ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ナザリック地下大墳墓第九階層のアルベドの私室──かつてナザリック地下大墳墓を作り上げた至高の四十一人に与えられた私室と同じに作られた一室にありんすちゃん、アルベド、アウラの三人の姿がありました。
「アウラ、さっきからあまり機嫌が良くなさそうだけれど、眠いのかしら?」
アルベドが慈母のような微笑みを浮かべながらアウラに問いかけました。質問に答えたのはアウラではなくありんすちゃんでした。
「アウアウはおねむでありんちゅ。わらわはモンブランが食べたいでありんちゅ」
そう言いながらもありんすちゃんは両手にしっかりとマカロンを持っています。アウラは二人をあきれたように見ながら話し始めました。
「まったくいい気なものだね。……あのさぁ、この間デミウルゴスから言われたんだよ、あたし。『アルベドとシャルティアが問題を起こさないようにアウラがしっかり手綱を握っていてくれたまえ』だってさ。これっておかしくない?」
早速ありんすちゃんが答えました。
「たじゅなってお菓子、食べてみたいでありんちゅ」
「馬鹿ね、シャルティア。手綱よ手綱。確かにおかしいわね。手綱を握ってもらうならアインズ様よ」
アウラは憐れみを含んだ眼差しを二人に送るのでした。
「そういう事じゃなくて、あなた達の面倒をみるのがあたしの役割だって思われているの。なんで?」
「やっぱりモンブランが食べたいでありんちゅ」
アルベドはありんすちゃんの頭を撫でながら言いました。
「確かにおかしいわね。小さなアウラには荷が重いから私がその役割を担ってあげるわ」
アルベドはこれ見よがしに胸を張ると豊かな双丘がアウラの目の前でプルンと揺れました。
「あのさぁ、嫌味が通じないの?」
「モンブランが食べたいでありんちゅ」
ありんすちゃんは足をバタバタさせ始めました。どうしてもモンブランが食べたいみたいですね。
「おっきい栗の、乗っかった、モンブランが、食べたいでありんちゅ」
アルベドとアウラはそんなありんすちゃんを無視して会話を続けました。
「嫌味なの?」
アルベドの表情は穏やかでしたが、金色の瞳は少しばかり冷たい光りを放っていました。
「……もういいよ。ところであたし達を呼んだのは何の用だったの?」
「実は……内密にしたい相談事があるの」
アルベドは声を落として語り始めるのでした。要約するとアルベドの唯一の神器級マジックアイテムである鎧“ヘルメス・トリスメギストス”の性能についての相談がしたいという事でした。
「──シャルティアはマジックアイテムの能力を解析する魔法を使えたわよね? この鎧にかけて──?」
アルベドがありんすちゃんに振り向くとなんとありんすちゃんはテーブルにうつ伏せになって眠ってしまっていました。
仕方ありませんよね。ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。
※ ※ ※
「……で、結局何が問題なわけ?」
頬杖をついたアウラがジト目で尋ねました。
「私の鎧、三層になっていてダメージを受け止めるのだけれど、それぞれの層が破壊されても少しも露出度がアップしないのよね。せっかくだから少しずつ肌が露出していくべきじゃないかしら?」
「……あーあー。さいですか」
アウラはすやすやと眠っているありんすちゃんを眺めながら、ふと、自分も居眠りしてやろうかと思うのでした。
※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました