片田珠美「精神科女医のたわごと」
松居一代さん、「現在のご状態」を精神科医が分析…「退行期パラノイアによる妄想の可能性」
解説=片田珠美/精神科医
幻聴もしばしば出現する。松居さんがブログに「4月22日の早朝 あたしの耳にひとつのメッセージが聞こえたんです」と書いているのは、医師としての長年の臨床経験から、幻聴の可能性も否定できないと筆者は考える。
退行期パラノイアになりやすいのは、
(1)きわめて活動的で、自我意識が強く、自己中心的な性格
もしくは、
(2)敏感で猜疑的な性格
の持ち主で、男性的な女性である。
これまでの報道から、松居さんは(1)と(2)の性格傾向をいずれも兼ね備えているように見える。また、家政婦のミスに怒って怒鳴り散らしたため、家政婦が次々に辞めていったという話を聞くと、気性の激しさでは男性にひけをとらない女性でもあるように見受けられる。
退行期パラノイアはきちんと治療すれば治る病気である。第一、夜まったく電気を使わず、真っ暗ななかで生活していたら、誰だって不安が一層強くなり、孤独感にさいなまれるだろうから、一刻も早く治療を受けることをお勧めする。
もっとも、残念ながら、ブログに「私は病気にはなっておりません」と書いているところを見ると、自分が病気だという自覚、つまり「病識」がないようだ。「病識」のない方を治療に導入するのは至難の業であり、家族か友人が説得して病院に連れて行くしかない。松居さんの周囲に信頼できる人はいないのだろうか。
(解説=片田珠美/精神科医)