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教科書採択における公正確保の徹底等について(通知)

29文科初第1807号
                                                 平成30年3月30日


各都道府県教育委員会教育長 殿

文部科学省初等中等教育局長
髙橋 道和


教科書採択における公正確保の徹底等について (通知)


教科書は,全ての児童生徒の学校における授業や家庭における学習活動において重要な役割を果たすものであり,その採択については,公立学校(公立大学法人が設置する学校を除く。以下同じ。)において使用する教科書については当該学校を所管する教育委員会が,国立学校,公立大学法人が設置する学校及び私立学校において使用する教科書については当該学校長が権限を有しています。
このため,教科書採択は,これらの採択権者の判断と責任により,綿密な調査研究を踏まえた上で,適切に行われることが必要であることはもとより,採択権者である教育委員会や学校長は,採択結果やその理由について,保護者や地域住民等に対して説明責任を果たすことが重要となります。
しかしながら,近年,採択関係者に対し,従前より遵守を求めていた宣伝活動等に関するルールを逸脱する行為が,多くの教科書発行者において継続的に行われていたことが明らかとなりました。
その結果,教科書採択の公正性・透明性に疑念を生じさせ,教科書に対する信頼を大きく揺るがす事態に至ったところです。
これらの一連の問題の反省に立った上で,教科書発行者においては,業界団体である一般社団法人教科書協会が中心となり,「教科書発行者行動規範」を制定するなど,信頼回復に向けた取組を進めてきました。しかし,教科書採択の公正確保のためには,教育委員会をはじめとする採択権者等における取組が引き続き不可欠であることは言うまでもありません。
このため,平成29年度における教科書採択の状況調査の結果(別添資料)も踏まえ,教科書採択に当たって,特に留意すべき事項を下記のとおり通知しますので,貴教育委員会の委員及び知事部局を含む関係部署のほか,域内の市町村教育委員会並びに国立学校,公立大学法人が設置する学校及び私立学校を含む全ての学校,教師等その他全ての関係者に対して周知いただくとともに,これらの関係者と密に連携の上,平成30年度を含めて今後の教科書採択にいかなる疑惑の目も向けられることのないよう,教科書採択の公正確保の徹底に万全を期すようお願いします。



1.教科書採択の公正確保の徹底について

(1)教科用図書選定審議会の委員又は調査員等の選任について
○ 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(昭和38年法律第182号。以下「無償措置法」という。)第11条の規定により各都道府県に置かれる教科用図書選定審議会(以下「選定審議会」という。)については,義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令(昭和39年政令第14号。以下「無償措置法施行令」という。)第9条第2項の規定により,教科書採択に直接の利害関係を有する者は委員となることができないとされているが,各教育委員会や学校等において教科書の調査研究を行う調査員等についても,教科書採択に直接の利害関係を有する者を選任することは不適当であること。
また,教科書採択に直接の利害関係を有しないまでも,教科書発行者から個別に協力ないしは意見聴取の依頼を受け,著作・編集活動に一定の関与を行うなど,特定の教科書発行者と関係を有する者を,選定審議会の委員又は調査員等として選任することは適当ではないこと。
※ 「教科用図書の採択に直接の利害関係を有する者」については,「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の公布,施行について」(平成28年6月20日付け28文科初第432号初等中等教育局長通知)の「第一2.留意事項」を参照すること。
※ このほか,採択権者である教育委員会における直接の利害関係のある事件に関する扱いについては,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第14条第6項を参照すること。
○ このため,選定審議会の委員や調査員等の選任及びこれらの者が行う具体の審議や調査研究に当たっては,各教育委員会等における関係部署とも連携し,教科書発行者との関係について聴取又は自己申告を求めるなどした上で,特定の教科書発行者と関係を有する者が教科書採択に関与することのないよう留意すること。
また,教科書発行者との関係について,一義的には,採択権者(公立学校において使用する教科書については当該学校を所管する教育委員会,国立学校,公立大学法人が設置する学校及び私立学校において使用する教科書については当該学校長をいう。以下同じ。)において把握すべきものではあるが,文部科学省から各都道府県教育委員会に対して,4月末を目途に,平成29年度に検定を経た教科書等の編著作者及び編集協力者に関する情報を取りまとめたものを,また,教科書協会等から各都道府県教育委員会に対しては,教師用指導書及び教科書準拠周辺教材の執筆者に関する情報を取りまとめたものを送付する予定であるため,必要に応じてこれらの情報も参照すること。
※ これらの情報のうち従来より公開の対象としている教科書の編著作者及び編集協力者の「氏名」,「職業・勤務先」,「専門分野」及び「担当箇所・役割」以外の情報については,教科書発行者と関係を有する者が教科書採択に関与することのないようにすることを目的として提供するものであり,それ以外の目的への利用は認められていないことに留意すること。
※ このほか,教科書発行者が負担した交通費・宿泊費,飲食費その他の費用についても,本人からの申告によっては不明確な点等がある場合には,必要に応じて教科書発行者に問い合わせを行うこと。

