ありんす探偵社へようこそ 作:善太夫
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城砦都市エ・ランテルベーカリー街221B『ありんす探偵社』の入り口の扉にはありんすちゃんの手書きの伝言が貼り出されていました。
『しばらくるすにします』
実はありんすちゃんと助手のキーノの二人はリ・エスティーゼ王国の王都リ・エスティーゼにやって来ていたのでした。
「うむ。あまり変わっていないようだな」
助手のキーノは以前王都に住んでいたらしく、安いけれど小綺麗なホテルの手続きをテキバキと済ましていました。
「ありんすちゃん、今晩はここに泊まる。明日とある王族の方と面会するつもりだ。とはいえ会えるとは限らないが」
ありんすちゃん達がリ・エスティーゼ王国の王都にまでやって来たのは、キーノの発案で王族とのコネクション作りをする為でした。なんでもキーノの友人に王族と親しい人物がいるらしく、キーノいわく『任せておけ』との事でしたが……
「もうちゅかれたでありんちゅ。ゆっくりお風呂に入るでありんちゅ」
ありんすちゃん達はホテルにチェックインする事にしました。
美少女探偵ありんすちゃんはこの時、既に事件発生を予見していました。探偵のある所に必ず事件あり、です。ありんすちゃんは少しワクワクしていました。
事件は突然起きました。ありんすちゃん達が泊まっていたホテルの屋上でなにやら激しい爆発が起きたのでした。早速、ありんすちゃんと助手のキーノは駆けつけます。
屋上ではなんとリ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級冒険者の二人、ガガーランとティアかティナのどちらかが倒れていました。
「……し……死んでる! ……二人共死んでる!」
二人に駆けよったキーノが叫びました。ありんすちゃんはすぐさまその場にいた目撃者に話を聞きます。
「一体何が起きたでありんちゅ?」
「私にもよく判りません。私は探しものを探しに王都に来ていたのですが、突然爆発が起きたので様子を見に来るとこのように二人が倒れていたのです」
ヤルダバオトと名乗る紳士は答えました。
「わたしぃが来た時はもう死んでいたからぁーわかんない」
もう一人の目撃者の通りすがりのメイドに尋ねてみましたが、どうやら何も見ていないようでした。
次にありんすちゃんは死体を調べます。なにかしら手掛かりがきっとある筈です。
「……こ、これは……………………………男でありんちゅか女でありんちゅかわからないでありんちゅ」
「ガガーランは女だ……しかし……この二人が殺される等……考えられんな……」
「ふーん。傷あとひとちゅも無いでありんちゅね。…………持ちものは……あまりお金持ってないけちん坊でありんちゅ」
ありんすちゃんは二人の懐にあった財布を自分のポケットに移しながら呟きました。さて、いよいよありんすちゃんの推理タイムです。ありんすちゃんは腕を組み目をつぶります。ありんすちゃんの頭の中で灰色の脳細胞が活性化して行きます。
※ ※ ※
「ガガーランとティアが殺されたのですって?」
知らせを受けた王国アダマンタイト級冒険者 蒼の薔薇のリーダー、ラキュースがティナと一緒に駆けつけました。
「……くっ。こんな時にイビルアイが捕まらないなんて……とにかくすぐに復活させるわ!」
キーノは何故か俯いて顔を隠していました。そしてありんすちゃんは相変わらず目をつぶって推理に集中しています。
※ ※ ※
しばらくしてありんすちゃんが目を開き叫びました。
「謎は全て解けたでありんちゅ! ……この二人はできていたのでありんちゅ。激しくチュッチュししゅぎて心臓麻痺で死んだんでありんちゅ!」
「違う!」「んなわけあるか!」
ありんすちゃんの迷推理に対し、復活したばかりの二人から即座に突っ込みが入りました。
その後この事件は『美少女探偵ありんすちゃんの推理が死人を蘇らせるという奇跡を起こした』という噂となってますますありんす探偵社の名声が高まったそうです。