので…。アインズ様が見たいというのであれば如何様にもさせていただくでありんす!」
そんな事を言ってシャルティアはいやんいやんと身を捩らせる。見た目が美少女なだけにとても残念な光景だった。
「………じゃあお前これな。」
そう言って別の棚から取り出したクマの着ぐるみをシャルティアに渡す。
なぜかシャルティアが少しだけ残念そうな顔をした。
「では行きます。3、2、1…。撮れました。」
「どれどれ…?」
撮れた写真を見せてもらうとそこにはフリフリのメイド服を着た長身の骸骨と顔を火照らせ息を荒げながら汗まみれになって着ぐるみを着た吸血鬼が写っていた。
「…………。」
「はぁぁ…。アインズ様のメイド服姿、とおっても素敵でありんすえ…!」
右からとても残念な声が聞こえてくる。
「……シャルティア、次に行くぞ」
「畏まりました!で、ありんす!」
この棚はもう二度と開くまい。と心の刻んだアインズだった。
「ふむ…。これでいいか。」
アインズは少しまともな服が入っている棚からスーツを取り出しシャルティアに渡す。
「ではアインズ様もこちらをどうぞ!」
そして嬉しそうな顔をしながらシャルティアもアインズにスーツを渡す。
「アインズ様とペアルック…!」
そんな事を言いながらシャルティアが更衣室に入って行く。
(ものすごい嬉しそうだったな…。まあ無理もない。最近シャルティアと関わりがあまり無かったもんな。こんな日くらいは少しくらい特別扱いしても構わないだろう。)
そして何よりアインズ自身、結構楽しかった。シャルティアがいつもよりテンションが高く、喜んでいるのが目に見えてわかるからだろう。
「お待たせ致しましたでありんす。」
シャルティアは上品な光沢を放つグレーのパンツスーツに身を包む。社会人としての常識をわきまえたファッションである。胸こそないものの、シャルティアの手足はスラリとした女性的なものであり、スーツに着替えたことによってそれが一層際立つ。柔軟な胴体をしなしなさせて、目を輝かせながらアインズの方を微笑を含んだ上目使いで見る。
「アインズ様、どうでありんすか?」
「ああ、似合っているぞ」
実際これは意外なほど似合っていた。
初めは恥ずかしい衣装を着せてやろうと考えていたアインズだが、シャルティアに恥という感情はどうやら無いらしい。それならば普段の格好と真逆のものを着せてやろう、とスーツを選んだわけだがやはり中身は腐っても見てくれは美少女。この部屋の中にシャルティアに似合わない服など無いだろう。絆創膏だって優雅に着こなしてしまうに違いない。
「ああ……!」
シャルティアはうっとりとした目で白い頬を茜色に染め、瀕死の魚のように手足、胴体がピクピク震えている。
「ハァ…ッ…!また下着を変えないと…今日だけで5枚目でありんす…。」
アインズは何も聞かなかったことにした。
「アインズ様もとってもお似合いでありんす!!」
「……ああ、ありがとうシャルティア。」
この世界に来るまでは毎日来ていたが、異世界生活が始まってからは一度もスーツに身を通したことはない。鏡で自分の姿を見てみるとスーツを着た骸骨が写っていた。ブラック企業に全てを搾り取られた鈴木悟のように見えて苦笑する。
「では。撮影いたしますね。3、2……」
「あ、ちょっと待ちなんし。アインズ様、抱っこしてもらえますか?」
「え、ええっ!き、拒否権は…?」
「イタズラだからないでありんす!!」
そう言って抱擁を促す様にシャルティアがありんす!とこちらに両手を伸ばす。
「……分かった。」
アインズは諦めた様にシャルティアの腰を掴んで自身の広い胸と細い腕との間に羽がいに抱きしめる。淡い香水の匂いが心地よく鼻をつく
