ちなみにロリコンである   作:善太夫
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第二話◆格言『貧乳は貴重だ ステータスだ』

「──以上だ。セバスとソリュシャンはすぐに出立してくれ。まずはエ・ランテルへ行くのだ」

 

「──恐れながらアインズ様。果たしてソリュシャンでよろしいのでしょうか?」

 

 セバスは咳ばらいをするかのような仕草でアインズに進みよる。色をなして口を開きかけたソリュシャンを片手で制したアインズはセバスに問いかけた。

 

「……うむ。ソリュシャンならばアサシンとして情報工作に適任だと思うのだが……セバスには別の考えがあるようだ。よかろう。お前の考えを聞かせてみよ」

 

「……ははっ。お聞きいただきましてありがとうございます。確かにソリュシャンはその持つスキルといい、適任かとは思います。が、しかし──」

 

 セバスの目が光を帯びた。

 

「ソリュシャンはまさに女として熟したといえる年齢であります。今回世間知らずな富豪の娘を演じるのにあたりもっと適任者がこのナザリックにいるのではないでしょうか?」

 

「──ほう。して、その適任者とは誰の事か?」

 

 セバスは深呼吸をした。

 

「いたいけな娘に相応しい妙齢の少女を演じるのはアウ──マーレ様こそが相応しいかと」

 

「……フム。わかった。……しかしセバスよ。今回はソリュシャンで──」

 

「──おそれながらアインズ様。この度の件、是非にも私とマーレ様にお命じくださいませ」

 

 セバスの気迫にアインズは押されてしまい、結局アインズは許可してしまうのだった。

 

 

 

「……えっと、あ、あの……この料理は口に……あいませんね」

 

 エ・ランテル一番の宿屋である黄金の輝き亭では年端もいかないダークエルフの少女と執事の主従が一騒動を起こしていた。

 

「──ご主人、わが主人はどれも口にあわないとおおせです。わが主人はダークエルフという種族ではありますが高貴なる血統の身、ほかにもてなす事は出来ないのでしょうか?」

 

 店の主人はただオロオロするばかりである。無理もない。年若でありダークエルフでもあるのだが、気品のある美貌は美しい夜会用ドレスとあいまってダイヤモンドの輝きのごとくの美しさであった。

 

 白髪に姿勢のよい執事は丁寧ながら強い意思を感じさせる会釈をすると振り返った。

 

「……ザックさん。これからすぐにリ・エスティーゼに向かいます。馬車の準備をしてください」

 

 セバスはマーレの後ろに立ち軽く椅子をひく。マーレは立ち上がると手をセバスに差し出して小声で言った。

 

「……あの演技で、あの、よかったでしょうか? ぼ、僕よりお姉ちゃんの方が……その、うまく、あの、やれたんじゃないかな……」

 

「そんな事ありません。マーレ様の演技は美事でございました。それに着飾ったマーレ様はまごう事なき高貴なる姫君であらせます」

 

 マーレはセバスの熱のこもった視線に思わず顔をそらす。主従は店の表にザックが回した馬車に乗り込んだ。

 

 

 

 

「……順調に運んでいるようでありんすな」

 

 馬車の中ではシャルティアが両側にヴァンパイア・プライドを従えて待っていた。

 

「はい。シャルティア様。全て順調のようです」

 

 シャルティアはマーレの姿をネットリとした視線でなめまわす。

 

「……それにしてもマーレはよく似合っていんすな。わら、コホン……私より女らしいでありんしょう」

 

 マーレがあわてて首をふる。

 

「ぼ、僕は男ですって……だからやっぱりお姉ちゃんの方が……あの、て、適任だったのでは……あの……」

 

 シャルティアがわざとらしくため息をつく。

 

「チービースーケーが? 論外にも程がありんす。あのがさつなチビスケに令嬢役は……できの悪いコスプレになるでありんしょうな」

 

 馬車の中ではしばしの沈黙が続いた。

 

「……シャルティア様。前よりお聞きしたかったのですが……」

 

 ためらいがちにセバスが口を開いた。

 

「……シャルティア様の胸は……パッド──」

 

「──ああん? セバスてめえ喧嘩うってんのか?」

 

 シャルティアの顔が激怒にそまる。

 

「……シャルティア様の胸はパッド、ですよね?」

 

「──てめえその姿で私とやりあうってのかセバス?」

 

 まさに一触即発──

 

 

「じつは私は以前、ペロロンチーノ様から伺っております」

 

「──な? ペロロンチーノ……さ……ま?」

 

 セバスはシャルティアにお辞儀をする。

 

「ペロロンチーノ様は私の設定の一部を加えてくださった事がございます。そしてその時におっしゃったのです。そう……尊い真理をしめすお言葉を……『貧乳は貴重だ ステータスだ』と!」

 

「……貧乳が……貴重? ……ステータス……」

 

 シャルティアを占めていた怒りがたちまち消える。

 

「さらにペロロンチーノ様はこうもおっしゃいました。『ちっぱい最高! ロリは正義!』」

 

 シャルティアはガックリと肩をおとした。

「……私は……私は……貧乳を恥じていた私はいったい……」

 

 セバスは立ちあがりにこやかに手を差し出した。その手には純白のハンカチがあった。

 

「……良いのですシャルティア様。貧乳を恥じてパッドで背伸びする貴女こそがかのペロロンチーノ様が望んだのですから」

 

 シャルティアはセバスからハンカチを受けとると鼻をかんだ。

 

「……ん? これはハンカチ? ……ではない?」

 

 シャルティアがハンカチを広げるとそれはパンティーだった。








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