ちなみにロリコンである 作:善太夫
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「するとお二方が呼ばれたのはそれぞれに
リ・エスティーゼの商館で寛ぐアウラとマーレにセバスが訊ねた。ここではダークエルフの双子は王族の血統をひくお嬢様という設定の為、アウラも普段よりは少女っぽい格好をしていた。とはいえスカートではなくフワリとしたキュロットなのだがそれがどうも限界のようだった。
「あ、あの……お茶をお持ちしました」
「ご苦労様ですニニャ。貴女も一緒にお飲みなさい」
セバスが傍らの椅子をひきニニャを座らせる。完治したツアレはカルネ村に移り代わりに復活させられた妹のニニャがメイドとして商館で働いていたのだった。
「……しかし……あのシャルティア様がですか……たしかあの方には精神支配は無効だったはず。それがいったい何故でしょう?」
「……うーん。アインズ様のお話だとどうやらワールドアイテムが使われたみたいだって」
アウラが紅茶をかき混ぜながら答えた。
「……そうでしたか。それでシャルティア様は?」
「ずっとあのまま立ちっぱなしみたいだね。幸い相手に完全には支配されなかったみたい……全くあの馬鹿……」
アウラがかき混ぜる紅茶カッブがカチャンと強い音をたてた。
「……シャルティアさん、ずっと独りぼっちで立っているんですか……かわいそうですね」
マーレの言葉にセバスがギュッと唇を噛み締める。
「あのままシャルティア様が放置状態ですか……いけませんね。それは全くいけません」
セバスがいきなり立ち上がった。
「お二方には申し訳ありませんが……しばしのおいとまを頂きたく存じます」
深々と頭を下げるセバスに対して二人は対照的な反応だった。
「え? あの……でもアインズ様は僕たち階層守護者にはこの件に関わるなって……あの……おっしゃって、あの、……」
「……こうなったらあたしの分も任せるよ。あの馬鹿の目をガツンと覚まさせてやって!」
セバスは改めて二人に深々とお辞儀をした。次にニニャに向かう。
「私のいない間は任せます。お嬢様方の身のまわりの事はよろしくお願いします」
セバスはエ・ランテル郊外に放置されたままになっているシャルティアのもとに向かうのだった。
◆
「……しかしシャルティア様が放置状態だというのに誰もシャルティア様のお世話をしないなど……プレアデスもいるというのに全くなっておりませんね。女性ならば身だしなみに人一倍気づかうべきですのに……メイド失格ですね」
エ・ランテル郊外に向けて走るセバスは呟いた。
「……あの毎日お風呂をかかさないきれい好きなシャルティア様がいくら洗脳状態とはいえ何日間もお召し物を替えないなど……あるまじき事です」
セバスは両の拳を握りしめる。
「待っていてくださいシャルティア様! このセバスがあなた様の着替えを手伝ってさしあげます!」
セバスの顔が上気する。
「そう……した、下着も替えてさしあげます!」
セバスは更に加速した。
◆
ナザリック地下大墳墓玉座の間
〈……アインズ様! シャルティアを監視中の姉さんから緊急にお知らせしたいと──なんですって? セバスが?〉
慌ただしいアルベドからの〈メッセージ〉にアインズは緊張する。セバスという名前に『ちなみにロリコンである』という言葉を思い出す。
〈アインズ様! すぐにも氷結監獄へ! セバスが!──〉
アルベドの緊迫した〈メッセージ〉をかき消すようにもう一つの〈メッセージ〉が聞こえてくる。
〈──アインズ様でいらっしゃいますか? セバスにございます。実はシャルティア様のお着替えをお手伝いしているのですが問題がございまして……そのパンティを足から抜く事が出来ません〉
「──え? ナンダッテ?」
アインズの頭に冷静な老執事の言葉が響いた。
〈シャルティア様の足を地面から離せないのでパンティを脱がす事が出来ないのでございます〉
ほどなく氷結監獄に辿り着いたアインズは全裸の美少女の足もとにうずくまりパンティを脱がそうとしている老執事の姿が大きく写し出された〈
◆
「ではこれから守護者シャルティア・ブラッドフォールンの復活を執り行う」
ナザリック地下大墳墓玉座の間で形を溶かした巨額の金貨はやがて人の形にかわり裸体の少女となる。
「……セバスよ。何故写真を撮る?」
セバスは厳めしい表情で平伏する。
「アインズ様。NPC復活……中でも階層守護者の復活はなかなか御座いません。なればこそ資料としてたくさんの写真を記録し残す事も重要にございます。……けっして自らの趣味や待ち受けにしようと考えたのでは御座いません」
アウラはセバスの言葉に白々しいものを感じていた。彼女とマーレもセバスの資料写真を大量に撮られていた為だ。
アインズがセバスに口を開こうとした瞬間、すっとんきょうな叫び声が上がった。
「胸が……胸が無くなっていんす!」