【投稿】いわゆる「竹島(独島)問題」と日本の戦争責任 | 歴史歪曲・戦争挑発の「つくる会」教科書の採択を許すな! | ◎日本政府は侵略と植民地支配に対する謝罪を行い、真相究明と誠実な補償を行え! --日本政府は日韓条約に関するすべての非公開文書を開示せ よ! --請求権問題に誠実に応え、朝鮮半島出身者の遺骨返還等に 取り組め! ◎韓国、中国、アジア民衆と連帯し、教育反動化、新たな日本の軍国主義、反動化と闘おう! | 【1】はじめに--韓国民衆の怒りの根底にあるもの。傲慢な小泉路線と日本軍国主義の復活への反発と危機感 | (1) 本当に情けない。過去の侵略戦争と植民地支配について、戦後日本の自民党政治と為政者達は、己の過去と正面から向かい合う勇気と剛毅さをついぞ持つことなく、卑怯で卑劣な言い逃れと正当化に終始してきました。小泉首相も安倍副幹事長も、自民党の極右政治家達も、60年も経てば被害者が忘れるとでも思っていたのでしょうか。 島根県議会による「竹島の日」条例の制定、および「つくる会」公民・歴史教科書問題をめぐって、韓国民衆の深い怒りが爆発し、広範な広がりを見せ、それを受けた韓国政府が日本政府に対して3月17日、声明を発表する事態に至っています。さらに24日には盧武鉉大統領が改めて対日政策の新原則を発表し、「竹島」・教科書の是正を求めています。 私たちは何よりも今回の韓国民衆と韓国政府の動きが、新たな「竹島領有宣言」や「つくる会」教科書の再登場等を通じた、日本の過去の朝鮮半島に対する侵略と植民地支配の歴史に対する無視、無反省、いやそれどころか美化・賛美・合理化に対する怒りに深く根ざしていることを知らねばなりません。その怒りはとりもなおさずこの間、韓中両政府の忠告にもかかわらず強行し続ける小泉首相の靖国参拝、また有事法制定、インド洋からイラクへと拡大した自衛隊の海外派兵、新「防衛大綱」制定による米と一体となった自衛隊の全世界への派兵策動、ついには教育基本法・憲法改悪策動へとつながる、小泉政権下での新たな軍国主義化と反動化に対する民衆の怒りの表れでもあります。韓国民衆はこの間の日本政府と自衛隊の動きに、かつて朝鮮半島からアジア太平洋地域全域に侵略と植民地支配を繰り返し、アジア太平洋人民に今に至る未曾有の災厄をもたらした天皇制軍国主義日本と皇軍の亡霊の復活を見ているのです。 さらに韓国民衆の怒りに対して、また韓国政府の声明等に対してその都度その都度出される日本政府閣僚・高官発言の無理解・無神経・高慢さが一層怒りをかきたてています。それこそがアジア太平洋全域に対する侵略と植民地支配の事実を隠ぺいするどころか、居直り、合理化し、米と一体の新たな軍国主義・反動化に踏み出した帝国主義者たちの傲岸不遜な態度そのものなのです。 (2) 政府だけではありません。平然と「大本営発表」を繰り返しても恥と思わなくなったマスコミの責任は特に重大です。例えば、韓国民衆の焼身自殺未遂や日の丸を燃やす抗議行動をキャスターやコメンテイターと称する者達がまるで野蛮行為であるかのように嘲笑し揶揄してみせるTVニュースやワイドショー。メディア全体には、もうこれ以上反省し謝罪する必要はないという開き直りが支配しています。 また、韓国民衆の運動の断片・概略しか示さず、民衆の怒りがあたかも「竹島の日」制定を機ににわかに起こったかのように報じ、怒りが単に「領土」をめぐるナショナリズムの発露であるかのようにねじ曲げ、小泉や主要閣僚による「日韓双方とも『冷静に』」という無責任発言に呼応するかのように、民衆の主張や運動を黙殺しています。高野駐韓大使の「竹島は日本の領土」発言は当然のことで、何を感情的になっているのかとまで言い出す始末です。 ※「ここは現実的にいくしかありません。この争いはほどほどにして、両国の間柄を深みのあるものにしていく。そのために知恵を絞るのです。40年前の歴史的な国交正常化の際にも、領有権は棚上げにしたではありませんか。」(朝日社説3/17)http://www.asahi.com/paper/editorial2005317.html ※「領有権の問題は国民感情を刺激しやすい。だからこそ、対立をあおるような言動は互いに抑制する必要がある。日本の高野紀元駐韓大使が『竹島は日本の領土』と発言したことに、韓国メディアは『妄言だ』と反発したが、感情的になりすぎていないか。日本の大使が日本政府の見解を述べるのは当然である」(毎日社説3/17)http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/archive/news/2005/03/20050317ddm005070131000c.html 元々好戦的で戦争と植民地支配を礼賛してはばからない讀賣、産経の報道ぶりは一層ひどいものです。「竹島問題」は「日本固有の領土」「国の主権の問題」である。さらに韓国のいう日本の「良心勢力」なるものこそが、歴史をねつ造し、日韓関係を複雑にした「自虐史観」的な左翼勢力なのである。教科書検定・採択をめぐる韓国からの批判は「内政干渉」なのであり、日本政府は韓国に対して断固たる態度を取るべきだと主張しています。危険極まる「戦争挑発」の論調です。 ※「韓国に不法占拠されている日本固有の領土、竹島の領有権を明確にするための『竹島の日』条例が島根県議会で可決、成立した。これを受け、島根県は竹島が同県の一部であることの普及活動を強化する。政府は竹島問題を国の主権の問題としてとらえ、島根県の取り組みを支援すべきである。」(産経主張3/17) http://www.sankei.co.jp/news/050317/morning/editoria.htm(産経主張3/17) http://www.sankei.co.jp/news/050319/morning/editoria.htm(産経主張3/19) ※「韓国では、島根県議会の「竹島の日」条例の制定や、中学歴史教科書を巡り、反日感情が高まっている。韓国政府の声明には、対日強硬姿勢を示すことで、支持率が低迷する盧政権の浮揚を図る狙いがあるのだろう。 対日声明は、「日本の良心勢力」との連帯や、日韓の市民社会間のネットワーク構築の強化をうたっている。だが、韓国の言う「良心勢力」とはいかなるものか。戦時の女子挺身(ていしん)隊という勤労動員制度を、あたかも“慰安婦狩り”だったかのように歴史の捏造(ねつぞう)すら行い、日韓関係を一層複雑にしたのも、そうした“自虐史観”的な勢力ではなかったか。教科書問題でも、歴史観、価値観の多様性や、思想信条の自由を否定する旧左翼的な一部マスコミを、「良心勢力」と言っているのではないか。 声明では、「過去の侵略と強権の歴史を美化する歴史教科書が、是正されぬまま検定を通過する憂慮」をも表明している。これは、日本の国家主権に属する教科書検定に、圧力をかけるのも同然の内政干渉である。」(読売社説3/19) http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050316ig90.htm (読売社説3/17) http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050318ig90.htm (読売社説3/19) TV・新聞の知的荒廃・退廃はもはや極限に達したと言っても過言ではありません。加害者が被害者に「冷静になれ」「内政干渉だ」というのは、侮辱であり傲慢であり、侵略戦争と植民地支配の正当化以外の何物でもありません。政府もマス・メディアもこの加害者と被害者の根本的な立場の違いを無視しているのです。 しかし加害者は忘れても、被害者はいつまでも忘れることは出来ません。しかも私たちが朝鮮半島の人々に与えた苦痛と屈辱は普通のものではないのです。36年もの間、国家はもとより名前や言葉や宗教や風習や民族そのものを抹殺し、土地や資源だけではなく人間そのものを略奪したのです。少しでも歴史を学べば分かるこのような日本帝国主義の植民地主義的罪業を知ろうともしない者達に、身体一杯の表現で怒りをぶつける韓国民衆を云々する資格はありません。 特に、NHKによる元日本軍「慰安婦」をめぐる改ざん問題、そして北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の拉致問題事件以降、TV・新聞はこれ幸いと、ピタッと過去の侵略戦争と植民地支配の問題に取り組まなくなりました。それまでもひどいものでしたが、また次元の違うひどさです。毎日毎日国民が見聞きするのは拉致問題ばかり。メディアを見る限り、今や日本は加害者ではなく、被害者でしかないのです。北朝鮮についてはウソでもはったりでも言いたい放題。拉致議連を牛耳る自民党政治家と取り巻きの右翼勢力は、日本の侵略戦争と植民地支配を礼賛・美化する者達と完全に重なっています。彼らはほくそ笑んでいることでしょう。「拉致問題によって歴史問題は帳消しになった」と。 ※女性国際戦犯法廷番組、改ざん強制問題(2) 安倍・中川・NHKと右翼メディア総掛かりの開き直りと幕引きを許すな!(署名事務局) ※女性国際戦犯法廷番組、改ざん強制問題(1) 中川昭一経産相、安倍自民党幹事長代理に抗議を! 国会とNHKに真相の徹底究明を要求しよう! (署名事務局) だから私たちは、もう一度声を挙げなければならないのです。日本政府がないがしろにし、マスコミはほとんど報道しない韓国民衆と韓国政府の動向を出来うる限りフォローしながら、韓国民衆のこの怒りが決して一過性のものではないこと、歴史に根ざした深いものであること、すなわち日本の軍国主義が復活しようとする時、血塗られた日本の過去の侵略と植民地支配の歴史がアジア民衆の側から必ず提起され暴露されるものであることを明らかにする必要があるのです。 さらに、反戦平和運動の一端を担おうとする者にとっては、日本の軍国主義と反動化の問題は、最終的には日本国内の運動が阻止するものであることを肝に命じなければなりません。そのためにこの間の韓国民衆と韓国政府の訴え、要求にまず耳を傾ける必要があります。 【2】3・1独立運動記念式に際する盧武鉉大統領演説――日韓条約締結文書公開からの民衆の怒りを受けたもの | (1) 3月17日の韓国政府声明とそれに先立つ韓国民衆の怒りは、突然起こったものではありません。それは植民地支配と強制連行に伴う日本政府相手の訴訟が相次いで敗訴に追い込まれたことに対する怒りや不信とも無縁ではありません。最近でも日韓条約締結40年に際して公開された文書とその内容をめぐって、韓国民衆の間では日韓両政府に対する不満が爆発寸前の状態にあったのです。 まず何よりも関連文書はその一部しか公開されませんでした。韓国政府は、昨年2月に「日帝強制占領下強制動員被害真相究明法」を成立させ、日本の侵略と植民地支配に対する責任追及と補償問題、歴史認識問題についての端緒が切り開かれるはずでした。(日本における「恒久平和調査局設置法案」は、継続審議・廃棄、再提出・継続審議で、未だに自民党などによる抵抗が続いています。)しかし、対日本外交における表面的で脆弱な「未来志向」のために、韓国政府は資料の一部しか公表せず、関連文書のほとんどは日本政府が保有し公開せず隠匿しています。侵略と植民地支配に伴う損害賠償請求権が条約締結によってなぜ放棄されたのか示す決定的な資料は、未だに公開されていません。個人賠償の請求権放棄の経緯は闇の中です。 これらの事実は、日本では全くと言っていいほど報道されていません。しかし、韓国ではこの問題をめぐって各地で集会が持たれ、民衆の要求が韓国政府やマスコミを大きく突き動かしていたのです。 ※韓国(日帝強制占領下強制動員被害真相究明法 2001年10月12日国会に提出2004年2月13日一部修正の上可決成立)http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/5481/index.html ※日本(恒久平和調査局設置法案・国立国会図書館法改正案 2000年11月20日衆議院提出、2003年7月28日継続審査、2003年10月10日審議未了廃案、2004年6月9日衆議院再提出、2004年6月16日継続審査)http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/5481/index.html ※米国(日本帝国政府記録情報公開法 2000年12月27日成立、2001年3月27日施行)http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/5481/index.html (2) 3・1独立運動81周年記念式の際の盧武鉉大統領の演説は沸き上がる韓国民衆の声を反映せざるを得ないものだったのです。大統領は「今年は韓国と日本の国交正常化40周年となる特別な年であります。一方では、韓日協定文書が公開され、未だ解決されていない過去問題が蘇り、また違った難しさが提起されています」と演説で「過去」に触れざるを得ませんでした。その上で大統領は日韓双方の「関係進展を尊重し、過去史問題を外交的争点として捉えないと公言」もしたし、今もその考えは変わらないとしつつも、日本政府の戦後一貫したあまりにも不誠実な態度に、「しかし、私たちの一方的な努力だけでは解決できることではありません。両国関係の発展には日本政府と国民の真摯な努力が必要です。過去の真実を糾明し、真心を持って謝罪して、賠償することがあれば賠償し、そして和解しなければなりません。これは、全世界がおこなっている過去史清算の普遍的な方式であります」と再び「過去史清算」を持ち出さざるを得なかったのです。 その上で大統領は追い打ちをかけます。「私は、拉致問題に因る日本国民の怒りを充分に理解しています。同じように、日本も立場を代えて考えて見るべきです。強制徴用から日本軍慰安婦問題に至るまで、日帝36年の間に数千、数万倍の苦痛を受けたわが国民の怒りを理解すべきであります」と。 そして韓国歴代大統領としてはまったく異例なことに、「被害賠償問題」に言及したのです。すなわち、「国交正常化自体は、やむを得ないことだったと思います。いつまでも国交を断絶しているわけにもいかず、私たちの要求をすべて貫徹できない事情もあったのでしょう。