ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫
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042ありんすちゃんふたたびみつごになる

 鮮血帝ジルクニフは朝からご機嫌でした。

 

 勢力拡大中の魔導国の評判は今のところ悪くなく、属国となろうとしているバハルス帝国を表立って非難する国は現れません。

 

 それどころか最近では聖王国が魔導国に助力を求めて、魔導王自ら聖王国に向かったらしいのです。

 

 これで聖王国もバハルス帝国同様に魔導国の幕下となればいくらか負担も軽くなろうというものですから。

 

 気分よく王城から帝都を見下ろします。

 

 ふと、広場が目に入った瞬間に嫌な事を思い出して眉をひそめました。

 

 そうです。ドラゴンに乗ったありんすちゃん達が来た時の事を思い出してしまったのですね。

 

 良い気分に水をさされたジルクニフは空に視線を動かします。

 

 すると何やら白いモノがやって来るのに気がつきました。

 

 なんと……!

 

 ドラゴンです。

 

 白い丸みを帯びた身体のドラゴンがやって来て、広場にフワリと降りました。

 

 背中に小さな影が三つ……間違いありません。

 

 魔導国の三人の子供達です。

 

「……まさか」

 

 ジルクニフは慌てて顔を突き出します。

 

 なにしろあの子供達の事ですから、この前の事をすっかり忘れて、「そういえば帝国に行って来いってアインズ様言ってなかったっけ?」とか勘違いしているのではないでしょうか? それとも別の用事とか?

 

 顔を出したジルクニフに向かって三人がドラゴンの上で立ち上がります。

 

 ジルクニフは驚きました。

 

 三人ともダークエルフみたいに色黒で、しかも三人とも同じ服装でスカートをはいていました。

 

 真ん中の子は少し小さい女の子でしたが、まるで三つ子か姉妹みたいにそっくりです。

 

 真ん中の子が口を開きました。

 

「皇帝、誰がありんちゅちゃんでちょうか?」

 

 ジルクニフはこの間の事を思い出します。

 

 ありんすちゃんというのは多分、少し舌足らずの女の子の事だと思われます。

 

 前回双子のダークエルフと一緒にいた赤い服の女の子の事でしょう。それならば、色黒ですが真ん中の一回り小さな女の子に間違いないことでしょう。

 

 ──しかし──

 

 ジルクニフはこれまでのアインズ──魔導王とのやりとりを思い出します。

 

 あの人物が、こんな単純なゲームを仕掛けるとは思えません。

 

 あの、悪夢が具現化したような、深慮遠謀の塊のような男ですから、きっと何か裏に意図するものがきっとあるのでしょう。

 

 ジルクニフは腹を括って真ん中の女の子を指差します。

 

「……ありんすちゃんはこの子」

 

「──ではない」

 

 相手の反応をじっと待ちます。

 

 ジルクニフの考えが正しいならば、この中に『ありんすちゃん』という子はいない筈です。

 

 これは引っ掛け問題に決まっています。

 

 もし、仮にジルクニフが不正解したらまたもや悲惨な事態を起こされかねません。

 

 この子供達ならきっとやるでしょう。

 

 更にジルクニフの観察眼は彼等が今回別のドラゴン──白くて太めでメガネをした──で来ている事に気がついていました。

 

 そう。きっと『ありんすちゃん』はこのドラゴンの名前に違いないのです。

 

 シーンとした中で先ほどの真ん中の女の子が口を開きます。

 

「ブブブブブー! 残念でありんちゅた。ありんちゅちゃんはわたちでありんちゅよ。……マーレ!」

 

 名前を呼ばれた隣のダークエルフが広場にひらりと降り立ち、静かに杖を振り上げます。

 

 広場の回りの呆気にとられている兵士達は身動きすら出来ません。

 

「やーめーてー!!」

 

 ジルクニフの悲痛な叫びは地震の地響きに消えていくのでした。

 








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