。シャルティアが頭を少し動かすと、髪の毛から微かにシャンプーの香りが匂ってきた。とても良い香りだ。シャルティアの体重はびっくりするほど軽かった。流石にアウラよりは少し重たいが、それでもほとんど変わらない。これもアンデッドとしての特性なのだろうか。しかし、少年の様な体型のアウラとは違い、シャルティアの体は女性らしくふにふにと柔らかくとても抱き心地が良い。ソリュシャンともまた違った感触だ。純粋な心地よさだけで言えば一番かもしれない。
「あ、アインズ様!違うでありんす!お姫様抱っこでありんす!!」
いきなり自分の考えとは違う抱きつき方をされて、びっくりしているのだろう。真っ赤な顔をしながら腕の中でありんす!ありんす!と抗議をしている。アインズに抱きしめられているから行動が束縛され身動きしにくいようで手足を必死にもぞもぞと動かそうとしているのが伝わる。
「少し待て。」
そう言ってアインズはシャルティアの銀色の髪にぽふんと鼻を乗せ思い切り深呼吸する。はあ。安心する。とても良い香りだ。
「きゃーーーーー!!!!!!!!!!!」
そんな事をしているとシャルティアが腕の中で大絶叫を上げる。流石にやり過ぎたか。
「いや、スマンな。お前の頭からとても良い香りがしたのでつい嗅いでしまった。許してほしい。」
「い、い、いえ。アインズ様がお望みとあらば、いつでも…!」
「いや、もうしない。それでお姫様抱っこだったか。」
「あ、は、はい。そうでありんす。」
「では行くぞ、よいしょっと。」
シャルティアの足を掬って冷たく丸い尻に手を掛ける。なぜかズボンのお尻の部分がやたら濡れていることに関しては何も気にしないようにした。
シャルティアは骸骨の首に手を回しカメラの方を見る。
「3、2、1………はい。撮影できました。」
撮ったものを見せてもらうとこれはさっきのと違って中々良い写真だった。記念に一枚貰っておきたい。
「この写真、あとで私にも貰えるか?」
そうヴァンパイア・ブライドに話しかけると畏まりました、とにっこりとした顔で言う。その様子を見ていたシャルティアが横からひょこりと顔を出して言う。
「この写真、あとで私の部屋に1グロスほど焼き増しして置いておきなんし。」
「1グロスは多すぎだろ」
と、ツッコムが聞こえていないようで撮れた写真を見てうっとりとしている。こういう時、なんと言えば良いのかわからない。
「……んん!シャルティア!」
「………ハッ!?…なんでありんしょう。アインズ様。」
「私は今日はまだ執務が残っていてな。時間的に次で最後になりそうだ。」
「口惜しいでありんすが、畏まりました。」
「では次の衣装を選ぼうか。」
そう言って衣装棚の方に手を掛けようとするとシャルティアがニコニコしながらアインズの手を握ってそれを阻止する。
「アインズ様、最後の衣装だけは最初から決めておりんしたの。
そちらを着ていただけますか?」
「………ふむ。まあ良いだろう。」
「ありがとうございます!!では、こちらを。」
そう言ってシャルティアが取り出したのは黒のタキシードであった。
「ふむ。構わないが…これではさっきと似たような感じにならないか?」
「いえ、私がこれを着るので意味合いは変わってくるかと。」
そう言ってシャルティアは立派なウェディングドレスを取り出す。
ほう。シャルティアも女の子らしい所があるじゃないか、と感心する。
「……なるほどな。まあ今日くらいは良いだろう。」
そう言ってやるとシャルティアの顔が太陽を思わせるほど明るい表情になる。よほど嬉しいのだろう。ハロウィンの時くらい茶番に付き合ってやるのも悪くない。
2人とも更衣室に入る。むこうの着替えは大変なようで、ヴァンパイア・ブライドが着付けを手伝っている。アインズの方は簡単な作りであったため比較的早く終わり、シャルティアの着替えを待っていた。