しかし、被害者としては国家が国民個々人の請求権を一方的に処分したことを納得するのは難しいと思います。」 その上で、韓国政府が「請求権問題の他にも未だ埋もれている真実を明らかにして、遺骸を奉還することなど積極的におこなう」といったことを約束したのです。 ※以上、「2005年3月1日 盧武鉉韓国大統領の演説 全文」参照 http://www.mofat.go.kr/mission/emb/jp_menuadd_view.mof?seq_no=3369&si_dcode=JP-JP 日本に過去の清算を求めた大統領演説に対する小泉首相の分析は「国内事情を考えながらの発言」というものでした。背後にある、日本の侵略と植民地支配に対する韓国民衆の深い怒りをないがしろにし、この程度の評価で政府間は乗り切れるとでも高をくくったのでしょう。小泉発言は韓国民衆の怒りをさらに拡大しました。青瓦台(大統領官邸)国家安全保障会議常任委員長を兼務する鄭統一相は「事実関係が間違っており、国家元首への礼儀にも反する」と激しく批判しています。統一相は「盧武鉉大統領は国内事情が厳しい時も、(日韓関係を)未来志向に持っていこうと努力した」と説明し、「国内向けと評価するのは理屈にも合わず、礼儀にも反する」と述べたのです。 【3】「竹島の日」制定と「つくる会」教科書問題――朝鮮半島への過去の侵略と植民地支配を賛美・美化・合理化し、再度露骨な領土要求を掲げたもの | (1) 日韓条約締結文書の公開問題、個人被害賠償請求問題が渦巻くのと前後して、「つくる会」教科書の再登場、検定、採択をめぐり日本政府高官からの「妄言」が相次ぎます。一つは当の文部科学省中山大臣による、教科書から「従軍慰安婦」記述が減って良かった発言、次いで「近隣諸国条項」を「自虐史教育」と批判した下村文科政務官発言。彼らこそ「つくる会」の議員別働隊ともいうべき「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の中心メンバーだった(である)人物なのです。 こうした発言が韓国民衆の心を逆撫でしないわけがありません。4年前国内外からのあれほどの批判を受けながら、再び登場した「つくる会」教科書。韓国の市民団体「アジア平和と歴史教育連帯(日本の教科書を正す運動本部)」は、この歴史教科書を「朝鮮人強制連行、慰安婦問題、南京大虐殺などを記述しなかった2001年検定本扶桑社教科書の過ちをそのまま維持したまま、植民地支配が朝鮮の近代化に寄与したし、大陸侵略は中国が自ら招いたし、太平洋戦争は大東亜共栄のためだったというなど、さらに『改悪』された内容を記している」と厳しく批判しました。こんな「歴史歪曲教科書」の検定合格、採択はおろか、その存在さえ韓国民衆には許せるものではないでしょう。 ※「日本の右翼教科書 植民地統治を露骨に美化」(原文はハングル) http://www.hani.co.kr/section-003000000/2005/03/003000000200503111829279.html 「つくる会」教科書再登場に怒る世論の前に、あろうことか韓国が領有を主張する独島(日本名・竹島)に対し、日本の島根県議会が「竹島の日」条例なるものを上程しました。これは日本政府が改めて竹島の日本領有権を主張したようなものです。批判する韓国側に先述したような、高野駐韓大使の「竹島は日本の領土」発言です。さらに「竹島の日」条例は採決に至りました。これらの事態は韓国民衆にとっては、現代における日本のきわめて挑発的な領土要求として受けとめられたのみならず、日本の侵略と植民地支配の「過去」をこのうえなく想起させるものでした。 それこそ「つくる会」教科書で竹島がどう扱われているか見るだけで韓国民衆の怒りは理解できます。「つくる会」公民教科書白表紙本は「主権国家(国旗と国歌)」(p.128)で、「領域はそれぞれの国の歴史の産物でもあり、領域の画定は領土をめぐる主権の対立を引き起こし、国際紛争の原因となることが多い」とした上で、次のように述べます。「わが国も近隣諸国との間で領土問題を抱えている。国後島、択捉島、色丹島、歯舞諸島の北方領土、日本海上の竹島、東シナ海海上の尖閣諸島については、それぞれロシア、韓国、中国がその領有を主張し、一部を支配しているが、これらの領土は歴史的にも国際法上もわが国固有の領土である」と。「竹島」は「わが国固有の領土」であると断言しているのです。韓国民衆にとってこれほど露骨で、挑発的な領土保有宣言はありません。 (2) もう一つ私たち日本人民がよく理解しておかねばならない問題があります。それは、とりわけ日本の過去の侵略と植民地支配を断罪し、責任追及と補償を要求してきた韓国の政党、市民団体の人々の間では、日本の「竹島」の領土要求が「領土問題」としてよりも、日本の「過去」の侵略と植民地支配に密接不可分な問題、「歴史問題」として捉えられているということです。