漆黒の英雄モモン様は王国の英雄なんです! 【アニメ・小説版オーバーロード二次】   作:疑似ほにょぺにょこ
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7章 王国 七罪 ─Jaldabaoth─ 7

「今回の余興にて重要となるもう一つの要因<ファクター>があります。そうですよね、アインズ様?」

 

 三日後に控えるアインズ・ウール・ゴウン伯爵対ヤルダバオトという大きな戦闘──いや、余興を控えており俺は皆を集めて会議を続けていた。

 そして出て来る出て来る、予想以上の問題が。とはいえ、主にその問題をぶつけて来るのが仲間であり配下であるデミウルゴスであり、しかもその問題を上手くクリアできなければナザリックの主としての尊厳があっさりと失墜することは間違いない状況である。

 

「──そうだ」

 

 しかし俺はそういった事は全く考えておらず、ただただ動揺に動揺を重ねてもう局地的地震が体内で起きているのを必死に隠す事しか出来て居ない。

 だがうまい具合にこの行動が──主たる鷹揚な頷きに見えたらしいデミウルゴスは、満足そうな笑顔をこちらに向けて話を続けてくれている。

 

(本当、綱渡り過ぎるよなぁ──)

 

 そもそも王となる資質を持ち合わせてなど居ない俺である。いい加減この現状を打破したいところだ。何より、モモンとして動くのが最近楽しくて仕方がない。

 こうやって玉座で踏ん反り返っているよりも、街を歩き、草原を走り、森や洞窟を探索する方が楽しいと感じているのは間違いない。

 

(尊敬してもらうのは嬉しいのだけれど、流石に身の丈に合わなさすぎるんだよね)

 

 今でこそナザリックの主として居はするけれど。そんな自分がどうしても辛く感じてしまうのである。そろそろ後任を作って、元々の──あのユグドラシルの時のような冒険者稼業をやる方が良いのかもしれない。

 第一まだ他の皆を探しに行くことも出来ないのだ。居ないかもしれないが、居るかもしれない。どちらかでも100%でない限り、行動しないという選択肢は無い。

 

「──となるわけです。勿論承認していただけますよね、アインズ様」

「うむ、良きに計らえ」

 

 話半分どころか9割以上聞いていないが、デミウルゴスの行動で間違っていることはそうそうない。しかもここには階層守護者達が揃っており、だれも疑問視していないのだ。俺だけ『それは違う』と、そう言えるほどの頭も俺にはない。であれば、頭を縦に振るほかないだろう。

 

(殆ど傀儡だよな、これ)

 

 もうこのナザリックは、俺がいなくても回っていける形になってきている。いや、元から居なくても十分に回れる能力は持って居たのだ。ただそこに、俺が頂点に座っているだけにすぎない。

 アルベドを信頼している。デミウルゴスを信頼している。シャルティアを、アウラを、マーレを、コキュートスを、セバスを。ナザリックの皆を信頼している。

 だからこそ任せられる。だからこそ、俺は──

 

「では、今回の戦いではアインズ様には《パーフェクト・ウォーリアー/完璧なる戦士》を封印して頂き、武技の使用は控えて頂きます。また《バーサーク/狂化》を掛けて頂き、暴走しているふりをして頂きましょう」

「え、なにそれ──」

「確かにその方が真に迫っているわね。流石だわ、デミウルゴス」

 

 どうやら話を聞いていない間に物凄いことになっているようだ。

 

 

 

 

 

「Jaaaaaa──ldaaaaaaaaa────baoooooooooth!!!」

(で、実際《バーサーク/狂化》をかけてヤルダバオトと戦って居るんだけど、声すら変わるんだな。案外面白いかも)

 

 パンドラズ・アクター扮するアインズ・ウール・ゴウン伯爵に呼び出され、《バーサーク/狂化》を掛けた状態で戦場へと──舞台へと現れた俺は、迫真の雄叫びを上げた。

 アンデッドとしての特性なのか、それとも思考そのものには制限がかからないのかは分からないが、冷静な頭で暴走しまくっている身体のままにヤルダバオトに突撃していく。

 流石に動きに制限がかかりすぎているのと、あまりに身体能力が上がりすぎているために剣を上手く振り切れない。余興でデミウルゴスを斬り殺すわけにもいかないため、手に持つ剣はいつものグレートソードではなくイベントで手に入れた『アレ』である。

 大振りすれば黒い炎が撒き散らされ、例え遠目で見たとしてもインパクトは物凄いものとなっていることだろう。そのためか、最近慣れてきたフェイントや小手先の技などは一切使わずに主に大振りでヤルダバオトに攻撃を続けている。

 

「全く──このような無粋なことをするなど、滑稽を通り越して哀れですね!」

 

 なんとか目が慣れてきたのだろうデミウルゴスことヤルダバオトは軽々と俺の攻撃を避け始めた。避け始めたのは良いのだが、なぜギリギリのところで避けるのだろうか。限界に挑戦していたりするのだろうか。罷り間違って当たったとしても死にはしないが、死ぬほど痛いのは実証済みである。最終的にばっさり行くつもりだが、今はもう少し大きく避けても良いのではないだろうか。と、思った時だった。

 

「Gaaaaaaaa────ッッッ!!」

 

 

 

 

 

「あれでは駄目だね。ヤルダバオトはもうアレの動きに慣れてしまっている」

「いくら子供染みて居る動きとは言え、あれに余裕を持って対応するのかい」

 

 十万を超す大量の悪魔対超巨大ゴーレム。そしてあの強烈な非常識染みた亜神をも殺す悪魔と戦うアインズ・ウール・ゴウン伯爵の配下たち。それらを横目にわしらは、漆黒の英雄モモンとヤルダバオトの戦いに注目していた。

 恐らく前回冒険者たちをヤルダバオトに盾に取られ、みすみす逃してしまったことを鑑みてアインズ・ウール・ゴウン伯爵はモモンの理性を取り払ったのだろう。しかしやりすぎてしまったために暴走。幾ら強大な力を与えられたと言っても、あんな戦いを知らぬ子供のような動きでは強大な悪魔であるヤルダバオトと戦うには足りなかったようだ。

 

「あれならば、何もせずそのまま戦わせた方が良い勝負をしたんじゃないかな」

「確かにね。武技を一切使ってないところを見ると、『使わない』のではなく『使えない』のだろうからね」

 

 弱者が強者と戦うために生み出した戦の技、武技。それを使えないというのはあまりにも分が悪すぎる。

 

「悪魔の諸相:触腕の翼!」

 

 モモンは武技を使えない。だがヤルダバオトは問題なく使ってくる。今もまるで雨の様に、生きた矢をモモンに降り注がせていた。

 モモンに防ぐ術はない。3割ほどは叩き落せたみたいだが、殆どがその鎧に突き刺さっている。強力な鎧であるため完全に貫いては居ないものの、うねうねとまるで触手の様に蠢き内部に潜り込もうとしている。あれではいつ鎧を貫いて内部を攻撃されるかわかったものではない。

 モモンはそれらを振り払う事無くヤルダバオトに突撃を繰り返している。しかしもう、ヤルダバオトにその剣が届くことは、無い。

 

「やれやれ、見てられ──なんだいこりゃあ──」

「行動制限系の魔法か、スキル辺りだな」

 

 見てられない、せめて奴の暴走だけでも止められればと立ち上がろうとした時だった。

 身体が動かないのだ。正確には下半身が。食べ物に何か仕込まれていたのかとも思ったのだが、どうやら隣のツアーも動けないようだ。となれば、この無暗矢鱈に豪華なイスやテーブルにそういった細工が施されていたのだろう。

 

「舞台が終わるまでは立ち上がらないで頂きたいものだな。『ゆっくり座っていたまえ』」

 

 わしら以外にも立ち上がろうとした者たちが居たのだろう。少しざわめきが走った時、伯爵の言葉がわしらの足から力を抜けさせた。

 

 

 

 

 

 

「うわこれ支配の呪言じゃない。やっぱり白金の竜王<プラチナム・ドラゴンロード>が言ってたのはマジだったわけね」

 

 何とかテーブルに掛けられた魔法を解こうとした時に、追い打ちとばかりに来た呪詛の言。支配の呪言と呼ばれるそれは、最上位の悪魔のみが使用出来ると言われる特殊な力だ。かつて──遥か昔にあのお方が使われて以来久しい力であったため、もう失われた力だと──伝説の力だと思って居た。しかし伯爵──いや、あれが使ったという事は──

 

「やっぱり──ぐるる──」

「陛下、殺気駄々洩れです。暴れたいのであれば、帰った後にビースト相手に行ってください」

 

