ありんす探偵社へようこそ 作:善太夫
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城砦都市エ・ランテルベーカリー街221B『ありんす探偵社』美少女探偵ありんすちゃんの朝は一杯のミルクから始まります。一息にミルクを飲み干すとくちのまわりに白いわっかをつけたまま、ありんすちゃんは新聞を広げます。一番最後のページにありんすちゃんが大好きなマンガが載っているのです。
「おもちろいでありんちゅ」
チリンチリンと入り口の扉の鈴が鳴り来客を知らせました。見ると先日依頼をしたブレインが立っていました。
「ブレインか。苦情ならお断りだが……うげっ」
いきなり立ちはだかった助手のキーノにありんすちゃんは蹴りをいれます。コンプライアンスで問題が大きくなるのは苦情に対する第一対応が大切なんですよね。ありんすちゃんはにこやかにブレインを迎えました。
「ありんちゅ探偵ちゃにようこちょでありんちゅ。依頼はなんでありんちゅか?」
「その……先日は……まあ良いか。……………実は、また人探しを依頼したい。ただし相手は人間ではなく女吸血鬼なんだが……」
ブレインの言葉に何故かキーノの顔が強ばりました。ありんすちゃんは気にせずにブレインを促しました。
「ちょの吸血鬼のことを詳しく話すでありんちゅ」
ブレインは深く深呼吸すると話し始めました。
「今から半年程前にエ・ランテル郊外で女吸血鬼と戦った。その女は名前をシャルティア・ブラッドフォールンといい、化け物じみた強さだった。年齢は十代中頃で美しい銀髪、胸が巨乳だったな」
ありんすちゃんはその名前をどこかで聞いたような気がしましたが思い出せませんでした。
「わかったでありんちゅ。その依頼は美少女探偵ありんちゅちゃがじきじきに調べるでありんちゅ」
ありんすちゃんは鼻からフンスと息を吹き出しながら胸を張りました。
「ずいぶんとやる気だな? 珍しい事だ」
ブレインが出ていくと助手のキーノが声をかけてきました。確かにこれまでありんすちゃんが仕事に燃える事はありませんでしたからキーノが不思議に感じるのは当然の事です。
「この調査できっとすっごい真実が明らかになるような気がするでありんちゅ」
なにやらフラグが立ちそうなブレインの今回の依頼。シャルティア・ブラッドフォールンという人物とは一体何者なのか? 美少女探偵ありんすちゃんがたどり着く衝撃の事実とは??
※ ※ ※
すっかり旅支度を終えたありんすちゃんが扉に立ちます。
「では郊外に行ってくるでありんちゅ」
「一緒に行かなくて本当に良いのか?」
キーノは心配そうに声をかけました。ありんすちゃんはキーノよりも遥かに強くはありますがまだ幼い外見で、頼りなく思えてしまうのです。
「キーノはちょのチャルチェアという吸血鬼の情報をあちゅめておくでありんちゅ」
ありんすちゃんはテキパキと助手に指示を出します。そしてありんすちゃんはブレインが吸血鬼と出会ったというエ・ランテル郊外へ出発していきました。
※ ※ ※
キーノはエ・ランテルの冒険者組合でシャルティア・ブラッドフォールンという名前を調べて見ましたが、記録は全くありませんでした。ただ、当時漆黒のモモンがホニョペニョコという女吸血鬼を退治していました。
「うーん……シャルティアという名前はホニョペニョコの変名かもしれないな。もしかしたらホニョペニョコの片割れのホニョペニョットの可能性もあるな。同じ時期に同じように化け物じみた吸血鬼が現れるのは単なる偶然とは言い難い。うむ、これはモモン殿から当時の話を聞かなくてはな。仕事だから仕方ない。決して個人的な理由でモモン殿に会う訳ではない」
キーノはぶつぶつ言いながら、早速エ・ランテル一番の流行洋服店に向かいました。
「……あーコホン。今一番の流行の服をコーディネートしてくれ。いわゆる勝負服だ」
キーノは洋服店で頭の先から爪先まで最先端のファッションに身を包むと、意気揚々とモモンの邸宅に向かいました。
※ ※ ※
「………………そうでちたでありんちゅか! ……うーん……」
一方、その頃のありんすちゃんはブレインがシャルティアと出会ったという郊外で様々な人からの聞き込みをしていました。
「それが本当ならほっておけないでありんちゅ。……大変でありんちゅ」
数々の証言からありんすちゃんは今回の依頼の裏に潜む重大な事実にたどり着いてしまいました。
ありんすちゃんが知ってしまった事実とは一体どのような結末を生むのでしょうか? はたまたキーノの勝負服はモモンの心を動かす事が出来るのでしょうか?
───解決編に続く