(2)教科書見本の取扱いについて
(採択期間における教科書見本の取扱い)
○ 教科書発行者から各教育委員会等に送付することができる教科書見本の種類及び部数の上限については,毎年度,文部科学省から教科書発行者に通知しており,それを超える教科書見本の送付,又は採択関係者(教育委員会関係者又は校長若しくは教師を含む全ての学校関係者その他教科書採択に関与し得る全ての者をいう。以下同じ。)に対する献本若しくは貸与は認められていないこと(平成30年度における教科書見本の取扱いの詳細については,別添「教科書採択の公正確保について」(平成30年3月30日付け29文科初第1808号初等中等教育局長通知)を参照のこと。)。
近年,多くの教科書発行者が,従前より継続的に教科書見本の不適切な取扱いを行っていたことが明らかとなり,それらの行為の中には採択関係者からの求めに応じて行われた例もあったことから,引き続き,採択関係者から教科書発行者に対して,教科書見本の献本又は貸与を求めることのないようくれぐれも留意すること。
○ 高等学校の分校若しくは学科への教科書見本の送付又は平成28年度以前に検定を経た教科書の見本の送付を希望する場合等,一定の場合には,採択権者から教科書発行者に教科書見本の追加送付を求めることを許容しているため,これらの運用上のルールについて明確にしておくとともに,当該ルールを教科書協会を通じて教科書発行者に予め示しておくことが望ましいこと。
※ 教科書見本の追加送付について,採択権者の判断により,具体の手続を学校長に委任することも差し支えないが,その場合には,事前又は事後に報告を義務付ける等により適切に状況を把握することができる措置を講じること。
○ このほか,採択期間における教科書見本の取扱いについて特に留意すべき事項は下記のとおり。
・ 教科書見本は,教科書の調査研究等を行うために不可欠なものである一方で,教科書発行者による教科書見本の送付は,教科書採択の勧誘を目的としたものであるとの認識に立った上で,教科書発行者と健全かつ適切な関係を保つこと。
・ 教科書発行者から上限に満たない部数の教科書見本の送付があった場合に,採択権者から当該教科書発行者に追加送付を求めることは差し支えないが,教科書見本の送付は,教科書発行者の判断に委ねられるものであることに留意し,無理な送付を求めることのないようにすること。
・ 平成28年度以前に検定を経た教科書の見本についても,採択権者から教科書発行者に送付を求めることを許容しているが,その趣旨は,教科書採択に当たっての調査研究等の用に供するためであることに留意し,当該年度あるいは次年度以降の授業等の用に供することを目的として教科書発行者に送付を求めることのないよう注意すること。
・ 特に複数の市町村から構成される採択地区においては,教科書発行者から送付があった教科書見本の部数が過多となることも考えられるため,その場合に,教科書発行者に教科書見本の引取りを求めることは差し支えないこと。
ただし,その取扱いについては教科書発行者間の公平性の観点に配慮することが必要であり,特定の教科書発行者の教科書見本のみ引取りを求めることは適切ではないこと。
・ 教科書見本と併せて又は個別に,内容解説資料その他教科書発行者が広く無償で配布する資料を受け取ることは差し支えないが,その際には,資料の名称を問わず,教科書発行者からの不当な利益供与が禁止されていることにくれぐれも注意すること。

(採択期間終了後における教科書見本の取扱い)
○ 義務教育諸学校用教科書(平成30年度に新たに採択したものに限る。)について,各学校における翌年度の授業研究や教材研究等のために,採択期間(本通知の発出の日から,都道府県教育委員会から文部科学省への教科書需要数の報告期限である9月16日までの期間をいう。以下同じ。)終了後に,教育委員会がその所管する学校の希望を取りまとめた上で,採択した教科書見本の献本について,教科書発行者に任意の協力を求めることは差し支えないこと。ただし,その部数については,当該教育委員会が所管する学校数を上限とすること。
また,採択期間において,明示的であると否とを問わず,教科書発行者に対して採択期間終了後に教科書見本を献本するよう求める行為又は教科書見本の献本と教科書採択を関連付ける行為(それとの疑念を生じさせる行為を含む。)は厳に慎むこと。
○ 高等学校用教科書については,各高等学校等に教科書見本が送付されていることから,原則として送付は認められていないが,通信制課程を置く高等学校等の協力校等における翌年度の授業研究や教材研究等の用に供するために,当該高等学校等において使用する教科書の採択権者から個別に教科書見本の献本を求めることは差し支えないこと。ただし,献本を求める部数については,当該採択権者が教科書採択の権限を有する通信制課程を置く高等学校等の数を上限とすること。

(3)過当な宣伝活動等への対処について
○ 採択期間においても,教科書発行者が,採択関係者に対して自らが発行しようとする教科書の宣伝活動を行うことに特段の問題はないが,その宣伝活動により,採択権者の判断に不当な影響を及ぼすことのないよう,文部科学省から各教科書発行者に対しては,過当な宣伝活動等を慎むよう指導を行うとともに,教科書協会においても各会員に対して教科書発行者行動規範の遵守を求めているところである。
○ このため,各教育委員会等においても,これらを十分に踏まえ,域内の学校とも情報共有をはじめ密に連携した上で,事前に適切な措置を講ずること。その際,文部科学省の指導や教科書発行者行動規範等に違反する行為について,教科書発行者に求めることのないようにすることはもとより,教科書発行者からそういった申出があった場合には明確に断るよう関係者への周知を徹底すること。
○ 教科書採択については,教科書発行者に限らず,外部からのあらゆる働きかけに左右されることなく,静ひつな環境を確保し,採択権者の判断と責任において公正かつ適正に行われるよう努めること。
教科書採択に係る教育委員会の会議を行うに際しては,静ひつな審議環境の確保等の観点から検討を行い,会議の公開・非公開を適切に判断するとともに,傍聴に関するルールを明確に定めるなど,適切な審議環境の確保に努めること。
○ 都道府県教育委員会は,外部からの働きかけについて域内における状況を適切に把握し,過当な宣伝活動その他外部からの不当な働きかけにより公正かつ適正な教科書採択に問題が生じていると考えられる場合には,各市町村教育委員会・学校等において適切な措置を講ずるよう指導するとともに,速やかに文部科学省に報告すること。
また,仮に,円滑な採択事務に支障を来すような事態が生じた場合や不当な働きかけがあった場合には,警察等の関係機関とも連携を図りながら,毅然とした対応を取ること。
○ 文部科学省から教科書発行者に対しては,宣伝活動の過熱を防止するため,採択期間においては,教科書発行者(教科書の編著作者及び編集協力者,関連する教材の執筆者並びにその他教科書発行者と実質的に関係する者を含む。)において,新たに採択される教科書に関する説明会,講習会又は研修会等を主催しないよう,また,開催に関与することのないよう指導しているところであり,各教育委員会・学校等においてもその趣旨を理解した上で,適切に対応すること。
この点,平成30年度においては,平成31年度から新たに使用が開始される中学校「特別の教科 道徳」の教科書に関し,教科書協会が教育委員会等を対象として,採択を行う上で参考となるようなDVDを制作・配布することとしているため,必要に応じて適宜活用すること。
このほか,採択権者が,教科書発行者間の公平性を確保した上で,教育委員会関係者等の教科書採択に携わる者に説明を求める機会を設けることを妨げるものではないが,その際には,教科書発行者に過度な負担とならないよう,都道府県教育委員会による開催が望ましいこと。また,不参加の教科書発行者が発行する教科書について,不参加であることのみをもって,採択しないこととする取扱いを行うなどにより,事実上,参加を強制することは適当ではないこと。
※ 「教科書に関する説明会,講習会又は研修会等」とは,関連する教材の説明等を目的としたもののほか,教科書発行者又は教科書の編著作者若しくは編集協力者の宣伝を目的としたものを含み,2以上の学校の教師等を対象としたものを想定しているが,疑義がある場合には,文部科学省に問い合わせ願いたい。

