世界を揺るがしたFacebookの個人情報不正利用問題(注)、そして2018年6月25日に施行されたEUの「一般データ保護規則」(GDPR)への対応などを巡り、データプライバシーに関する消費者の意識が大きく変化している。
注:2016年の米大統領選においてデータ分析企業のCambridge AnalyticaがFacebook専用の性格診断アプリを通じて収集したユーザーの個人情報を不正に入手し、米大統領選に利用したとされるスキャンダル。
このことは海外に限った話ではない。消費者と企業のインタラクティブなコミュニケーションを通じたマーケティングを支援するイーライフは、2018年の4月にネット上の個人情報と広告について2388人を対象にアンケート調査を実施した。これによると、Facebook個人情報不正利用事件を「知っている」「なんとなく知っている」と回答した人は全体の約8割(77.5%)で、そのうち54%は「SNS上の個人情報に対して危機意識が高まった」と回答している。
イーライフではこの調査結果を踏まえ、企業のマーケターが今後、注視すべきことについての提言をまとめた。本稿では、2018年5月22日に開催それた記者向けの勉強会で同社エグゼクティブ・アドバイザーの石井龍夫氏が語った「ケンブリッジ・アナリティカ事件の解説とポストGDPR時代における企業のデジタルマーケティング対応」の概要を紹介する。
花王でデジタルマーケティングセンター長を務め、日本アドバタイザーズ協会のデジタルメディア専門委員会委員でもあった石井氏は、最先端のデジタルマーケティングを実践し続け、日本においてこの分野そのものを開拓してきた第一人者といえる。
石井氏は「デジタルディスラプションというが、大事なのはデジタルそのものよりも、消費者がそれを使いこなすこと」と強調する。いかに優れたテクノロジーであっても、消費者が安心して使えるものでなければイノベーションにはつながらない。
マーケティングの領域においては、顧客体験向上のために企業のデータ活用が活発化している。しかしその半面、これまで個人情報の使われ方について十分に注意が払われてきたかといえば必ずしもそうは言い切れないのが現実だ。
だが、Facebookの問題やGDPR施行をきっかけに、消費者はこれまでになく真剣に、自分の個人情報について強く意識するようになった。そして、最近の世論の動向や法制度の変更もあって、FacebookやGoogleのような巨大テクノロジー企業は、API連携を制限するなど、顧客データ移転のハードルを上げた。
一方で、顧客体験を損なう広告の表示をなくそうとする動きもある。AppleはWebブラウザの「Safari」にITP(トラッキング防止)機能を実装してCookieの取得を制限するようになった。これらの一連の動きが意味することは明らかだ。企業による個人情報の乱用に、あらゆる面から「ノー」が突き付けられているのが現在なのだ。
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