「竹島」の島根県編入問題は日本の朝鮮半島植民地化の第一歩、日本に土地と人民を奪われた、忘れがたい歴史の第一歩だということです。 「竹島」の島根県帰属を告示する手続きがとられた1905年2月22日は日露戦争のまっただ中でした。この年の1月から旅順陥落、奉天会戦、日本海海戦と相次ぎ、日本は主戦場への足場として韓国を軍事的に制圧し、「保護国」化の計画を着々と進めていたのです。日露戦争に勝利した日本は05年11月、韓国の外交権を奪って保護国化する第2次日韓協約を締結。それを韓国皇帝、高宗に無理矢理押し付けたのです。「竹島」の日本編入は高宗の妃、ミン妃が日本人に暗殺された10年後。高宗は日本に対する恐怖心から強い態度に出ることはありませんでした。その延長線上で1910年韓国併合条約は締結されました。それは国全体の日本への編入だったのです。 この日露戦争を「世界を変えた日本の勝利」「日本の生き残りをかけた戦争」「自国の安全保障を確立」「植民地にされていた民族に、独立への希望」と美化・賛美してみせるのが、他ならぬ「つくる会」歴史教科書なのであり、韓国併合を「日本の安全と満州の権益を防衛するために」必要だったと合理化してみせるのもこの教科書なのです。土地や食糧はおろか、言葉や名前・文化まで奪われ、神社参拝を強制され、強制徴用・強制連行により過酷な労働を強いられ、あげくの果ては「従軍慰安婦」や「軍夫」として戦場に駆り出され、敗戦と共に戦場や日本本土に遺骨までうち捨てられた過酷な植民地支配の歴史を、美化・賛美するような日本の「歴史歪曲教科書」を韓国民衆が許せるはずはありません。「竹島の日」制定、「歪曲歴史教科書」の登場が、さらに人々を日本政府への抗議に駆り立てるのは当然のことです。焼身自殺をはかったり、指を切断して抗議するまでに激しい韓国民衆の怒りを、私たちは真剣に受け止めないわけにはいきません。 ※「竹島の日」糾弾で焼身http://japanese.joins.com/html/2005/0318/20050318204754400.htm ※日本の歴史わい曲に「断指」で抗議http://japanese.joins.com/html/2005/0314/20050314194430400.html ※独島関連日本糾弾デモhttp://japanese.joins.com/html/2005/0313/20050313200258400.html ※「竹島の日」抗議集会http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/03/17/20050317000019.html ※元「日本軍性奴隷」を強制されたハルモニたちも抗議集会http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/03/16/20050316000070.html ※日本大使館前の抗議集会http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/03/16/20050316000046.html 【4】3月17日、韓国政府声明と対日政策の転換――民衆の怒りを受け日本政府に対して過去の侵略と植民地支配の反省で異例の要求 | (1) 3月17日韓国政府は、「竹島の日」制定と教科書問題に対する韓国民衆の怒りを背景とした日本政府に対する声明を発表しました。「未来志向」と表現されるこれまでの韓日関係を転換し、日本に対して「過去」の侵略と植民地支配の歴史に対する反省を迫り、具体的な補償を要求するといった、戦後の日韓関係にとってもまったく異例な声明となっています。 声明はまず韓国政府が、不幸な歴史の束縛から抜けて未来に向かって協力しようというメッセージを日本政府に継続して伝えてきたことを示します。そして日本自らの努力で「自らの過去の歴史を論点として出す」という行動を期待してきたと述べます。要するに日本自身の判断による過去に対する誠実な謝罪と相応の補償を期待してきたと述べるのです。しかし、この期待は裏切られました。声明は続けます。「しかし最近日本が見せてくれた一連の行動は、いったい日本は東北アジア平和勢力として隣国と共存しようという意思があるのだろうかという根本的な疑念を、我々に抱かせている。」「日本の指導層の人士らの一部に、時代錯誤的な歴史観を土台とした一種の退行的言行がむしろ増加していることは、厳然たる事実である。そして、過去の侵略と強権の歴史を美化する歴史教科書が、(その内容を)是正しないまま、中央政府によって検定通過される憂慮が大きくなっている。