( 11/8 付 )

 女優の大地真央さん扮(ふん)するおかみが「そこに愛はあるんか」と板前をただすCMがある。「信じられる愛はあるんか」と畳みかけるため、知らず知らずセリフを覚えてしまった。

 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案に考えを巡らすたび、このセリフが浮かぶ。深刻な人手不足を解消したいこちらの都合ばかりが目立ち、肝心の働く側に立った策が見えてこない。

 原則認めてこなかった単純労働の門戸を開き、永住も可能になる政策の大転換だ。新たに設ける在留資格「特定技能」は能力に応じて1号と2号に分けるが、ロボットを働かせるように聞こえなくもない。制度設計の甘さもあらわになり、衆院の審議入りは来週に先送りされた。

 30年前の話で恐縮だが、外国人労働者の身になったことがある。オーストラリアを1年旅しながら、ワインのブドウ畑などで働いた。かつて非白人を排斥した「白豪主義」を警戒したが、嫌な思いをすることはなかった。

 ビザの手続きで訪ねた現地当局で見かけたポスターが忘れられない。生まれた国、肌の色も違う親子3人が笑う写真に「私たちはオーストラリア人」と記し、多文化主義を掲げる国の姿を映していた。

 そんな時代が早晩、日本にもやって来るのだろうか。働き手の外国人頼みは鹿児島でも加速している。来春施行を目指す法案は隣人として受け入れる覚悟も問う。