(4)検定申請本の取扱いについて
○ 検定申請本は行政処分の対象であり,教科書発行者に対して,その内容について厳格な情報管理を求めていることから,教科書採択を勧誘するための宣伝活動(実質的にそれと同視され得る活動を含む。)に使用することは一切認められていないものであり,その旨を,教科書検定制度の意義・役割とともに,全ての学校・教師等への周知を徹底すること。
○ 上述のとおり,文部科学省から各都道府県教育委員会に対して,4月末を目途に,平成29年度に検定を経た教科書等の編著作者及び編集協力者に関する情報を取りまとめたものを,また,教科書協会等から各都道府県教育委員会に対しては,教師用指導書及び教科書準拠周辺教材の執筆者に関する情報を取りまとめたものを送付する予定であるが,これらの者については,検定期間中に検定申請本若しくはその内容の一部を了知し,又は特定の教科書発行者と関係を有するものであることから,これらの者が教科書採択に関与することのないよう留意すること。

(5)教科書発行者との関係について
○ 質の高い教科書の実現のためには,日々の授業実践を通じて得られた教師等の意見を反映することが必要不可欠であり,教科書の著作・編集活動の一環として,教科書発行者が教師等から意見を聴取することは,大きな意義を有するものであること。また,教師等が行う授業研究や教材研究等の効果的な実施に当たっては,教科書発行者が有する知見を活用することも必要となると考えられること。
○ 一方で,仮に教師等と教科書発行者の認識が教科書の著作・編集活動あるいは授業研究や教材研究等の一環であったとしても,一般の国民ないしは地域住民等から見れば,教科書採択の公正性・透明性に疑念を生じさせるものと受け止められかねないことから,教科書発行者と健全かつ適切な関係を保つよう,全ての学校・教師等に対して指導を徹底すること。具体的には,
・ 教師等が適正な労務に対する対価として金銭等を受け取る場合について,場合によっては受け取らない場合も含めて,その可否・手続等について条例・規則等において定めるとともに,教師等に対して,法令のほかそれらの条例・規則等に従う必要がある旨を周知すること
・ 服務監督権者において,事前・事後を問わず,教師等からの相談に対応するなど適切な指導・助言を行うこと
・ 教師等が,法令等に違反して,教科書発行者による不適切な行為に関与し,又は荷担した場合には,当該教師等に対して,懲戒処分も含めて厳正に対処すること
等が考えられる。
特に,教科書発行者の行為の内容又はそれに対する教師等の関与若しくは荷担の内容・程度によっては,地方公務員法(昭和25年法律第261号)第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務),第33条(信用失墜行為の禁止)又は第38条(営利企業への従事等の制限)の規定に違反することにもなり得ることに留意すること。

(6)文部科学省への情報提供について
○ 本通知及び教科書発行者行動規範に違反する行為をはじめとして,教科書発行者による不適切な行為が確認された場合には,速やかにその所属する教育委員会・学校等に対して報告すべき旨を,全ての教師等に対して指導すること。
また,報告を受けた教育委員会・学校等にあっては,その行為が教科書採択の公正性・透明性に疑念を生じさせるものである場合には,都道府県教育委員会を通じて,文部科学省に速やかに情報提供を行うこと。
○ 文部科学省においては,都道府県教育委員会あるいは教科書発行者等からの情報に基づいて,教科書発行者による不適切な行為が確認された場合には,教科書発行者名を含めて文部科学省ホームページ等において公表する予定としており,各教育委員会等においても,域内で確認された教科書発行者による不適切な行為について,教科書採択に携わる関係者において共有するとともに,当該行為の内容に応じて公表することも検討すること。

2.教科書採択方法の改善について

(1)採択権者の判断と責任について
○ 教科書の採択に当たっては,国公私立を問わず,教師等の投票によって決定されるようなことはもとより,十分な審議や調査研究を経ずこれまでの慣例のみによって決定されたり,事実上,一部の特定の教師のみによって決定されたりするなど,採択権者の責任が不明確になることがないよう,採択手続の適正化に努めること。
○ 公立学校において使用する教科書の採択権限は教育委員会が有しており,教育長及び委員の人数分の教科書見本が送付されることになっているが,教育長及び委員への教科書見本の提供状況に関する調査結果(別添資料参照)を見ると,必ずしも教科書見本が十分に活用されているとは言い難い。
このため,教育長及び委員が十分な時間的余裕を持って教科書見本を閲覧し,その内容について適時吟味することができるような環境を整えることが必要であり,教育長及び委員に適切に教科書見本が提供されないことはもちろん,教科書採択に係る会議における配布資料としてだけしか活用されないことも不十分であること。
○ 公立の高等学校並びに公立の中等教育学校及び併設型中学校において使用する教科書については学校ごとに異なる教科書を採択することが可能であり,採択に当たっては各学校の希望を聴取することが通例となっているが,      これらの学校において使用する教科書についても採択権限は教育委員会が有するものであり,単に各学校の意向に任せて採択を行うようなことがないよう,採択権者としての責務を適切に果たすこと。
この観点から,これらの学校において使用する教科書の採択に際して,各学校から希望を聴取する場合には,事前に各都道府県又は市町村の教育目標等を踏まえた教科書採択の基準となるべきものを各学校に示した上で,各学校の希望を聴取し,当該聴取結果を踏まえて,教育委員会において審査を行うことが適切であること。
○ 都道府県教育委員会においては,無償措置法第10条の規定により,域内の市町村教育委員会並びに国立学校,公立大学法人が設置する学校及び私立学校の学校長が行う教科書採択に関する事務について指導,助言及び援助を行わなければならないこととされており,適切にその責務を果たすことが必要であること。

(2)教科書の調査研究の充実について
○ 市町村教育委員会並びに国立学校,公立大学法人が設置する学校及び私立学校において教科書の調査研究の期間が十分に確保できるよう,文部科学省としても,調査研究に使用する教科書見本が遅滞なく送付されるよう教科書発行者に対して要請するとともに,円滑な需要数集計のためにシステム及びその運用を改善するなどの取組に引き続き努めることとしており,都道府県教育委員会においても,市町村教育委員会等による需要数の報告の期限を更に遅くするなど,採択スケジュールについて不断の見直しを行うこと。
○ 教科書の調査研究については,必要な専門性を有し,公正・公平に教科書の調査研究を行うことのできる調査員等を選任し,各教科等ごとに適切な数配置するなど体制の整備を図るとともに,調査員等が作成する資料については,採択権者の判断に資するよう一層充実したものとなるよう努めること。その際,より幅広い視点からの意見を反映させるために,保護者等の意見を踏まえた調査研究の充実に努めること。
調査員等が作成する資料においてそれぞれの教科書について何らかの評定を付す場合であっても,採択権者が十分な審議を行うことが必要であり,必ず首位の教科書を採択・選定,又は上位の教科書の中から採択・選定することとするなど,当該評定に拘束力があるかのような取扱いを行うことにより,採択権者の責任が不明確になることがないよう留意すること。
○ 文部科学省から教科書発行者に対しては,調査研究をはじめとする採択事務に支障の生じないよう,可能な限り漏れなく教科書見本を送付するよう配慮を求めているところであるが,教科書発行者の判断により,教科書見本が送付されない又は調査研究に足る十分な部数が送付されない場合には,その範囲内で調査研究を行うこととして差し支えないこと。

(3)教科書の採択期限について
○ 義務教育諸学校において使用する教科書の採択については,無償措置法施行令第14条第1項の規定により,当該教科書が使用される年度の前年度の8月31日までに行わなければならないとされていること。
○ 高等学校等において使用する教科書については,法令上,採択期限は定められていないが,都道府県教育委員会から文部科学省に9月16日までに教科書需要数の報告をしなければならないとされていることを踏まえ,都道府県教育委員会において適切にスケジュール管理を行うこと。

(4)同一の教科書の採択期間について
○ 義務教育諸学校において使用する教科書については,無償措置法施行令第15条第1項の規定により,基本的に同一の教科書を4年間採択しなければならないとされていること。
○ その特例として,義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行規則(昭和39年文部省令第2号。以下「無償措置法施行規則」という。)第6条各号に掲げる場合には,上記にかかわらず異なる教科書を採択することができることとされているが,それ以外の場合においては,採択替えを行うことはできないこと。
また,平成33年度から新しい中学校学習指導要領が実施される予定であるが,その場合には,平成30年度に新たに採択されることとなる中学校「特別の教科 道徳」の教科書に関しては,無償措置法施行令第15条第2項及び第3項の規定に基づいて,平成31年度及び平成32年度の2年間同一の教科書を採択しなければならないこととなること。

