ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ありんすちゃんが階層の見回りを終えてのんびりしていると来客がやって来ました。
ルプスレギナとシズは何やらありんすちゃんに相談事があるのだそうです。
どうやら三吉君誘拐事件やありんすちゃん誘拐事件、キャビネットのおやつ盗難事件なと、数々の難事件を解決してきた名探偵ありんすちゃんの噂は戦闘メイドの間にも広まっているようですね。
「今日はありんすちゃんに頼みがあるっすよ。ありんすちゃんはオバケって大丈夫っすか?」
「…………否定。あまりにも非現実的です。…………しかしながら一般メイドの疑念を晴らす必要があります」
うーん……ありんすちゃんは実はオバケとか幽霊とかってちょっと苦手なんですよね。夜中にトイレに行くのも一人で行けないのでヴァンパイア・ブライドに付き添って貰っていたりするのは内緒です。おかしいですよね? だってありんすちゃんはアンデッドのヴァンパイアの真祖なんですから。
でも、仕方ないのだと思います。だってありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なんですから。
「そんなのじぇんじぇん、コワくないでありんちゅ、ありん、ちゅ」
ルプスレギナは意地悪そうな笑みを浮かべながら続けます。
「いや……なんか一般メイド達の間で噂があるらしいっすよ。第九階層の最近使っていない旧食堂に出るらしいんすよ」
ありんすちゃんは全然怖くない、という風に胸を張ります。
「……ある晩のことっす。その日の勤めを終えたある一般メイドが一人で旧食堂の横を通りかかったらしいっす。その時に夜食用にカレーパンを五個持っていたそうなんすが……」
ルプスレギナは言葉を切るとシズの方を見ます。なんと……シズもカレーパンが入った袋を抱えていました。
「……丁度、旧食堂の横に来た所で何者かの声がしたそうっす。……男とも女とも判別しないかすれた声で……『オイテケーー! ……タベモノオイテケーー!』って」
「──!!」
ありんすちゃんはほんの少し怖かったので、ちょっぴりそそうしてしまいました。
「と、まあ、そんなわけっすから、行きますよ。ありんすちゃん」
ルプスレギナは明るく言うとありんすちゃんにシズが持っていたカレーパンの袋を持たせます。そしてそのまま第九階層に連れて行かれてしまいました。
第九階層では一般メイドが何人も待ち受けていました。みんなありんすちゃんを応援しています。
「じゃ、ありんすちゃん、後はよろしくっす」
「…………健闘を祈る」
ルプスレギナもシズも当たり前のようにありんすちゃんを見送ります。どうやらオバケ退治はありんすちゃん一人で行くみたいですね。
「……うん……こわくないでありんちゅ。ありん、ちゅ」
ありんすちゃんは本当は行きたくありませんでしたが、成り行きで嫌だと言えませんでした。
ありんすちゃん頑張って。
※ ※ ※
ありんすちゃんは旧食堂にやって来ました。胸がドキドキします。とはいえ実際には心臓は動いていませんが。
『……オイテケーー……タベモノオイテケーー……オネガイ』
怪しい声が聞こえてきました。ありんすちゃんはしっかりとカレーパンの袋を抱き締めます。
そして、恐る恐る声の方を見ると……椅子の陰に隠れた人影がありました。
「──!!──」
ありんすちゃんは思わず悲鳴を上げ──
※ ※ ※
──ませんでした。
「なんだ、ナーベでありんちたか」
椅子の後ろには随分やつれたナーベラルがいました。ありんすちゃんはすっかり忘れてしまっていましたが、おそらくあのかくれんぼからずっと隠れていたのでした。
「……シャルティア様ぁ……お願いです。……私を見つけて下さい……」
なるほど。鬼だったありんすちゃんが見つければナーベラルのかくれんぼが終わる訳ですね。さあ,ありんすちゃん。「ナーベラル見つけ」って言ってあげましょう。
……おや? ありんすちゃん、どうかしました?
ありんすちゃんは黙っています。どうしたのでしょう?
「……出来ないでありんちゅ」
ナーベラルはありんすちゃんの言葉が信じらんない、という顔をしています。
「……もうチャルチェアじゃないから駄目なんでちゅ。今はありんちゅちゃんだから鬼じゃないでありんちゅ」
ありんすちゃんとナーベラルに空白の時間がしばし流れました。
しばらくして、ナーベラルが重い口を開きました。
「……あの……せめて……カレーパンを頂いても?」