/そして日本政府は、過去の植民地侵略過程において強制編入したものの(1945年の)開放(ママ)によって回復したわが領土に対する領有権を主張している。これは単純な領有権問題ではなく、開放の歴史(日本の植民地政策が否定された歴史)を否定し、過去の侵略を正当化する行為と違いがない。」そしてこう結論付けます。「未来志向的な韓日関係構築のために、韓国政府が過去の歴史に対する新しいアプローチを模索している時期に、逆に日本国内でこのような退行的な動きが続いていることを、我々は非常に遺憾とする。これは韓日善隣友好関係に対する深刻な毀損行為であるとともに、東北アジアの平和繁栄を希求してきた近隣国家すべての念願に逆行するものである」と。 次に声明は「今後の韓日関係の基調と対応方向」として四点を述べますが、まずその一点目は「政府は今後、人類の普遍的な価値と常識に基礎を置いた韓日関係を構築する。このような次元で、<徹底した真実究明、真の謝罪と反省、そして許しと和解>という世界史的に普遍的な方式に立脚して過去の歴史問題を解いていく」という、真実究明と謝罪・反省という普遍的命題を掲げることから始めます。その上での二点目が「政府は、最近の日本の一隅で起きている独島(竹島)や歴史についての一連の動きを、過去の植民地支配を正当化しようとする意識が内在した重い問題と見て、断固として対処する」としています。 最後に声明は「韓日関係の当面の問題」として五点あげています。独島問題については一点目として「我々の領有権を、断固として守る措置をとる」としています。さらに二点目として「国際社会及び日本の良心的な勢力と連帯し、時代錯誤的な歴史歪曲を正し、これと同時に歴史についての正しい共同認識を形成できるよう、可能なあらゆる手段を活用して対処する」を挙げています。そして全く新しいものとして、個人賠償に日本政府が応える要求を次のように突きつけています。すなわち、「植民地(原語/日帝)被害者問題は人類普遍の規範と人権の問題であるだけに、正当に解決できるよう努力を尽くす。韓国は韓国がやるべきことをやり、日本は日本が当然やるべきことをやるという、はっきりした認識が必要である。これまで我が政府は、植民地(原語/日帝)被害者問題についての市民社会の要求に対して、直接的な対応を自制してきた。しかし、政府は、個人被害者に対する権利保護は普遍的人権問題であって国家は剥奪できない、という認識のもと、日韓基本条約(原語/韓日協定)によって我が政府が負担するとしたことは我々で解決する一方、1965年の日韓基本条約(原語/韓日協定)の範囲外の事案については、人権尊重と人類普遍的規範の遵守という次元から、被害を受けた個人に対して日本政府が解決するように促す」としているのです。 ※「NSC(国家安全保障会議)常任委員会 声明文全文訳」参照 http://www.mofat.go.kr/mission/emb/jp_menuadd_view.mof?seq_no=3318&si_dcode=JP-JP (2) この声明に対する小泉の談話も韓国政府のひんしゅくと批判をかいました。先述の鄭統一相は、小泉首相が「未来志向の対応」を強調した点について、「韓国の現実を正しく見ていない」と指摘。「未来志向は韓国の主張であり、日本の方が過去を隠ぺい、歪曲、正当化しようとした」と激しく批判しました。小泉の韓国民衆、アジア民衆を馬鹿にし、愚弄し、嘗めきる態度は決して国際的に通用するものではありません。実際日本政府は韓国政府の毅然とした態度にうろたえ、焦りの色を濃くしています。米国と一体となってあまりにも韓国やアジア諸国を蔑ろにした態度のしっぺ返しを、一挙に受けているのです。 うろたえた日本政府は3月17日「韓国声明に対する町村外相の談話」を発表し、一時しのぎに走らざるを得ませんでした。しかし、韓国政府の要求に真摯に応える談話には一切なっていません。例えば日韓間の財産・請求権問題については、国交「正常化」の時点において「解決済み」であるという態度を崩していませんし、「竹島問題」についても「漁業問題を含め、日韓関係全体を考え、大局的な視点から対応していく」と曖昧でわけのわからぬ答に終始しています。教科書問題に至っては「教科書の検定は、学習指導要領及び検定基準に基づき、公正かつ適切に実施されるものと考えている」と結局「つくる会」教科書の検定合格を前提とする木で鼻を括ったような答を行っています。なぜなら後述するように現在の「学習指導要領」に基づけば「つくる会」教科書は検定合格しても仕方がないような代物となっているからです。 ※「韓国声明に対する町村外相の談話 全文」(外務省HP) http://www.mofa.go.jp/mofai/press/danwa/17/dmc0317.html しかし、韓国政府はこの町村談話について、発言の趣旨を綿密に分析中としています。