水道民営化の先駆者・英国に見習うべし
第三者機関によるチェックは必須
副作用の大きい水道民営化だが、それでも日本の水道事業の現状を見ると、水道事業体の半数は赤字経営であり、民間の力を借りざるを得ないと吉村氏は指摘する。それでは、水メジャーに対してはどのように対応すべきなのだろうか。吉村氏は、1989年から水道民営化に取り組んできた英国を見習うべきだという。
「当時首相だったサッチャーは、『必ず民間会社は利益を追求し、その結果サービスの低下、料金の値上げをするだろう』と見越し、2000あった水道事業体を21の会社にして広域化を行なった上、国がチェックする機関を3つ創設したのです。1つ目は、サービスの調査と料金改定の審査などをするOfwat、2つ目は、水質を監視・管理・指導するDWI、3つ目は、税理士や法律の専門家、ジャーナリストなど180人がOfwatとDWIを逆チェックするCCWater。日本もこのような第三者機関を設置しなければ、水メジャーだけではなく、国内巨大企業に好き放題やられ、世界一安全な日本の水道水が維持できないことも十分あり得ます」
また、吉村氏は民営化を推進する前にやるべきことがあるという。
「それはずばり水道事業の広域化・統合化です。1400の地方自治体それぞれが水道事業を行うという現状の運営方法は無駄が多い。1都道府県につき1水道事業体にする、その上で資金繰り、人手不足の解消、効率化などを目指しIoT化を推進する。まずはこちらが先決すべき課題でしょう」
評論家・山本七平(筆名イザヤ・ペンダサン)は「日本人は水と安全はタダだと思っている」と述べた。しかし、そう思えた時代はとうに過ぎているのだ。