ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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今日のありんすちゃんははアインズ様に頼まれてバハルス帝国に使者として行く事になりました。
お供はアウラとマーレの双子のダークエルフです。
もちろんありんすちゃんは一人でちゃんとお務めを果たせますが、双子がどうしても連れていって欲しいとだだをこねるので仕方なく連れていってあげる事にしたのでした。ありんすちゃんはとても優しいですね。
マーレはドラゴンを持っています。
アインズ様はマーレにありんすちゃんをドラゴンに載せるように命令しました。
アインズ様の前では双子のダークエルフも子犬みたいに大人しいものですね。ありんすちゃんの出発をアインズ様はわざわざ見送ってくれました。
バハルス帝国に着くとそのまま王城を目指します。
王城の前の広場みたいな所にドラゴンは舞い降りました。
さて、いよいよありんすちゃんのお仕事です。
まずはアウラがマイクを使って話します。
「あーあー。聞こえますか? あたしはアインズ・ウール・ゴウン様に仕える、アウラ・ベラ・フィオーラです!」
「……ありんちゅ」
「この国の皇帝がアインズ様のお住まいのナザリック地下大墳墓に不届きな奴らを送り込んできたのでアインズ様はお怒りです!」
「……でんちゅ」
「皇帝が謝罪しないとこの国を滅ぼします!」
「……でちゅよ!」
「手始めにこの広場のみんなは皆殺しにします!」
「……殺ちまちゅ」
「マーレ!」
マーレが杖を地面に刺すと大きな地震と共に地割れが出来、広場にいた兵士達を飲み込んでしまいました。
「はーい。皆殺しにしました。次はこの城を壊しちゃいます。──と思ったけど皇帝も死んじゃうので止めてあげます」
「……あげまちゅ」
「早く皇帝出てきて下さい! でないとこの都市を壊しちゃいます!」
「……ありんちゅ」
バハルス帝国皇帝、ジルクニフは窓から顔を出して震える声で叫びました。
「ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは私だ……話し合いをしたい……ので、こちらまで来てもらえるだろうか!」
ジルクニフは語尾だけ勇ましく叫びましたが、国民の多くに皇帝がビビっちゃっている事が丸わかりでした。
応接室に使者達を待たせてジルクニフは深く深呼吸をしました。初戦ではドラゴンに大地震という天災級の荒技に度胆を抜かれたものの、所詮相手は子供達です。
したたかなバハルス帝国皇帝、鮮血帝ジルクニフにかかればまさに赤子の手をひねるようなものです。
(まずは、ご使者殿を観察して、出方次第で臨機応変に探りを入れていくか? とりあえずあれだけ慎重に手配したワーカー達と何故このジルクニフを結び付けたのかを探らないと……)
扉を開くとジルクニフはとびきりの笑顔をアインズ様なるものの使者達に向けました。
しかし、……そこに使者達の姿はありませんでした。
部屋の中にはジルクニフのメイドだけがいて、困ったような顔で答えました。
「皇帝陛下、あの……ご使者様方はお手洗いに行かれました」
ジルクニフは部屋の中でメイドと三人、使者達の戻るのを待つことにしました。
……待ちました。
……ジルクニフは使者達の戻りを待ちました。
が、使者達はいつまで待っても戻って来ませんでした。
※ ※ ※
「……一体何だったんだ?」
翌日、ジルクニフは執務室で頭を抱えていました。
「……まあ、このままなにもないという訳にはいくまい……さて、どうしたものか……」
ジルクニフは誰に言うとなく呟いていました。そして腕を組み、考えを巡らせるのでした。
(しかしながら……いったいアインズ・ウール・ゴウンとは何者なのだろう? ……あのように一方的に力を誇示されては帝国としても無視する訳にいかない。もしかしたらそれが狙いか? ……だとすれば相当な策士だといえよう。それに使者として子供達を選んだ事も、こちらの油断を招く狙いだったのかもしれないぞ……うーむ、アインズ・ウール・ゴウン、恐るべき相手だ……)
ジルクニフが考えに耽っていると、なにやら広場が騒がしくなりました。
窓から見下ろすと今まさに一匹のドラゴンが、昨日と全く同じ光景を再現するごとく、舞い降りて来る所でした。
背中には昨日の三人の子供達──いや、アインズ・ウール・ゴウンの使者達が乗っています。
「……まるでデジャヴのようだが? ……いいや違う……これは悪夢だ……」
「あ、あのー聞こえますか? ……ぼ、僕はア、アインズ様の使者として来ました」
「……きまちゅた」
「皇帝は、あの、すぐにアインズ様に謝りに来て下さい」
「……ありんちゅ」
「……あの、とりあえず、この広場のみんなは死んでもらいますね」
「……ちぬでんちゅ」
マーレが杖を突くと広場に地震が起き、昨日の出来事がビデオで見るかのように再現されました。
「やーーめーーてーーー!!」
ジルクニフの絶叫しは折から起こる凄まじい地鳴りにかき消されてしまいます。
傷跡が生々しく残る広場の亀裂が再び口を開け、兵士達を飲み込んでしまうのでした。