(5)教科書採択に関する情報の公表について
○ 教科書採択に係る資料の公表状況に関する調査結果(別添資料参照)を見ると,採択基準,採択結果や採択理由等について十分に公表されているとは言い難い。
教科書採択の結果及びその理由等の公表に関し,義務教育諸学校については,無償措置法第15条の規定により,採択権者である教育委員会並びに国立学校,公立大学法人が設置する学校及び私立学校の学校長に努力義務が課されているところであり,採択権者においては,より一層,採択結果及びその理由をはじめとする教科書採択に関する情報の積極的な公表に取り組み,採択に関する説明責任を果たすことが求められること。
また,既に公表を行っている採択権者においても,保護者や地域住民等が容易にその情報を得ることができるよう,公表の時期・方法等について不断の改善を図ること。
なお,共同採択地区においては,採択地区協議会の事務局が公表する部分もあると考えられるが,その場合であっても,共同採択地区を構成する各教育委員会として,ホームページに当該公表情報へのリンクを貼る等,主体的に公表に取り組むこと。
○ 高等学校等において使用する教科書についても,義務教育諸学校において使用する教科書に準じてその採択結果及びその理由等の公表に努めるなどにより,採択権者である教育委員会や学校長は,説明責任を果たすことが求められること。

3.平成30年度の教科書採択における留意事項について

平成30年度における教科書採択については,上記のほか下記事項を踏まえた上で,採択権者の判断と責任により適切に行うこと。

(1)小学校用教科書について
○ 平成30年度においては,「特別の教科 道徳」以外の教科書について新たに採択を行うこととなるが、学校教育法(昭和22年法律第26号)附則第9条の規定により教科書以外の教科用図書を使用する場合を除き,追って送付する小学校用教科書目録(平成31年度使用)に登載されている教科書のうちから平成31年度に使用する教科書を採択しなければならないこと。

(2)中学校用教科書について
○ 平成30年度においては,中学校「特別の教科 道徳」の教科書について新たに採択を行うこととなるが,それ以外の教科書については,学校教育法附則第9条の規定により教科書以外の教科用図書を使用する場合を除き,基本的に平成29年度と同一の教科書を採択しなければならないこと。

(3)特別支援学校の小・中学部用教科書について
①小学部
○ 平成30年度においては,「特別の教科 道徳」以外の教科書について新たに採択を行うこととなるが,学校教育法附則第9条の規定により教科書以外の教科用図書を使用する場合を除き,追って送付する特別支援学校用(小・中学部)教科書目録(平成31年度使用)に登載されている教科書のうちから平成31年度に使用する教科書を採択しなければならないこと。
②中学部
○ 平成30年度においては,中学校「特別の教科 道徳」の教科書について新たに採択を行うこととなるが,それ以外の教科書については,学校教育法附則第9条の規定により,教科書以外の教科用図書を使用する場合を除き,基本的に平成29年度と同一の教科書を採択しなければならないこと。

(4)無償措置法施行規則第6条の規定による採択について
○ 上記(1)~(3)にかかわらず,無償措置法施行規則第6条各号に掲げる場合には,平成29年度に採択した教科書と異なる教科書を採択することができること。また,その場合には,教科書発行者に対して,調査研究等に必要な部数の教科書見本の送付を求めても差し支えないこと。

(5)高等学校用教科書について
平成30年度においては,学校教育法附則第9条の規定により教科書以外の教科用図書を使用する場合を除き,追って送付する高等学校用教科書目録(平成31年度使用)に登載されている教科書のうちから平成31年度に使用する教科書を採択しなければならないこと。

(6)学校教育法附則第9条の規定による教科用図書について
特別支援学校,特別支援学級及び高等学校等においては,学校教育法附則第9条の規定により,教科書目録に登載されている教科書以外の教科用図書を採択することができること。

(7)その他
平成30年度においては,小学校用教科書,中学校用教科書及び高等学校用教科書について検定申請の受付が行われることとなるため,申請受理種目及び期間を確認の上,教師等と教科書発行者との関係に特に留意すること。

【参考】教科書検定の申請受付


※ 採択権者等における翌年度の採択事務の準備等の便宜のために,義務教育諸学校用教科書の検定申請の有無について,受理期間終了後に情報提供する予定であるため,予め承知願いたい。


お問合せ先

初等中等教育局教科書課

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-- 登録:平成29年04月 --