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【サッカー】

川崎連覇、史上2番目13差逆転 憲剛万感「幸せな38歳」

2018年11月11日 紙面から

シャーレや風呂おけを掲げて喜ぶ(前列左から)中村、谷口、小林、登里、エウシーニョら川崎イレブン=ヤンマースタジアム長居で(中西祥子撮影)

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◇J1第32節 C大坂2-1川崎

 川崎の2連覇が決まった。C大阪に1-2で敗れ勝ち点63から上積みできなかったが、2位広島も仙台に0-1で負け5連敗。残り2試合で勝ち点7差が変わらなかった。2連覇は2012、13年の広島以来。2試合以上残しての優勝は10年の名古屋以来となった。

 笑顔も、涙もない。悔しさだけが募った。「勝って、決めたかった」。だけど、仲間たちが笑顔ではしゃぐ姿を見て、中村憲剛は安堵(あんど)の息を吐き、達成感に包まれた。スワロフスキーのクリスタルをあしらった総額100万円の風呂おけを大阪の秋空に掲げた時には、誰よりも誇らしげに笑っていた。

 「去年の優勝とは、全然違う。チャンピオンとして、勝って当たり前だと思われてやるシーズンの苦しさは感じた。それをはねのけてやってきた自分たちの力は、評価していいと思う」

 後半45分、家長のPKで追いついた。サックスブルーの応援団が沸いた。引き分けでも自力で連覇が決まる。頂点に手をかけ、つかみかけた。つかんでいた。だけど、足を止めない。さらに前へ、前へ出た。

 「勝ちに行く。引き分け狙いはない」。そう息を吹き返した瞬間、隙を突かれた。後半49分、痛恨の被弾。終了の笛が鳴ると、中村は鬼の形相だった。「いくらでも言えることはある」と怒り心頭だった。ただ、シーズンを通して積み上げた勝ち点の価値は、くすむどころか、負けてもなお色鮮やかに輝いた。勝利の女神にそっぽを向かれ続けてきたサッカー人生だからこそ、成し遂げた連覇に少しだけ胸を張った。

 「何回も心が折れかけたことはあるけど、(タイトルを)取れてないことがモチベーションになっていた。(昨季タイトルを)取ったことでモチベーションになっていた。つまり、何でもモチベーションになる。自分次第だなと思った」

 鬼木監督が志向するプレッシングスタイルと出会い、攻撃だけでなく、守備の重要性を改めて感じ取った。走って走って体を張り、「ショートカウンターで点が取れる楽しさを、この歳で覚えている」と新境地を切り開いた。進化だけに心を砕く姿、泥にまみれる覚悟で、連覇に欠かせない中心軸であり続けた。

 「後輩たちに、これがフロンターレの日常にしていくという自分の役目がある。本当に幸せな38歳だと思う。こんな幸せな38歳はいないと思う」

 万感の思いに浸り、中村はうれしそうにつぶやいた。 (松岡祐司)

 

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