ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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「……わらわのせいじゃないんちゅ。知らないでありんちゅ」
グビグビ、ガコーン。プファ!
ありんすちゃんはジョッキのミルクを一気に飲み干しました。
ありんすちゃんはデミウルゴスの牧場をダメにしてしまった為、当分の間ナザリックから出る事が禁止されてしまったのでした。
そんなある日、第九階層の大人びた雰囲気のショットバーのカウンターにありんすちゃんの姿がありました。
(まったく。やれやれ……)
カウンター内でグラスを磨きながらキノコのようなバーテンダー──彼は副料理長でした──はそんなありんすちゃんを見ないようにしていました。
見た目は小さな女の子であっても彼女は階層守護者であるのでうかつな事は言えません。
ただただ時間が過ぎてそのうち姿を現すだろうありんすちゃんのシモベを待ち続けるのでした。
ありんすちゃんはおかわりしたミルクを一息に飲み干すと、またもやおかわりを頼みます。
「あの……シャルティア様、今日はそれくらいにしておかれては? ……それに、そろそろお迎えがお見えになるのではないですか?」
「おむかえ? ……そんなの来ないでありんちゅ。今日はとことん飲みたい気分なんでありんちゅ……朝まで」
ありんすちゃんの眼は心なしか座っているようでした。
副料理長は慌てました。
彼はこのショットバーの洗練された雰囲気を大切にしています。言葉にはしませんが、客にもそんな雰囲気を大切にして欲しいと思っています。ですがそんな願いもありんすちゃんには通じません。
まあ、ありんすちゃんは5歳児位の女の子に過ぎないので仕方ありませんよね。
仕方なく副料理長はありんすちゃんにおかわりのミルクを出してあげました。
ゴッゴッゴクビと一気にミルクを飲み干すとありんすちゃんはカウンターに突っ伏してしまいました。
グズグズと鼻を鳴らしているのでどうやら泣いているようです。
このままでは本当に、朝まで動かないかもしれません。そうなれば一晩中ありんすちゃんの世話をさせられてしまうかもしれません。
いやいや、一晩ならまだ良い方かもしれません。それどころかこれからずっとこんな事が、毎晩毎晩続くかもしれません。副料理長は悪寒に震えながら決断しました。
そう、なんとかしなくてはならないのです。
「シャルティア様……そういえば近頃アウラ様マーレ様の第六階層に新しく村が出来たのをご存知ですか?」
ありんすちゃんは顔をあげました。
「村? でありんちゅか?」
「なかなか面白いですよ。是非一度見に行かれては如何でしょう?」
「ふーん。面白いでありんちゅか……」
どうやら副料理長の目論見は無事に達成出来そうでした。
あとは明日出掛ける為に今晩は早く帰って寝た方がよいと言いくるめるだけです。
副料理長は深くため息をつくとありんすちゃんの説得に適した言葉を探すのでした。
※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました
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