(いや、結構楽しかったな。本当に。シャルティアの部屋って何気に初めて着たけど色々なものが置いてあって見ていて飽きない。たまにいかがわしいものはあるが…。)
そんなこと考えていると試着室のカーテンがスッと開く。
「アインズ様。お待たせしました!」
その時のシャルティアは今まで見てきた中で一番美しかった。
俯きがちに真っ白い肌を見せながらシャルティアがこちらに歩いてくる。
髪型はゆるく三つ編みにした長い髪を、うなじの上で巻き上げて留めている様で、くつろげた襟の下にうなじから背へかけて三角形に滑らかな首筋が艶かしい。背中の大きく開いた純白のドレスが青白い深海魚のような背中を寂しげに写している。丸みのある柔らかい肩を震わせながらその他にはブーケが握られている。大胆に斜めカットされたスカートから長く美しい脚がスラリと伸び、もう夜になったのか窓ガラスら入る月の光がシャルティアのそれを怪しく光らせる。
「中々似合っているじゃないか。」
「はい。ペロロンチーノ様に頂いたものですから。」
そっちを褒めた訳じゃないんだがな、と思うが口には出さない。
「では、さっさと撮ってしまおう。ポーズはどうする?」
「本当ならキスしてもらいたい所でありんすが、流石にそこまではしてもらえないでしょうしーー私がアインズ様の額にキスをさせて頂こうかと思っているでありんす!!」
「…………まあ、それくらいなら構わない。」
てっきりキスを要求されると思っていたので転移の準備をしていたのだが、今日のシャルティアはいつもの様にガツガツこない。普段からこんな感じならもう少し好感が持てるんだがな、と苦笑する。
「はい!では…。」
シャルティアの声が近づく。
アインズの目の前に青く澄んで光るような美しさを持つ容貌の顔が緊張のせいか紅を散らしたように赤くなっている。犬が舌を出して喘ぐような荒い呼吸音が目の上から聞こえる。
「……失礼しますっ……!」
そんな掛け声の後、アインズの額に薄い水のような唾液で濡れた唇が接触する。珊瑚色の唇は、小さくつぼめた時もそこに映る光をぬめぬめと動かすのをアインズは額で感じ取る。
「では行きます。3、2、1………はい、撮れました。」
「どれ。……よく撮れてるじゃないか。」
写真には動かない骸骨に儚げな表情でキスをする美少女が写っていた。それはまるで最愛の人の死後、その骨を慈しむ女の様でアインズにはとても美しく見えた。
「本当でありんすね!流石はアインズ様!」
俺は関係ないんじゃないか、と思わなくもないが。しかし骨と美少女という組み合わせは何となくアインズの厨二心を揺さぶった。素晴らしい写真だ。
「……シャルティア。分かっているとは思うが、その写真。絶対に誰にも見せるなよ。」
「はい!私とアインズ様の2人だけのヒミツでありんすね!!」
こんなものを見られた日にはアインズ様は頼めば何でもしてくれる、と言った誤解を生みかねない。それだけは避けなくてはならない。
「……分かっているならいい。今日は中々楽しかったぞ、シャルティア。」
「はい!私も楽しませて頂きました。無理を言ってしまい申し訳ありません。」
「はは。無理なんかではないさ、来年のハロウィンはきちんとパーティーを開こう、他の守護者達も一緒にな。じゃあ私はそろそろ行くよ。またな。」
「はい!今日はありがとうございました!!!」
アインズは満足気にいつものローブに着替えて、先ほど撮った写真を写真立てに入れ、小脇に抱えてシャルティアの部屋を後にする。
今日はいい日だった、他の守護者達も呼べばよかった、とかそんなことを考えながら。
一方その頃ーー
「パンドラズ・アクター、もういいでありんすよ。」
「はい!お疲れ様でした、シャルティア様。」
「しかし、本当に貴方の言う通りでありんしたねえ。アインズ様があそこまでしてくれるとは思ってもいなかったわ。」
