iPhone(アイフォーン)に突然見覚えのないわいせつな画像が届く-。近くにいる人と画像などを無線通信で共有する機能「AirDrop(エアドロップ)」を悪用した迷惑行為で「エアドロップ痴漢」と呼ばれ、全国で被害が相次ぐ。兵庫県では7月に男が逮捕され、福岡県警には被害相談が数件寄せられているという。専門家は「スマートフォンの設定変更で簡単に予防できる。実践して被害防止を」と呼び掛けている。

 10月末、福岡市内。20代の女性会社員は、混雑した電車内でアイフォーンを操作していると、見知らぬ男の下半身の写真が突如表示された。周囲を見ても、誰が送ったのか不明。写真の下に《辞退》《受け入れる》とあり、辞退をして画面は消えたが、不快感と恐怖心は残った。「気持ち悪い。送信者を特定してほしい」と県警に相談した。

 エアドロップは、アイフォーンやiPad(アイパッド)など米アップル製端末に標準搭載されている。半径9メートル以内の通信可能な所有者の名前が画面に一覧で表示され、名前を選ぶと、その場ですぐに写真や動画を送受信できる。

 電話番号やメールアドレスを交換していなくてもさまざまなデータをやりとりできる手軽さから、利用者は少なくない。だが、昨年ごろからエアドロップ痴漢が増え、会員制交流サイト(SNS)には「男性器の画像が送られ吐き気がした」「辞退しても連打で(画像を)送られた」などと被害の声が目立つようになった。男性も被害に遭っている。

 IT関連の法律に詳しい福本洋一弁護士(大阪市)によると、こうした迷惑行為は、刑法のわいせつ物頒布罪に問われる可能性があるという。たとえわいせつ画像でなくても嫌がらせ目的で画像を送りつけると、都道府県の迷惑防止条例違反罪に当たる場合もある。

 実際、兵庫県内では、電車内で20代女性に男性の局部画像を送ったとして、県迷惑防止条例違反容疑で会社員の男(31)が逮捕された。大阪では、40代の男性会社員が8月に府迷惑防止条例違反容疑で書類送検された。

 福本弁護士は「所有者の名前で女性と判断され、被害に遭うケースが多い」と設定変更を呼び掛ける。

 アイフォーンの場合、《設定》→《一般》→《AirDrop》で受信先を「すべての人」ではなく、「受信しない」か「連絡先のみ」に限定すると、見知らぬ人からの送信を防げる。所有者名は《設定》→《一般》→《情報》→《名前》で変更できる。

 福岡県警子ども・女性安全対策課の中牟田雅次席は「悪質な嫌がらせ行為から自衛するため、まずは設定変更を」と強調している。

=2018/11/08付 西日本新聞夕刊=