ちなみにロリコンである   作:善太夫
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第七話◆ガーターベルトな夜

 イビルアイは下着姿になりうつむく。セバスの刺すような視線を感じながら全身がぎこちなくこわばるのを感じる。

 

 パンティに手をかけた所で涙ぐんだ瞳で上目使いに見上げる。覚悟はしていたがいざとなると逃げ出したくなる。

 

 足もとに下着が落ちた瞬間にイビルアイはギュッと目をつぶる。気配でセバスが近付くのがわかった。

 

「それではこれを着けて下さい」

 

 イビルアイはおそるおそる目を開ける。自身の幼さの残る裸身に改めて羞恥を感じながらセバスが差し出すものに手をのばす。

 

「……これはただのガーターベルトです」

 

 一瞬にしてイビルアイの頭の中が白くなる。

 

「……ちまたでよくある間違いの最たるものが間違ったガーターベルトのつけ方でして。なぜって下着を履いた上にガーターベルトを着ける方が多いのでしょう? 本来ガーターベルトとは最初に着けるべきものなのです。実に嘆かわしい。……そう思いませんか?」

 

 イビルアイは答える事が出来なかった。羞恥心に耳朶まで染めてなにも考える事が出来なくなっていたのだった。

 

 セバスはそんなイビルアイに微笑んでみせた。

 

「そんなに構えなくても良いですよ。私は貴女の身体に触れるつもりはありません。……路傍の花のつぼみを愛でるのに摘み取ってしまうのは愚かな事です。路傍の花のつぼみは近くで眺めて楽しむべきなのです」

 

 そう言うとセバスはイビルアイを立たせる。容赦ない視線にさらされて思わず身体をくねらせる。

 

「……もう、ゆるして……ください」

 

 普段は気丈な彼女の弱々しい懇願を受けてセバスは優しく告げた。

 

「……では……この衣装を着ていただきましょう」

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓──自らのの執務室でアインズはユリ・アルファとエントマの訪問を受けていた。

 

「おそれながらアインズ様にお願いがございます。……セバス様をプレアデスのリーダーから外してプレイアデスに移行して頂けませんでしょうか?」

 

 アインズは驚く。プレイアデスに移行するという事は戦闘メイド(プレイアデス)の末妹のオーレオールをリーダーとした組織に変更する事であり、執事であるセバスを外す事でもある事だ。

 

「……うむ。理由を聞かせよ。その理由次第では検討しよう」

 

 アインズの言葉にユリは話しはじめた。

 

「……先日の王都での任務でセバス様がソリュシャンを任務に同行させるのに難色を示して結果、ソリュシャンは任務からはずされました。この一件はアインズ様もご存じかと思います」

 

 アインズは静かにうなずく。

 

「……この事は妹──ソリュシャンにとってセバス様に対する根強い不信感を抱かせる事になりました」

 

 ユリは一旦話をきる。そして微かに躊躇するような表情をみせてから話を続けた。

 

「……王都でエントマが怪我を負わされたのはアインズ様もご存じかと思われますが……あろう事かその憎むべき敵の女をセバス様はエ・ランテルに囲っているのです」

 

「──なん……だと?」

 

 アインズがエントマの様子を伺うと表情に変化はみられないが肩が震えていた。

 

 アインズはふと思い出していた。イビルアイという少女がやたらと馴れ馴れしくセバスに抱きついていた事を。

 

「──セバスをここに──」

 

 アインズは口ごもる。脳裏にはセバスの設定にあった『ちなみにロリコンである』との一文が浮かんでいた。

 

「──いや、あまり事を大きくすべきではないな。よかろう。私が直接セバスの商館に出向き真意をただすとしよう。……しかしセバスに対するお前たち姉妹の懸念もわからなくない。よってプレアデスはこれよりプレイアデスへ移行、ただしオーレオールはそのまま桜花領域にとどまりユリをリーダー代理とする。よいな?」

 

「「はっ。かしこまりました」」

 

 エントマが顔をあげた。

 

「……アインズ様……あの小娘の声を是非私に……」

 

「……わかった。考慮しよう」

 

 ユリとエントマが退出すると当番の一般メイドにナーベラルを呼んでくるように命じるとアインズはため息をついた。

 

「……やれやれ……たっちさん……セバスの設定……何やってんくれてんですか……まったく……」

 

 

 

 

 

 

 アインズはモモンの姿で商館の前に立つ。セバスが拠点としているエ・ランテルの商館にアダマンタイト級冒険者“漆黒”が訪れていた。

 

「アイン……モモンさ──ん。ここは私が……」

 

 ナーベラルにアインズがうなずく。おそらく『アインズ様』といいかけたであろう事には目をつぶる。

 

 ノッカーの音に中で人がやってくる気配がして、扉が開かれた。

 

「……ニニャか? しかし──」

 

 扉が開かれあらわれたニニャの予想外の格好に思わずアインズは言葉をうしなった。

 

「……これはモモン様。わざわざおいでいただきまして申し訳ありません。どうぞお上がりくださいませ」

 

 セバスがイビルアイを連れて出迎える。アインズはイビルアイの格好にまたしても驚いた。

 

「……この格好は……まさか?」

 

 アインズの言葉にセバスが答えた。

 

「はい。この二人は『魔法少女』にございます」








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