ヘルスケアという未開拓の市場をどう開くか
女性起業家たちがプロジェクトの全貌を明かす
JHVSミートアップ 「Women × Healthcare」
「ヘルスケアと女性」を軸に語り合う
奥田浩美氏(以下、奥田):みなさん、こんにちは。今日は「ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット」のミートアップです。これから始めますが、今回のミートアップは「ヘルスケアと女性」を軸にして、私が企画をさせていただきました。ウィズグループ代表の奥田と申します。よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
私は今までに起業を4回していまして、IT系でずっとやってきました。ここ5年ほど、私自身が老老介護の両親を看るということで、ずっと九州に飛んでいく生活をしていて、さらに子どもを産んだ時に、子どもが病気になったりという状況のなか、必ず2社を並行して経営してきました。
そんななか、最近の私たちの生活は、喜怒哀楽がすべて周囲にあふれているのに、なぜ研究所や会社など、なにかを作る場所……きれいなオフィスや空間、そして、きれいな行動だけが認められるような場所だけで、ものを作っていていいんだろうかと思いました。もっともっと、私たちの中には困ったこと……例えば高齢者の失禁だったり、体調不良だったり、そういう喜怒哀楽の「怒哀」みたいなものにあふれています。
私たち女性が、そのケアの部分を担ってきただけに、課題を表に出さず、きれいなところですべての製品が作られてきたんじゃないかという思いが、私が今日のこの会を企画した根底にあります。
ですので、女性だけがなにかを考えるのではなく、今まで女性の分野で困っていたことを社会の表に出して、それを男女関係なく作っていくような場が作れたら……ということで、今日は男女関係なくお越しいただいて、一緒に「私も、この分野だったらなにかを持ち帰って作れるかもしれないな」という場にしたいと思います。
さっそく(始めたいと思いますが)、今日はパネルディスカッションというよりは、今、日本で起きている、世界で起きている流れを5分ずつ発表していただきながら進めていきたいと思います。私はこれで、いったん座らせていただきます。
今日のテーマは「未開拓の市場を狙え-女性を中心に考えるヘルスケアビジネス」。まさに世界的には医療・ヘルスケア分野で、次から次へと女性による女性の分野のサービスが生まれてきています。
ヘルスケア領域で最先端のIT活用
奥田:まず、今日はそのあたりの話につきまして、小西千尋さんにお話をしていただきたいと思います。内容は「ヘルステック・フェムテックなどの世界的潮流」ということです。それでは、千尋さん、よろしくお願いします。
小西千尋氏(以下、小西):奥田様からご紹介にあずかりました、一般社団法人「国際ヘルステック協会」代表理事の小西千尋と申します。本日はよろしくお願いいたします。
ご紹介いただきましたように、私はアメリカのNPO法人「Healthtech Women」の日本支部の代表を務めています。まず簡単に、アメリカで今、どういった活動が行われているのかをご紹介いたします。
Healthtech Womenのミッションとして、We are 「A GLOBAL COMMUNITY」「SUPPORTS WOMEN」「IMPACTING HEALTH TECHNOLOGIES」というミッションを掲げて活動している団体です。主に女性をターゲットにしていまして、ヘルスケア領域でどういった最先端のITが活用できるのか(を考えたり)、またそういった知識を得たり、教育ができるようなプラットフォームです。
実際にアメリカで行われてきたイベントなのですが、2014年に設立してから50以上ものセミナーを開催しまして、100名以上もの女性スピーカーを輩出してきたところが一番の特徴です。登壇者の90パーセント以上のスピーカーが女性という、大変パワフルな団体です。
オフラインとオンラインの両方でコミュニケーションを図っていまして、アメリカでは2万人を超えるメンバーが務めています。
取り扱っている題材ですが、ブロックチェーンをヘルスケア領域でどのように活かせるかや、VR・ARの技術をどう活かせるか、また女性疾患にフォーカスを当てて、家族計画を立てるといった題材など、幅広く扱っています。
日本では昨年9月に、後ほど登壇する吉澤と、この「Healthtech Women Japan」を設立いたしまして、マンスリーセミナーでさまざまな女性……ヘルステック分野でのCEOの女性など、さまざまな方面で活躍されている方を招聘してイベントを開催しました。
題材といたしましては、オンライン診療とAIに関するトピックや、行動変容を促すような生活習慣病改善アプリに関してです。また、デザイン思考をどのようにヘルスケア領域に活用できるかというワークショップ形式のセミナーなども開催しました。
ちょうど昨日になりますけれども、日本橋のLINK-J様で、今日ご参加いただいている曽山(明彦)様に協賛いただきまして、イスラエルから約10名の女性のヘルステック起業家を招聘して、イスラエルのヘルステック市場の最前線についてのセミナーを開催いたしました。
「FemTech」の盛り上がり
小西:本日このような場を設けさせていただきましたが、このニッチな「ヘルスケア×女性」という市場は、かなりポテンシャルのある、ヘルスケアの領域を大きく変える可能性のある市場だと考えています。
今日ご参加いただいたみなさまから、いろいろと身近な(課題を)解決できるようなアイデアをシェアいただきながら、この場を活かして、これから新たなビジネスを生み出す方が出てきてくださるといいなという願いを込めています。
ここまで、私どもの団体の説明をさせていただきましたが、今日は「FemTech」……Female×Technologyの造語なんですが、実際に世界的なマーケットでどのようなサービスが注目されているかを少しご紹介したいと思います。
女性疾患に着目をしました。例えば月経週間の管理をするようなアプリケーションであったり、月経関連のプロダクトです。また、女性向けのセックステックもかなりアメリカでは市場として伸びています。そういった分野であったり、不妊治療関連のサービスなど、かなり幅広いサービスが出てきています。
Rock Healthという団体が2017年に出しているサーベイの結果なのですが、投資額で見ても、100億円を超えるような投資を集める女性疾患関連サービスを提供しているスタートアップが増えてきています。
ニューヨークの会社などは、不妊治療関連サービスを企業向けや個人向けに展開しており、こちらも100億円以上の投資を集めて注目を浴びています。
ほかの事例をご紹介しますと、自宅でも女性がホルモン検査を受けられるようなサービスを展開している企業。搾乳機を下着の下でハンズフリーで使えるというようなものを展開している企業。また、女性向けに特化したオンライン診療を展開している企業と、本当にユニークで女性ならではの視点で開発された医療機器やサービスが増えてきています。
ですので、本日は8名の女性のヘルステック分野のリーダーに集まっていただきましたが、女性だから気がつくヘルスケア領域での課題がたくさんあると思っていますので、今日はそういった課題意識をみなさんに共有いただく場になればと思っています。ありがとうございました。
(会場拍手)
奥田:ありがとうございました。
セックステックの可能性を探る
奥田:ここから1人1問ぐらいずつ、2人から聞こうと思っています。私からは、さきほどカオスマップを見せていただきましたが、あそこで「まだ日本ではまったくないよね」という分野について、わかる範囲で「ここがブルーオーシャンです」みたいな(笑)。
小西:そうですね、今、吉澤と口を揃えて出たのが、やはりセックステックですかね。
奥田:なるほど。
小西:昨年、エマ・ワトソンさんがこのセックステック関連のサービスを、かなりプロモーションされて。今までは、女性がセックステックに関して、公の場で語ることすらタブー視されてきた分野だと思うので、そこはまだ日本には来ていない風潮かなと。
奥田:わかりました。
吉澤美弥子氏(以下、吉澤):あとは、不妊治療という部分でいうと、かなり日本でも出てきているかなとは思うんですけど、逆に避妊が……アメリカだとちょうど中絶が保険のカバレージを外れたこともあって、一気に出てきた印象でした。しかし日本はまだかなというところで、そこもまだまだブルーオーシャンだなと感じています。
奥田:私もそれはすごく感じています。去年、500 startupsのアクセラレーター「500 KOBE」を神戸でやったんですが、もうシリアルアントレプレナーの女性がメンターで来ていて、「次はセックステックだ」ということで始められたんですよね。ちょうど1年前ですが、まだ日本では考えもしない分野なんだなと私も思いました。
理佳さん、なにか質問とか意見とか?
横山理佳氏(以下、横山):私からは、アメリカのこういうFemTechは、かなり社会課題に突っこんでいるな(と思っています)。一方で、卵子凍結のような、少し倫理観、倫理的な問題も入ると思うんですが……このような米国のベンチャーは、どのようにその倫理的な課題をクリアしているのでしょうか? 政府に交渉するとか、いわゆる企業協働とか。
吉澤:卵子凍結は見ていなかったので、わからないです。
例えば、胎児の遺伝子検査というか、お母さんとお父さんの遺伝子検査をして先天的な小児疾患が出てくる確率を出すのが、ある意味ではかなり問題のありそうな会社なんですけれど、そこの会社は単に遺伝子検査をやるだけではなく、そのあとの小児科医の相談もきちんと会社として提供しています。
仮に先天性疾患の可能性が高くても、産みたい方をサポートしたり、産まない判断をするお父さんやお母さんをちゃんとサポートする体制を作るところが、今のアメリカで(新しく)出てきている会社でもしっかりとがんばっているところかなとは思っています。
横山:ありがとうございます。今まさに、これからバイオベンチャーが尖っていくところかなと思っていて、出生前診断のマーケットがちょうど広がっているので、かなり参考になると思います。
奥田:なんかこの話題だけで1時間ずっと話せそうな気がしますが(笑)、今日は私たちも前座として、どんどんみなさまにテーマを投げかけていく役目ですので、次は手短かに、投資の面からの話題に移りたいと思います。
ヘルスケア領域に投資
奥田:次は美弥子さんに、自己紹介と「女性×ヘルスケアベンチャー」の投資的視点からということでお話をいただきたいと思います。
吉澤:先に自己紹介だけさせていただきます。今、ご紹介にあずかりました吉澤美弥子と申します。「Healthtech Women Japan」を小西と一緒に立ち上げたメンバーでもあるんですけど、本業でいうと、500 Startupsというベンチャーキャピタルで働いています。
ヘルスケア以外にも投資をしていて、不動産業界だったり、それこそFinTechなど、かなり堅い業界をいろいろ見ているんですが、もともと自分が看護学部出身ということと、「医療という問題をどうやったら解決できるだろう?」とすごく考えた結果、自分は投資側に回りたかったので、やはりヘルスケアは自分の中でもかなりの注力テーマというか、勝手に注目しているところでもあります。
弊社は4社に投資をしています。ベンチャーキャピタルというと、ただお金を出す投資側なんですが、逆にいうと、そういったシーズを持っている起業家をサポートしていくために、ヘルスケアの業界に関わっています。
いま小西がFemTechの話をしました。私からは、ヘルステックというもう少し広い業界の中で、女性がどう関わってきているのかをお話ししたいと思います。その前に、ヘルステックの立ち上がりから今年にかけてのトレンドをざっくりとご説明します。
ヘルステックはご存じかなと思います。ヘルスケア業界でさまざまなテクノロジーをかけ合わせて医療業界をサポートしていくマーケットです。
「インターネット×ヘルスケア」「バイオテクノロジー×ヘルスケア」というところで、さまざまな産業が出てきており、必ずしもスタートアップだけが関わっているわけではありません。
最近の特徴でいうと、非医療系の大企業がこの業界にたくさん入ってきています。Amazonが昨年、アメリカでヘルスケアの子会社を立ち上げていたり、かなりテクノロジーに強い会社が医療業界に入ってきている。それが今のアメリカの状況になります。
投資増加にオバマケアの影響
吉澤:投資額の成長推移は、実は2011年から2017年……2017年は予測の数値にはなるんですけど、ベンチャー業界全体のベンチャー投資額の推移とだいたい一緒なんですね。
ただ、ベンチャー業界全体としては2014年から2016年で若干伸び率が下がっています。しかしヘルスケアだけは順調に伸びています。
理由としては、やはりオバマケア。アメリカの医療制度改革が大きく影響しています。アメリカの保険制度で担えないところを民間企業でサポートしていく。その中では、民間企業も既存の大きな会社だけではなく、スタートアップやベンチャー企業がそこに参入していくような、それを加速させるような医療政策だったので、たくさん(の企業が)出てきて、投資家もたくさん投資をしています。
投資家自体、いままではどちらかというと自分のバーティカルの専門領域を持っている方があまりいらっしゃらなかったんですけれど、それを機に医療業界専門のベンチャーキャピタリストも出てきているのがアメリカの状況です。
ヘルステックという言葉が出てきてから、2010年代後半にかけてどういうトレンドの推移があったか。実はもう、1990年代に「ヘルステック」という言葉が一度定義されていて、その時はいわゆる「インターネット×ヘルスケア」でした。よって、いわゆるウェブサイトを使ってヘルスケアの業界を変えていこうという会社が多く出てきています。
「PatientsLikeMe」「WebMD」「Everyday Health」みたいな、いままで一般消費者さんがなかなかリーチできなかった医療情報だったり、自分の身体のことを知りたいと思ったときに参照できるような権威あるメディアだったり、そこで交流できるSNSみたいなところが出てきています。
2000年代後半になると、スマホが出てきて、情報を一方的にオンラインで見るというものから、よりインタラクティブなものになっていきます。
例えば「MyFitnessPal」は、自分が入力したダイエット情報を反映させることで、適切なフィードバックがくるサービスです。23andMeのように、自分の遺伝子情報を検査してくれる会社など出てきたり、かなりインタラクティブになっていく。それが、2000年代後半の特徴になります。
2010年代前半になると、より制度に踏み込むようなものになってきて、医療システムそのものに、ヘルスケアのスタートアップが取り組んでいくといった変化が起きています。
これはやはり、オバマケアの影響がかなりあったかなと思います。例えば「Oscar 」という会社は医療保険自体を作るスタートアップです。また「Omada Health」「Doctor On Demand」みたいに、遠隔で医師の診療を提供する会社が出てきています。
2010年代後半になると、かなり大きな会社が出てきて、いままでたまってきたデータを活用するフェーズになっています。AIトレンドがベンチャー業界全体でかなり言われてはいるものの、ヘルスケア業界に関していえば、「AI」というバズワードを出さなくても、データを活用していくフェーズにすぐに入っていった印象です。
2018年のトレンドでいうと、順調に投資金額が伸びています。その中でも特徴的だなと思ったのが、投資分野の部分で消費者向け情報サービスやフィットネスの金額がかなり上がってきています。
メンタルヘルス領域に注目が集まる
吉澤:これまでフィットネスやC向けのヘルスケアサービスはいったん落ち着きを見せていたんですけど、また盛り上がってきているところがすごく特徴的かなと思っています。
先ほど私が申し上げたように、データを活用して、それを消費者に還元するようなタイミングになってきていることと、消費者自体のヘルスケア、健康への意識がかなり上がってきている……その影響を受けていると思っています。
買収自体はすごく減っています。どちらかというと、大きなIPOを備えているような会社が増えている状況です。2018年の上場予想でいうと、「Health Catalyst」や「Grand Rounds」といった会社も出てきています。
いままでの「少額でバイアウトして終わり」のようなベンチャーではなく、きちんとヘルスケア業界を変えていこうとしている会社が出てきているのが今年の状況です。
その中でもおもしろいなと思った領域でいうと、メンタルヘルスです。ここは、投資家はあまりポジティブな印象を持っている分野ではなかったです。
理由としては、精神疾患を持っている患者さんにオンラインでアプローチしても、エンゲージメントが維持できるのかという最大の懸念がありました。ただし、サービスはあったんです。
それが、最近はなかなか投資のない状況だったんですけど、今年に入って非常に大きな投資、一流の投資家が投資しています。
また、よりエビデンスにもとづいたヘルスケアスタートアップが高い評価をつけられるようになってきています。単にオンラインで健康にしていくだけではなく、例えば「その結果、実際にどうなったのか?」というところまで、臨床的なデータを出している会社が非常に高い評価を受けるようになってきています。
FDAはきちんと取得するものという認識だったり、それ以外でも、実際にそのサービスを受けた結果、薬の摂取量の減少にどのような影響があったのかなど、臨床的な数字がよくなっているのかを、いろいろな会社が表に出すようになっています。
ここまで、ヘルスケアのスタートアップのお話で、女性のことはまったく触れていなかったんですけど、女性起業家についてもお話ししたいと思います。
ヘルシーフードも需要増
吉澤:正直に申し上げると、私たち、500 Startupsとしては、女性起業家であることがポジティブにもネガティブにもならないというか、投資判断にまったく影響しないんですね。ふだん「女性起業家」というワードを聞くと、正直「うわ、なに話そう?」みたいな感じになるんですが、「成功している会社に、実際に女性の起業家が出てきていますよ」という部分を少しだけご紹介したいと思います。