 無理にでも立ち上がろうとする私の手を見知った手が覆ってくる。弱く儚い手だ。いけ好かない手だ。私に無理難題をぶちまけて来る手だ。私が──守らなければならない手だ。

 

「フゥ──────ごめん」

「いえいえ、あの伯爵相手に何の因縁があるのかは私には分かりませんが。一つだけ言えるのは、あんなの相手にしていたら国が滅びます。えぇ、間違いなく」

 

 大きく息を吐く。何とか落ち着きを取り戻せた私は、目の前のショコラジェラートに執心することにした。私よりも動きたいであろう白金の竜王が動かないのだ。であれば私が動くわけにはいかない。一時の怒りに身体を任せるわけにはいかないのだ。

 

「でもアイツ──何を考えてるっていうの──?」

 

 舌に乗せた瞬間、まるで天の羽衣もかくやと言わんばかりに蕩け無くなるスイーツに感動を覚えながらも、ちらりとアイツに視線を向けた。何も動かない。動こうとしない。その姿はあの時と一緒だった。

 視線を戻す。スイーツにではなく、鏡へと──戦場へと。そこにはまるで人形遊びをしている子供の様に、まるで掬った砂を撒き散らすかの様に悪魔どもを吹き飛ばしていくゴーレムの姿が映っていた。

 口のようなところから火を吹けば辺りは瞬く間に焼け野原となり、氷を吹けば瞬く間に凍てつく大地へと変貌させる。目のようなところが赤く光ったかと思えば、視線の先であろう場所が爆発四散して巨大なクレーターを作り上げる。これはもう単体でありながら戦略兵器の様相である。

 

「やっぱ欲しいなぁ、あれ」

「抱かれる決心がつきましたか、陛下」

「──ごめん、やっぱ英雄の方で」

「その英雄は、今にも死にそうですが」

 

 暴走していた英雄の方に意識を向けると、鏡は巨大ゴーレムの独壇場から一瞬で英雄の戦場へと切り替わる。すごく便利である。そういえばこの鏡持って帰っていいとかいう話だった気がするが、本当にいいのだろうか。

 映った英雄はもうボロボロだった。美しかった鎧は砕け拉げ、何とか形を保っているといった様子だ。中がどうなっているかは分からないが、既に瀕死であることは間違いないだろう。

 

「ふむ、やはり私がとどめを刺さねばならんようだな。我が超位魔法で屠って──」

「モモンガさまぁ!!」

 

 恐らくは倒れている英雄モモン──の、はず。モモンガでは『アレ』になってしまう──に駆け寄る一人の美女。確か名前はアルベドだったか。恐らく伯爵はあの英雄ごとヤルダバオトを倒そうとしていたのだろう、彼女が駆け寄ったせいで伯爵は──アレは魔法を放てなかったようだ。

 

「モモンガ様──しっかりなさってください、モモンガ様──」

「A──l──b──」

「はい、モモンガ様。私です、貴方様のアルベドでございます。今──お助けします──我願う<アイ・ウィッシュ>──」

 

 彼女が何かを呟いた時、彼女を中心に──いや、英雄を中心に巨大な魔法陣が現れた。伯爵のものに似ている魔法陣が。あの、超位魔法とやらに似ている魔法陣が。

 

「我願う<アイ・ウィッシュ>──我願う<アイ・ウィッシュ>──」

 

 しかし、同じではない。彼女が続ける毎に魔法陣は白から金へと変わっていく。そして──

 

「な──純白の翼──だと──」

 

 その驚きの声が聞こえてきたのスレイン法国の方、恐らく司祭長辺りか。しかし彼だけではない。増えるざわめきは全て、彼女に向けられている。

 彼女の背にある黒き翼が白く染め上げられ、大きく羽ばたいたのだ。その姿は、正しく神話にある天使にも見紛う程に美しい。

 

「我願う<アイ・ウィッシュ>!我が愛するお方、モモンガ様!どうか──どうか──!!」

 

 まばゆい光が彼女たちを覆っていく。白く、金色に輝く光が。

 まるで朗々と謳う彼女の声に合わせるかのように、踊り膨れ上がり

 

──《ウィッシュ・アボン・ア・スター/星に願いを》

 

 眩く、弾けたのだった。

 




むーずかしー
中々表現が上手くいきません
読者の皆様の想像力にお任せするしかありませんっ

もうちょっと色々活躍させたかったですねぇ


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