ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
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ありんすちゃんの仕事はナザリックの第一階層から第三階層の守護です。
とはいっても子供になってしまったありんすちゃんには良くわからないみたいですね。
とりあえずしもべのヴァンパイア・ブライド二人に手を引かれながら見回りをしました。
でも、ありんすちゃんはすぐ飽きてヴァンパイア・ブライドに抱っこをせがみます。
抱っこに飽きると今度は肩車をねだります。いやはや、見回りにならないですね。
でも、ありんすちゃんは大体5歳児くらいの女の子なのですから仕方ないですよね。
肩車は普段見れない景色をありんすちゃんに見せてくれます。
──あれあれ?
茂みの向こうにピョコピョコとウサギの耳が動いています。
「おもしろそうだから行ってみるでありんちゅ」
ありんすちゃんはヴァンパイア・ブライドに肩車されたままウサギの耳を追っかけることにしました。
※ ※ ※
ナザリックの戦闘メイド、ナーベラル・ガンマは焦っていました。
アインズ様が冒険者モモンとしてエ・ランテルに向かうの際に同行する筈だったのについつい寝過ごしてしまったからでした。
魔法発動──〈ラビットイヤー、ラビットフット、ラビットテール〉
「アインズ様は…………さすがにもう、いないか……」
急がなくては……ナーベラルは頭の中で言い訳を考えながら全速力でアインズの気配を追うのでした。
(……いつもより30分多く眠ってしまいました……これではダメだ……いつもより30分遅く目覚めました……これでは同じ……春眠暁を覚えずとは良く言ったものでして不覚にも30分程多く睡眠をとってしまったようです……言い訳じみて無理……いっそ誠に申し訳御座いません。寝坊しました。かくなるうえは命をもって償い……! え? ──)
「──!」
「──!」
突然現れたありんすちゃんとぶつかりそうになったのです。
「──シャルティア様、ど、どちらに?」
「ナーベはどこに行くのでありんちゅ? わらわも行きたいでありんちゅ」
「申し訳ありませんが、私はアインズ様のお供として、あの……急いでおりますので……失礼しま──」
(……もしかしてシャルティア様を言い訳にしたらアインズ様もお叱りにならないのでは? ……素晴らしい考え。子供になったシャルティア様相手ならきっとお許しくださるに違いない)
ナーベラルはにこやかにありんすちゃんに話しかけました。
「……あの……コホン。……その……よろしければ、シャルティア様もご一緒されますか?」
ありんすちゃんは力強く頷きました。
「わかりました。シャルティア様、ではこれより私がシャルティア様を抱っこして差し上げますね」
ありんすちゃんを抱っこしてナーベラルはアインズを追いかけたのでした。
※ ※ ※
ナーベラルからのメッセージを受け取ったアインズはエ・ランテルの宿屋で待っていました。
やがてナーベラルと一緒にありんすちゃんがやってきました。
(──え? シャルティアが何故? えええ?)
アインズは動揺を隠しながらナーベラルに問いかけました。
「……ナーベよ。何故シャルティアが一緒なのだ? シャルティアにはナザリックの守護をさせていたのだが? これは一体どういうこ──」
ナーベラルは額を打ちつけながら答えました。
「申し訳ありません! 実はシャルティア様がアインズ様にどうしてもお会いしたいとおっしゃいまして、断りようなくお連れ致しました。……つきましては道中遅れ誠に申し訳ありません」
(──いや、だからここではナーベとモモンなんだって……アインズ様とか言って誰かに聞かれたら面倒……)
「……ナーベよ。ここでは私は冒険者モモンだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「もうし訳ありません。アイ、モモンさ──ん」
「わかればよろしい、いや、よいのだ」
アインズはありんすちゃんを覗き込みました。するとありんすちゃんはそんなアインズの気持ちなど知らぬ気に、幸せそうにすやすやと眠っています。
(……おいおい……どうするのよ? 幼児を連れた冒険者って……こんな所を誰かに見られたりしたら何と思われるか……困ったぞ……)
途方に暮れたアインズが天を仰いだ瞬間、ありんすちゃんが小さなくしゃみをしました。
「……くちゅん!」
途端に魔法が発動してありんすちゃんの姿は消えてしまいました。
※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました