ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ジルクニフは憂鬱そうに広場を見下ろしました。
地震の跡は塞がっていますが、またしても多くの兵士が犠牲になりました。
ジルクニフは頭をかきむしりながら苦悩しました。
「……何故だ? 何故なんだ? 何故、こんなにも不幸なのだ?」
ジルクニフに振り向かれたバジウッドは視線を反らしました。
子供のやる事、と一言で片付けてしまうにはあまりにも残酷でかつ無慈悲と言えます。しかしながら、現在のバハルス帝国としては魔導国を表立って非難する事は出来ません。
せめてあの時──ジルクニフは深く後悔します──下手に勘ぐらないで素直に答えていたら……あんな惨劇は起こらなかった筈です。
ジルクニフはただただ、髪をかきむしり身悶えするだけでした。かつては鮮血帝等と怖れられていたのが嘘みたいに無力な自分に腹立たしさを感じながら、そして髪をかきむしる事ぐらいしか出来ない自分を哀れに思いながら。
ふと、またもや昨日のドラゴンがやってくるのが見えました。やはり背中に三人の小さな人影があります。
おそらくまたまたあの魔導国の子供達でしょう。ジルクニフは目を閉じると、自らを奮い立たせるのでした。
三人はまたもや同じ服装──今回は男の子に見える格好──をしていました。
きっとまたまた真ん中の女の子が『ありんすちゃん当てゲーム』を言い出す事でしょう。いいさ。今度はちゃんと間違えずに答えてやる、そうジルクニフは思いました。
真ん中の女の子が口を開きます。
「さて、誰がありんちゅちゃんでありんちゅか? 当てられないちょ罰ゲームでありんちゅ」
ジルクニフは心の中で嘲笑いました。所詮は子供の考える事、それなら簡単です。
これがあの畏るべき魔導王ならば深読みしなくてはならないでしょうが、ここは所詮子供が相手です。ましては前回のような失敗は出来ませんから素直に正解を答えるまでです。
ジルクニフは深呼吸をすると答えを口に──
と、丁度その時に横槍が入りました。
「ちゃんと考えた方が良いと思うな。あたしならね。……だって間違えたら大変だよ?」
確かフィオーラといったダークエルフの姉? の方です。ジルクニフは一瞬、気勢を削がれましたが、これはきっとブラフでしょう。正解させまいとする相手の心理作戦に違いありません。
ジルクニフは正解を確信して、ゆっくりと真ん中の女の子を指差しました。
「ありんすちゃんはこの子だ」
シーンと静まり返った中、三人は顔を見合わせます。そして満面の笑みでジルクニフを迎えます。
「ピンポン、ピンポーン! おめでとうでありんちゅ。正解でありんちゅよ」
ジルクニフはホッとして、思わず座り込みました。正解したとはいえ、この子供達を相手にするのはもう勘弁して欲しいものです。
ニコニコしながらありんすちゃんが言いました。
「おめでとうでありんちゅ。マーレ、お願いするでありんちゅよ」
思わず顔を上げたジルクニフの視界の中で、またもやダークエルフの片方が杖を上げて……
「な――ん――で――!!」
またしてもジルクニフの絶叫は地響きの中にかき消されてしまうのでした。