ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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カルネ村から帰って来てしばらくありんすちゃんはナザリックでのんびり過ごしていました。
もちろん仕事もちゃんとやっています。
いつものようにニ人のヴァンパイア・ブライドに抱かれて巡回をしていると、バタバタと慌ただしくルプスレギナがやって来ました。
ルプスレギナはありんすちゃんの前で立ち止まるといきなり土下座をしました。
「シャルティア様、これからアインズ様にお会いするのですが、シャルティア様もご一緒していただけませんでしょうか?」
ルプスレギナはいつもと異なり真剣な表情で頭を下げています。
しかしながらありんすちゃんはすぐに答えませんでした。ありんすちゃんは知っています。
魅力的な女性──熟女──というものは相手を焦らすものだという事を。
え? ちょっと違うって?
まあ、気にしないでください。
ありんすちゃんの機嫌をとり、ようやく同行する事になったルプスレギナはホッとしてアインズの執務室に向かうのでした。
※ ※ ※
アインズの執務室に緊張した面持ちのルプスレギナと一緒に、訳が分からずキョロキョロしながらありんすちゃんが入ってきました。
ルプスレギナはアインズ様からの突然な呼び出しを受けてから、同僚達のいろいろ噂を小耳にしていただけに緊張が極限にまで達しようとしていました。
(叱られる……アインズ様に間違いなく叱られる。食堂でアインズ様を『絶対最強無敵ドクロキング』と呼んでしまったからだろうか? ……でも、あの時はシズが来て最後までは……もしかしたらあの事? ……いやいや……心当たりがありすぎ──)
メイド達の話ではあのアルベドすら現在謹慎中なのだそうですから、ルプスレギナには不安しかありませんでした。
ルプスレギナは直立不動で最敬礼しようとしましたが、アインズはそれを右手で制し、口を開きました。
「ルプスレギナよ。私に何か話すべきことがあるのではないか?」
ありんすちゃんはアインズの脇にナーベラルとアウラがいることに気がつきました。アウラは何やらありんすちゃんを睨んでいます。人差し指を口にあてたり顔の前で指を振ったりしてきます。ありんすちゃんはアウラの意図が分からずアインズ達の会話を聞いていませんでした。
※ ※ ※
「──愚か者が!」
アインズの怒鳴り声にありんすちゃんは身を縮めました。あまりの恐怖にありんすちゃんは耳をふさぎます。あまりの怖さにちょっぴりそそうをしてしまいました。
そろそろと手を離すとまたもやアインズの怒鳴り声がしました。
「──! お前には失望したぞ!」
ありんすちゃんはびっくりして、更にそそうをしてしまいました。ほんのちょっぴりだけ、ですが。
それできっとアインズに失望されてしまったのに違いありません。アウラが泣き出しそうになるありんすちゃんをあやしながら部屋の隅に連れていきました。
アインズはそんなありんすちゃんに気をかけながらも目前のルプスレギナへの訓戒を続けるのでした。
※ ※ ※
全員が退出し、ただ一人となったアインズは溜め息をつきました。
シャルティアが復活した時に消費した金貨は間違いなく五億Gありました。しかしながらカウントされたのは5億枚でなく一枚足りない4億9999万9999枚。
一体何があったのでしょう……
※ ※ ※
静かに頭を抱えてうずくまるアインズの事を書棚の陰から見守る一人の領域守護者がいました。
彼は思い出していました。
あの日、何故か眷属の数が一匹足りなくなっていたことを。
てっきりいつもの天敵戦闘メイドの胃を満たしたのかと思っていましたが、どうやら深刻な事態を産んでしまったようでした。
「……………」
高貴な身分に相応しい、優雅な身のこなしでマントを翻すと自らの領域の階層へ帰っていきました。
※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました