DMMO‐RPG YGDRASIL
一二年の歴史が正に終わろうとしていた。
ギルド アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターであるモモンガは執事とメイド達を引き連れて玉座の間にむかう。
階段の下で振り返り彼らNPCにそこで控えるよう命ずる。
ふと、執事の名前が気になったモモンガは執事のステータスを表示する。
(ああ、そういえばそんな名前だったな……)
脳裏の片隅から『セバス・チャン』の名前を掘り起こしながら、さらにステータスを読み続ける。
(──ん? ………たっちさん…………え? ええーー!)
セバスのステータスの最後の一文にモモンガの目が泳ぐ。目の前の厳めしい
しばらくしてからモモンガは何事もなかったかのようにセバスのウィンドウを閉じると玉座にむかう。玉座に座ると目を閉じて静かに終焉の訪れを待つ。
何事もなかったかのように。
どれ位経ったのだろうか。いまだに訪れないYGDRASIL終了に違和感を感じて目を開けたモモンガに初めて聞く声が尋ねた。
「至高なる御方、モモンガ様。どうか私にご命令下さい」
かつてのギルドメンバーたっち・みーにも似た声音で
◆
モモンガはセバスの表情をじっと眺める。セバスはそんなモモンガを見詰めたまま、指示を待つ。
モモンガはそれまで感じていた違和感の正体に気づく。セバスが──NPCが自ら意思を持ち、会話しているという事を。
どうやらこれはゲーム世界に良く似た別の世界だと考えて良さそうだ。
モモンガはセバスに手を伸ばす。
YGDRASILではセクハラ行為は禁止されていた。モモンガはセバスの股間に伸ばしかけた手を戻す。
──何も男のNPCに触れて確かめる事はないな。どうせなら魅力的な女性NPCの方が……
「──ゴホンゴホン。セバスよ。どうやら非常事態が起きたらしい。いまからプレアデスから二名を連れて地上に出て外の様子を調べてこい。もし、知的生命体がいたら丁重に連れてこい。敵対行動は避けよ。かりに強大な敵と遭遇したら無理せず撤退しろ。伝令としてプレアデスを使え。わかったな」
「……ハッ。ただちに」
モモンガは厳めしい表情のまま、出ていくセバスを眺めながらふと呟いた。
「……でも、ロリコンなんだよな。アイツ……」
◆
第六階層闘技場に各階層守護者を集めてそれぞれNPCの忠誠を確認、さらにセバスからの報告を受けて現在異世界にナザリック地下大墳墓が転移したと判断したモモンガはマーレに大墳墓の隠ぺいを指示。そして自身はリモートビューイングを操作してさらに周辺の調査を行うのだった。
アインズはリモートビューイングの画像をあれこれ動かす。しかしながら隣で食い入るように見つめてくるセバスが気になって仕方がない。
「うん? 村か。祭りでもやっているのかな?」
小さな開拓村を見つけたアインズは画像を更に拡大する。その瞬間アインズは間違いに気づく。
慌ただしい村人たちは祭りなどではなく、殺戮者たち──フルヘルムにチェインシャツを着込んだ兵士たちから逃げまどっていたのだった。
──嫌な
アインズはセバスの様子を盗み見る。かわらずに直立する姿にホッとする。
(たっちさんばりに『困っている人がいたら助けるのは当たり前』だなんて言い出さなくてよかった……)
ふとアインズと一人の村人の目線があう。男は兵士に切られて崩れ落ちる。アインズには男の口が『娘たちをよろしくお願いします』と動いたように見えた。
兵士が振り返るとそこにはまだ十代半ばの少女が幼い妹と立ち竦んでいた。
「……ぬう。まだつぼみのままのもろくも儚い少女が……あたら美しい花を咲かす間もなく命を散らされるなどと……とても許すまじき行為ですね」
アインズが顔を上げるとセバスが怒りをあらわしていた。
「よいですか! あの、少女と女との狭間という……今から咲こうとする蕾のような美しさが内側に秘められた、おそらく人生で一番儚く脆く美しい時期を謳歌すべき少女が……その大輪の花を咲かす事なく消えようとしているのです! ……私には我慢ができません。彼女たちはあの兵士どもではなくこの私の胸に抱かれる事こそ相応しいのです!」
アインズは少女論を語るセバスをぼんやりとした目で眺めた。そして気がついた。たしか以前にも──ああ、ペロロンさんだ……
セバスの演説はペロロンチーノが熱くロリコンについて語った時ににていた。
「……アインズ様。どうかこの私めにご命令ください。あのか弱き少女たちの命を救う事を!」
アインズはうなずく。すぐさまゲートを発動させて執事と主人はカルネ村に向かった。
◆
「ヴォオオオーーッ!」
雄叫びをあげながら走っていくデスナイトをポカンとしながら見送っモモンガは気を取り直して姉妹を見る。
「だ──」
「大丈夫かね? ……ふむ。姉の方はケガをしているようだ。……よし。これで大丈夫。さて、これを──」
セバスは気功術で姉のケガを治療するとモーニングの内ポケットから白い布を差し出した。ためらいがちに受け取った姉──エンリ・エモットは布を広げて思わず赤面する。
「……履いてもらえないパンティーは可哀想なものです」
──いや、おかしいだろ? それにそもそもなんで内ポケットにパンティー持ってるのよ? レースのフリルのパンティーを? もしかしてハンカチと間違えたとか? おかしいだろ? ……いろいろと……
モモンガは心のなかで突っこみまくる。ふとバードマンのギルドメンバーがモモンガに親指を立ててみせた気がした。
姉妹──エンリとネムは失禁で濡らした下着を脱ぎ、セバスが差し出したものに履き替えた。レベルが低いもののマジックアイテムであるパンティーの履き心地に二人は思わず感動する。
「……落ち着いたようだな。では私にこの村で何が起きたのか教えてもらおう。私は──うむ。そうだな。……私の名前はアインズ・ウール・ゴウン。通りすがりのマジックキャスターだ」