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ホーム > 湖国 滋賀~夢や希望に満ちた豊かさ実感・滋賀 > インタビュー・対談 > 楽天株式会社常務執行役員CMO 中島謙一郎さん

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更新日:2012年9月3日

淡海の人

このコーナーでは首都圏でご活躍中の滋賀県ゆかりの人、滋賀県出身有名人にインタビューしています。

 


 

 

なかじま けんいちろうさん
  • 楽天株式会社常務執行役員CMO(Chief Mobile Officer)
  • 1967年大阪府生まれ。小学3年から滋賀県に。
  • 膳所高校卒業
  • 大阪市立大学経済学部卒業
  • 1989年株式会社リクルート入社
  • 2000年 株式会社サイバード入社取締役就任
  • 2001年 同社常務取締役就任
  • 2005年 同社取締役兼 執行役員副社長就任
  • 2006年 株式会社サイバードホールディングス取締役
  • 株式会社サイバード執行役員副社長 兼 CSO(Chief Strategy Officer )就任
  • 2010年 楽天株式会社入社
  • 2010年2月より現職

楽天株式会社常務執行役員CMO 中島謙一郎さん

◇出身地としての滋賀県~就職まで

私は小学3年の時に大阪から父の出身地である滋賀県に引っ越し、守山の吉身小・守山中・膳所高を卒業し、大阪市立大学経済学部に進学しました。守山は現在ほど住宅もなく、自然の中で伸び伸び遊びました。家の横に大きな川があり、子供の頃は巨大な牛ガエルを捕まえた思い出があります。

中学では卓球部のキャプテン、高校では柔道の国体強化選手として練習に打ち込みました。大学では体育会ヨット部に所属しながら学生企業をおこして、企業を相手に学生市場でのマーケティング活動や学生向けのイベントの企画をするなどの活動をしていました。

大学卒業後は、リクルートに就職しました。リクルートは幅広い業種で多数の経営者や役員を輩出する存在になっていますが、当時から若い社員にも責任ある仕事を任せて、競争の中で成長させるという企業風土がありました。私は企業の採用支援を行う人材部門に配属され、多様な業種のオーナー経営者とのビジネスを通じ、若くして本当に多くの事を学ぶことができたと思います。当時、マネージャーに昇格すると社訓である『自ら機会を創り出し、その機会によって自らを変えよ』と書かれたプレートをもらえ、机に置くことができたのですが、その言葉は今でも私の「座右の銘」として大切にしています。

◇創世記のIT業界に

就職して10年が経過したのを契機に独立し、株式会社サイバードの創業に参画しました。当時NTTドコモの「iモード」がブレイクする直前で、モバイルコンテンツ・ビジネスがまさに拡大しようとしていた時期で、その流れにもうまく乗れ、創業から2年半という史上最短記録でJASDAQに上場できました。そしてサイバードでもちょうど10年が経過し、同社の副社長を務めていた頃、ずっと懇意にしていた今の楽天の三木谷から強く誘いを受け、楽天の経営メンバーの一員として転職するに至りました。

現在、私は楽天で大きく2つの業務を担当しています。一つはスマートフォンやタブレット端末が急速に普及している状況の中で、CMO(Chief Mobile Officer)として、既存の楽天の全サービスをその新たなプラットフォームに対応させていくこと、そして、その新たなプラットフォーム上で今までにない新しいサービスモデルを創造することを担う、楽天グループのモバイル・ビジネスにおける責任者の立場にあります。

もう一つは、編成部の担当役員としてです。楽天は、楽天市場の他、トラベル・証券・銀行などのさまざまな事業を展開しておりますが、すべての事業に共通して必要なのはサービスの入口となる「ウェブサイト」です。編成部はグループの全事業に横串を通すように、ウェブサイトの構築の部分を担っています。さらに、SEO、データ解析、ユーザーテスティング、UI/UXなどのWEBビジネスに不可欠な戦略的な取り組みや、HTML5などのWEBの最新フロントエンド・テクノロジー、ソーシャル・マーケティングなどの最新マーケティング・ノウハウの蓄積と実践などをミッションとして取り組んでいます。

◇EC(電子商取引)とモバイルの将来

これまでもインターネットの普及によって、リアルなお店を大規模に出店していくような旧来型の事業モデルがどんどん衰退していき、かわりにEC(電子商取引)市場が大きく伸びてきました。例えば2011年の楽天市場での年間総取扱高は1兆円を超え、年末に実施したセールス・イベントではわずか30時間で100億円以上を売上げました。もう旧来型の大手百貨店・流通グループに肩を並べる規模にまでECは拡大を遂げているのです。

このECの拡大が、フェイスブックなどのSNSやスマートフォン、タブレット、電子書籍端末のようなスマート・デバイスの普及で、今後さらに変化を遂げながらそして加速していくと思います。劇的に進化を遂げていくインターネットのプラットフォームを使って、いかに技術の流れを早く掴み、適切な消費者とのコミュニケーションを通じて新しいサービスを提供できるかが「鍵」なのです。

◇滋賀県への提言

滋賀県は住みやすいところです。一歩遅れて発展したためか、自然を大切に残しながら都市化が計画的に進められ非常にバランスがとれていると思います。人口が増加しているとのことですが、大阪や京都に通勤するための単にベットタウンとなることがないよう、滋賀県ならではの産業や物産、そして滋賀県発のベンチャー企業も育てていく必要があると思います。

いいものをつくってさえいれば売れる、という時代ではありません。地方の物産でもネットの進化に対応して、日本中に、世界中に売り出すことができます。実際にブランドを大事にしながらもインターネットの力を利用して特産品を全国レベルでうまく売り込んでいる地方の例はたくさんあります。弊社でも「地方をエンパワーメント」しようと、『まち楽』という名称のサービスを提供して地域と連携した取り組みを実践しています。また、今後はマスに向けた広告を打つだけではなく、フェイスブックのようなソーシャル・ネットワーク上でのマーケティングが非常に重要になっていくでしょう。親しい友人がSNS上で「これいいね!」と紹介する。それが連鎖をして、大きな購買が新たに生まれる。SNSの連鎖の力は国家さえをも転覆させる力をもっているわけですから、その影響力は図り知れません。これからは「e」、つまりネットの使い方が大事なのです。また、インターネットの世界はそもそも国の垣根がありませんので、ネットベンチャーに地域的なデメリットは何もなく、滋賀県発の世界的なネット企業が生まれても何ら不思議はありません。

昨年の5月にパリでの「G8(主要国首脳会議)」に先立って行われ、グーグルのエリック・シュミットやフェイスブックのマーク・ザッカーバーグなど世界中から主要なインターネット企業のTOPが参加したサミット「eG8」において、日本から招聘されたのが弊社の三木谷、ただ一人だったという事は、会社としては誇らしいですが、日本という国を見た場合は非常に危機感を感じます。世界の大きな「e」の流れの中で日本は完全に取り残されつつあります。もともと「iモード」に代表されるモバイル・インターネットは日本が草分けで、少し前までは、その分野では世界の最先端を走ってました。それが今では完全に海外に追い越されてしまっています。是非日本発の新たなネットサービスが滋賀県から生まれるのを期待したいですね。
 

今回は、楽天株式会社常務執行役員CMO 中島 謙一郎さんにお話を伺いました。(2012年1月)

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