「ええ、そうでしょう、そうでしょう。このナザリックでアインズ様の事を一番知っているのは私だと自負しておりますから。」
それは今から約5時間前のこと。
シャルティア・ブラッドフォールンは宝物殿に向かっていた。
その理由はーー
「パンドラズ・アクター、急に呼び出しなんかして何の用でありんすの?」
ーーパンドラズ・アクターに呼び出されたからである。
シャルティアは本来ならこの時間お風呂に入るつもりだったのに、それが出来なくなってしまったので、若干だが腹が立っていた。
「これはシャルティア様。本日は私の守護領域までお越し頂き、感謝申し上げます。ではさっそく本題に入りますがーーシャルティア様はハロウィンという物をご存知でしょうか?」
「はろうぃん、でありんすか?存じんせんねえ。一体なんでありんす?」
「ハロウィンと言うものは10月31日に行われる仮装大会の様なモノなのですが。我が造物主アインズ・ウール・ゴウン様はこの世界に来る前このイベントをたいそう楽しみにしておられました。」
「ーー詳しく聞かせるでありんす。」
「具体的には何もない時のユグドラシルにいる時間は約2時間ほどだったのが、このイベントが開催される時はその2倍の約4時間ほどになっておりました。」
これは、実際ハロウィンイベントはコスパが良くギルドの維持費を纏めて稼ぐのに最適だったため、というのと、ハロウィンに託けて仲間達がログインするんじゃないか、という淡い期待を寄せていたからという悲しい背景があった。
「しかし、どうやらアインズ様はこの世界に来てから忙しさの余り、今日という日を忘れているご様子。そこでシャルティア様にはアインズ様に今日がハロウィンだという事を伝えてもらいたいのですよ。」
「大体の事情は理解しんした。でもそれなら貴方が行っても良かったんではありんしょうかえ?わざわざ私に連絡を取らなくとも…。」
「それではダメなのですよ、シャルティア様。私が行ったところで、アインズ様はきっと無かったことにする。今日は貴方以外の領域守護者は外に出ていますからね。それにシャルティア様が行けば確実に成功します。」
「それは何故でありんしょうか?」
「まず一つ、ハロウィンと言うのは本来幼い子供がお菓子をくれなきゃイタズラするぞ、と言ってコスプレをしながら街を練り歩くといったイベントらしいのです。他の至高の御方々の子供と呼んでも差し支えない貴方の頼みを無下には出来ないでしょう。そして2つ目、コスプレをする、ということです。シャルティア様はペロロンチーノ様に貰って衣装をたくさん持っていらっしゃるでしょう?だからコスプレという面において貴方はナザリック最強と言っても過言ではないのですよ。」
「大体理解しんした。しかし、貴方はそれでいいのでありんすか?今の話では私ばかり得をして、貴方にメリットがある様に感じられないでありんすが…。」
「私は良いのですよ、シャルティア様。アインズ様の寂しさを少しでも紛らわせることができたら、それでいいんです。」
「それはーーとっても貴方らしいでありんすね」
「お褒めにあずかり光栄です。では具体的な作戦会議と洒落込みましょうかーー」
「パンドラズ・アクター。貴方、見かけによらず頭が回るのでありんすね。」
「私の造物主はアインズ様ですよ?」
「それは失礼、頭が回って当然でありんすね。」
ふふ、と笑ってシャルティアが返答する。
「ええ、私はアインズ様に想像していただいたアクターですからそのくらい当然ですとも。」
そう言って2人はこの後の作戦の成功を確信して互いに笑い合う。
シャルティアは自らの幸せを想像しながら。
パンドラズ・アクターは自らの造物主の幸せを想像しながらーー
お疲れ様でした。本当に。
ここまで読んでくださった貴方に最高の感謝を。