ダムに沈んだ「徳山唐辛子」 幻の“うま辛”復活へ 獣害知らず、特産に 岐阜県本巣市

収穫作業をする羽田組合長(岐阜県本巣市で)

 【岐阜・ぎふ】揖斐川町で、ダム湖に沈んだ集落と共に幻になったとされてきた超激辛の「徳山唐辛子」が、隣の本巣市根尾能郷地域で細々と栽培が続いていることが分かり、地域、行政、JAぎふが連携して復活へ動きだした。「辛いというより痛い」といわれるほどの辛さだが、その中にもうま味が感じられる。中山間地域である同地域では農家が獣害に悩まされ続けてきたが、「徳山唐辛子」だけは食害が少ない。新たな特産品として地域の期待を背負う。

 「徳山唐辛子」は、旧徳山村が1987年に廃村となり、2008年に徳山ダムが完成するまでの過程で生産する農家がいなくなり、種はダム湖に沈み失われたとみられていた。ところが、以前に仕事で同村に滞在した能郷営農組合(本巣市)の羽田新作組合長が、味を気に入り地元農家に種を分けてもらい、少量ながら自家用に栽培を続けていた。それを同市の担当者が偶然知り、「ダム湖に沈んだ幻の唐辛子」として復活させようと動きだした。

 市は、市内の飲食店での提供やPR活動などを行う。市内や周辺の飲食店での特別提供や消費宣伝を予定。JAぎふは加工品開発や販路拡大を担い、産直施設「おんさい広場」などでの販売や加工品販売などで消費者の手元に届く体制をつくる。

 昨年は能郷営農組合だけの生産だったが、今年から本巣市内の農家らに依頼し拡大を図った。約20人が生産を始めたが、最適な栽培方法が確立されておらず、天候不順の影響もあって約1トンの出荷になる見込みだ。

 「徳山唐辛子」は市販の一味唐辛子の約1・6倍の辛さがあるとの分析結果もある。一般のトウガラシより大きく、生の状態では7~10センチになる。

 羽田組合長は「辛さの中にもうまさがある。栽培は難しいが、この辛さは他にはない。特産として地域活性化に寄与できる作物へと成長させたい」と期待する。 
 

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