再び韓国側から日本政府に何らかのボールが投げ返されてきます。その時日本政府は言ったことの実行を再び迫られることになります。なぜなら町村談話は少なくとも「朝鮮半島出身者の遺骨の調査及び返還に関する取り組みを含め、政府としては、できる限りの協力を進めていく考えである」と述べているのですから。 ※「政府、町村外相発言の趣旨を綿密に分析中」(朝鮮日報) http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/03/18/20050318000037.html 【5】「つくる会」教科書の採択を許さない闘い――韓国民衆の怒りに応える第一歩 | (1) 「つくる会」教科書採択を、日本人民が許すか否かが、韓国民衆の怒り、民衆が願う真の日韓友好の前提としての、日本の侵略と植民地支配に対する反省と謝罪の試金石となっています。そしてその攻防はすでに始まっているのです。決定的であるのは4月にも文科省が出すといわれている「通知」とその内容です。なぜならこの「通知」が「つくる会」教科書採択に有利な、危険極まるものである可能性が極めて高いからです。 文部科学省が都道府県教委に対して新たに「採択手続きの改善を求める初等中等教育局長通知」を出すことは、新聞報道(3/3産経新聞)ですでに明らかになっています。先述した自民党有志で作る「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」総会の場で、同会からの要求に対して、出席していた文部科学省教科書課長と審議官が回答したというのです。教科書検定の最終段階のこの時期に、文科省の担当課長が「つくる会」教科書を露骨に支援する「議員の会」の総会に出席し、まだ発表もされていない「通知」内容を公表すること自体すでに大問題です。これは、文科省と「つくる会」教科書を支援する政治家との癒着関係を明白に示すものです。教科書採択に対する政治介入そのものといえます。 ※中学教科書採択 教委の権限明確化 制度改革めざし通知 文科省方針(産経新聞) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050303-00000002-san-pol 報道によれば、「通知」の危険性は以下の2点に集約されます。 まず、教育委員会の採択権限をさらに明確化すること。「教育委員の決定は選定委員会や調査委員会など下部機関の示した選定資料には拘束されないことも再確認」し、完全に教職員から採択権を奪い、教育委員の権限を絶対化することです。 第二に、教委の作成する「選定資料」に関して、学習指導要領に示された「わが国の歴史に対する愛情を深め」という「目標」に即し、各教科書の違いが簡潔・明瞭に分かるものにするよう指導することを要求していることです。産経新聞は、例えば、歴史では「我が国の文化と伝統の特色」「神話・伝承」「歴史上の人物」「明治維新」、公民では「北朝鮮による拉致事件」「領土問題」「国旗・国歌」「家族共同体の意義」などの観点で各教科書を比較するよう教育委員会に求めています。これは、「つくる会」側の意図を明瞭に反映したもので、「つくる会」教科書を採択しやすい「観点」を教育委員会に設定させようとするものです。 このような中、広島県教育委員会は、文科省通知を先取りするかのように、市町村教委に対して政治的な圧力をかけ始めました。2月7日、広島県教委は、県内六つの教育事務所や市町教育委員会の担当者を集め、2005年に行われる中学校教科書の採択に関する説明会を行い、会議資料の一部として「つくる会」FAX通信や産経新聞記事を配布したのです。市町村教委に対して、「つくる会」教科書を採択するように迫る説明会でした。 また、「つくる会」が、埼玉県・東京都・京都府・和歌山県において、教育委員会関係者(教育長・教育委員長・教育委員・社会科担当の指導主事)に「つくる会」教科書を手渡していることが明らかになりました。 前代未聞のまったく異常な事態がまかり通ろうとしています。 4年前と違い全ての採択区が「危ない地域」です。これまであまり動きのなかった都道府県教委、市町村教委でも、急遽さらなる制度改悪に動く危険性があります。私たちはこうした動きに最大限の警戒と注意を払っていく必要があります。 (2) 危ない教科書に対する反撃の取り組みもすでに始まっています。上述したような看過しがたい「つくる会」の活動を告発する記者会見が3月11日、高島・上杉両氏によって行われ、文部科学省への申し入れ行動も行われています。 