・筋トレすると、ハゲる!?
今回取り上げたいのは、「筋トレをするとハゲる説」。聞いたことはある人もいるでしょう。この説が本当なら、各種アスリートやスポーツを趣味としている人は、運動中に髪の毛がハラリ、なんて心配…とまではなくても気が気でないでしょう。筋トレが髪の毛にどんな影響を与えるのかをしっかり検証してみることにしました!
1、ホルモンとAGAの関係
まず、その理由をひも解いていきましょう。筋肉を鍛えると、男性ホルモンであるテストステロンを多く分泌するよう、脳の視床下部が指令を出します。テストステロンは、筋肉を増大させて男性らしいたくましい骨格を作りながらそれらのはたらきを高め、バイタリティをアップする作用があるので、筋トレには必要不可欠です。ところが、このテストステロンが5αリダクターゼと結びつくと、ジヒドロテストステロン(DHT)を生成してしまうのです。AGAの主な原因であるDHTは、毛母細胞の細胞分裂を阻害し、ヘアサイクルを早めて成長期を短くしながら抜け毛を促進させていく恐ろしい男性ホルモンですから、筋トレを始めたことによって急に髪の毛が減っていくこともあり得るわけです。また、筋肉を鍛えることで消費される栄養素が髪の毛にまわらなくなることで、薄毛リスクが高まる場合もあります。髪の毛の90%以上はケラチンというたんぱく質でできているのですが、筋肉を作ったり回復させたりするのにも多くのたんぱく質が必要となります。そして、そのケラチンを合成する際に欠かせない亜鉛も、筋肉細胞の代謝に多く使われていきます。こうした栄養素を補わずに筋トレをしていくと、どうしても髪の毛を作る分が不足してしまいがちになり、元気な髪の毛を作り出すことが難しくなるのです。
とは言え、運動している人全員がAGAになる訳ではなく、個人差があるのも事実。AGAになるかならないかは、5αリダクターゼの分泌量と毛乳頭にある男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)の感受性によって違ってきます。この5αリダクターゼには1型と2型があり、1型は全身の皮脂腺に、2型は前立腺のほかに前頭部や頭頂部の毛乳頭付近に存在しているのですが、この2型が多いとテストステロンと結合して作り出されるDHTの量も多くなるのです。さらに男性ホルモン受容体がDHTを感受しやすいタイプであれば、DHTとドンドン結びついて髪の毛の成長を抑制してしまい、AGAが進行していってしまいます。この5αリダクターゼの分泌量と男性ホルモン受容体の感受性は遺伝によるものが大きく、ここに個人差が生まれます。つまり筋トレは単なるきっかけにすぎず、悪いのは5αリダクターゼの量と男性ホルモン受容体の感受性ということになります。