東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から > 11月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

駅前で、河川敷で 国会審議「上映中」

早稲田大の大隈記念講堂に映し出された国会審議の動画=東京都新宿区で(大野暢子撮影)

写真

 国会審議の動画を街頭で上映し「可視化」させる試み「国会パブリックビューイング(PV)」の輪が広がっている。六月に成立した「働き方」関連法の審議で、政府の答弁を問題視した識者が始め、市民らが同調した活動だ。プロジェクターやスクリーンなどの機材があればできる手法が共感を呼び、開会中の臨時国会への関心を促す効果も生んでいる。 (大野暢子)

 働き方関連法の審議では、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の導入に「長時間労働を助長する」との懸念が付きまとった。労働問題に詳しい上西充子法政大教授は「成立を急ぐ政府が野党の質問をはぐらかし、働く人に制度が正しく伝わらない」と危機感を抱き、PVを思い立った。

 法案審議がヤマ場を迎えた六月中旬、東京都港区の新橋駅前で審議の動画を流しながら、上西氏が解説した。成立後はインターネットで資金を募るクラウドファンディングを使い、審議の様子に上西氏の解説を加えた約一時間の動画を制作。七月、新橋駅前で無人の状態で上映すると、六月より多くの人が足を止めた。

 上西氏は「街で声高に反対を訴えると敬遠されることもある。動画だけを流したことが良かった」と分析。これまで都内や大阪市、長野県松本市で上映し、動画投稿サイトのユーチューブでも公開した。現在は高プロを深掘りした二作目を制作中だ。

 ネット上では「こんなことができるんだ」「エンターテインメント性がある」と反響が広がり、上西氏の活動に共鳴した人たちが追随し始めている。

機材の使い方などの説明を受ける参加者=東京都渋谷区で(淡路久喜撮影)

写真

 京都市の文筆業の女性(56)は、上西氏らの動画を、市内の鴨川河川敷で自主的に上映している。「暮らしに近い話題なので、市民の関心は高い」と話す。

 東京都杉並区の四十代の男性会社員は時々、面白いと思った審議の動画を地元の高円寺駅前に置いたスクリーンに映し、知人と鑑賞している。水道法改正案や森友・加計(かけ)学園問題を流し、通りがかりの人が輪に加わることもある。

 男性は「ニュースでは審議の一部しか流れず、議事録では答弁者の態度までは分からない。動画なら一目瞭然だ」と強調。「臨時国会では憲法の問題に注目していきたい」と語った。

 上西氏らは十月下旬、都内で上映講習会を開き、関東や関西から十三人が参加。機材の使い方やマナーを学んだ後、早稲田大を訪れ、建物の壁を利用して上映した。鑑賞した同大一年の男子学生(18)は「普段はなかなか国会審議を見ようと思わないが、こういう形なら見たくなる」と話した。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】