申し入れの内容の一つは、昨年「つくる会」の前副会長・高橋史朗氏が埼玉県教育委員に就任することが問題となった際、同氏が現在検定審査中の扶桑社歴史教科書の監修者であるか否かについて、文科省は「申請図書等の内容」に該当し、検定作業の静謐な環境を守るため「検定作業終了後までは公表しない」と言ったきり、高橋氏が同書の監修者である(あった)か否かについて、検定後にすみやかに公表するかどうかさえ、いまだに明言していないという問題です。これでは文科省が特定の団体や出版社の不公正を隠す情報制限をしているとしか考えられないということです。すくなくとも検定終了後すみやかな公開がなされるのは当然のことでしょう。 第二に、文科省は2002年に「つくる会」の要請を受け、検定規則を改定し、申請図書(白表紙本)が検定審査中に漏出せぬよう各教科書会社に厳しい管理を指示したといわれています。ところが昨年末から、多数の扶桑社版教科書の白表紙本が、埼玉県・東京都等の教育委員会関係者に出回り、その白表紙本を当の「扶桑社から受け取った」という証言が出ているとの問題です。文部科学省の厳しい指示で白表紙本を使っての各社の営業・宣伝活動が禁止されているのに、扶桑社のみそれが許されているという異常事態です。文科省はただちに実態の把握を行うべきです。少なくとも扶桑社に対し検定申請の受理を取り消すなど厳しい処分を検討するか、教科書会社全体に白表紙本の配布を禁止している言行規則を廃止するなどの措置を取るかといった問題です。 第三に先述しましたが、文部科学大臣や政務官から「つくる会」寄りの発言が相次いだ問題です。またこれも先述しましたが、文科省の担当者が「日本の前途と歴史教育を考える会」議員連盟の会合に出席し、扶桑社版「つくる会」教科書の採択が有利になる制度への改革を表明している問題です。特定の教科書を支持する人物が文科省のトップを占めているようでは、公正な検定・採択作業が行われるはずのないことは当然です。首相も任命権者としての責任が問われます。中山・下村氏は辞任・解任が問題となるのも当然です。 ※文科省への申し入れ書全文 http://www.h2.dion.ne.jp/ kyokasho/1106kousin/ue-0311.htm(教科書情報資料センター) 私たちもこうした国内外の採択反対運動に連帯し、教科書そのものに対する批判活動、採択反対運動を、現に闘っている人々と連帯しながら強化していきたいと思います。 ※以下に紹介するのは「『日の丸・君が代による人権侵害』市民オンブズパーソン」のHPアドレスです。同HPでは、最新の「つくる会」教科書採択をめぐる全国の動向、広島問題への抗議、文科省通知への批判、都道府県教委や市町村教委への教科書採択をめぐる情報公開請求など具体的な闘いの呼びかけ等を掲載しています。また今回の教科書不採択運動を進めるためのデータベースも完備しています。反対運動推進のため是非参照下さい。http://www003.upp.so-net.ne.jp/eduosk/ また、教科書採択に向けた「調査の観点」(採択基準)を巡る攻防が「つくる会」との前哨戦になるという具体的な問題については、以下を参照のこと。http://www003.upp.so-net.ne.jp/eduosk/tyousanokannten.htm 【6】「つくる会」教科書採択阻止を皮切りに、敗戦60周年、日韓条約40年の今年、日本の侵略と植民地支配の歴史を問い直そう。教育反動、日本軍国主義の新たな台頭と闘おう。 | 4年前、韓国民衆は「つくる会」教科書の検定合格後、日本の過去の侵略と植民支配の教育と教科書を通じた賛美・美化・合理化・正当化に抗議の声をあげました。しかし、今回は検定終了前から、民衆・政府あげて「つくる会」教科書採択のゼロを要求しています。韓国の運動のこれほど早い立ち上がりは、見方を考えれば、日本の軍国主義と反動化の現状に対して韓国民衆、アジア民衆がそれほど深い危機感を持っていることの表れに他なりません。 実際敗戦60年、日韓条約40年を迎える今年、ことに北朝鮮に対する敵対・挑発発言を繰り返す安倍や中川によるNHK番組改ざん問題の暴露から始まって、日米安保2+2協議による米軍再編下での実質的な日米安保の再度の変質、米軍と一体となった自衛隊の海外派兵策動、自衛隊法改悪策動、「安全保障基本法」、「緊急事態基本法」、人権擁護法案、自民党による改憲策動と改憲草案の策定、と日本は真に過去のアジア太平洋への侵略と植民地支配を反省し、アジア太平洋人民に謝罪したのかが、ことにアジア人民から真剣に問われるような事態が次から次に生起しています。私たちはこうしたブッシュの侵略政策と一体となった小泉政権下での日本軍国主義、反動化の一つ一つの表れと闘っていかねばなりません。そのことを通じてのみ、この間独島問題・日本の歴史教科書問題で怒りを爆発させ日本軍国主義の新たな台頭に警鐘を鳴らす韓国人民、アジア人民との真の連帯が可能になると考えます。 |