女性起業家の比率自体は2009~2016年で5倍になっているんですけど、実はそのあとはずっと横ばいというのが今の状況です。スタートアップの定義にもよるんですけど、ベンチャーキャピタルが出資の対象にする会社の中で、だいたい17パーセント程度が女性の起業家というのが今の状況です。
しかし、ベンチャーキャピタルが実際に出資した件数に対して、(そこが)女性起業家だった割合は、非常に少ないのが現状で、だいたい4.5パーセントです。つまり、全体の調達額のうち1.9パーセントが女性起業家による調達でした。
いわゆる外部資金をガンガン入れて急成長を目指していく会社の中でいうと、やはり女性起業家の比率は下がってしまうのが、このベンチャー業界全体の状況です。
実際に資金を調達した会社の中を見てみると、医療業界、ヘルスケア業界、ウェルネス業界の業種が非常に大きいということが、このFortuneさんが出しているデータ(でわかります)。
教育業界も非常に多いです。スライドにあげた10社のうちの5社がヘルスケアの会社で、2社がウェルネスの会社。いわゆるヘルシーフードなどを提供している会社です。女性起業家の中でもヘルスケアは非常に相性がいいというか、大きな会社を目指す女性起業家の中でヘルスケアは非常に多いです。
アメリカの「23andMe」、急成長の理由
吉澤:では、実際に成功しているヘルスケアのスタートアップで、女性起業家の会社というと、23andMeの一択だなと私は思っています。ご存じのとおり、企業価値はすでにユニコーンになっていて、全世界の遺伝子検査サービスを牽引している会社です。
一時期「検査自体をしてはいけませんよ」というFDAからの厳しい規制も入ったりはしたんですけど、昨年か今年に「13ぐらいの先天性疾患に関しては、きちんとこの会社がそのリスクを出してもいいですよ」という審査にきちんと通って、また企業価値が上がってきています。
この女性ファウンダーは、「女性ファウンダー」として注目を集めている方ではない(と言ってもいい)くらい、本当に偉大な起業家です。ご自身も、生物学の学士まで取得していて、そのあとは投資業を行っていたということです。遺伝子の専門家と一緒に起業しているような方です。
(23andMe創業者のアン・ウォイッキ氏の)夫はGoogleのセルゲイ・ブリンということもありますが、それは成功要因の1個にすぎないです。
もう1社、ユニコーンの会社で女性ファウンダーのヘルスケアの会社「Outcome Health」もあります。こちらは共同創業者の方が女性で、実は賛否両論ある会社です。院内にサイネージディスプレイを設置して、患者さんとドクターのコミュニケーションをより円滑にする会社です。
ビジネスモデルが、サイネージモデルというか……サイネージによる教育ツールだけじゃなく、患者さんのデータを収集して、そこに最適な製薬企業の広告を配信するようなサイネージ広告のアドネットワークみたいなところです。
単価が非常に高いので、一番最初の調達でいきなり50億ドルのバリュエーションがついて、Googleから5億ドルを調達している会社です。賛否両論がある理由は、その収益モデルが、はたして本当に患者さんにとっていい広告を出しているのかということですが、かなり収益をあげている会社です。
女性ファウンダーは完全にCTO側ですね。いわゆるテクノロジーの中でインターネットの開発みたいなところに強いファウンダーさんで、エンジェル投資家が集まって立ち上げたベンチャーファンドのメンバーも務めています。
私からは以上になります。ありがとうございました。
(会場拍手)
奥田:ありがとうございます。
女性起業家が活躍できる風土とは
奥田:海外でも今、女性の起業家が約10パーセントということでした。今、数字がないままお話しいただくのはつらいかもしれないのですが、日本はどんな感じの……パーセントは出なくてもいいんですが、増えているのかどうかみたいな感覚はお話しいただけますか?
吉澤:弊社では、実は妊娠中のファウンダーに投資した実績がメディアに取り上げられたこともあって、かなりの女性起業家が連絡してくださり、(女性の)比率がほかのVCさんよりも高いです。もしかしたらバイアスがあるかもしれないんですけど、比率でいうと1割ぐらいは、女性起業家とお話ししている印象ですね。
奥田:それは、御社としては高いほうだと思うんですけど(笑)。
吉澤:そうですね、高い(笑)。
奥田:例えば、今回のヘルスケアベンチャー・サミットや展示会の選択などをやっているんですが、100社を採択して、「女性起業家がいるかな?」と思って見ると、2人とか、そんな状況なんですよね。このベンチャーサミットの中の展示ブースを1個1個見ていくと「あれ、女性のファウンダーっていないよな」というのが本当に今の現実です。
次にこういう世界に向かっていくにあたって、投資側や起業家側に、なにかアドバイスとかはありますか?
吉澤:女性起業家でいうと、けっこういらっしゃるのかもしれないです。しかし、外部資金を入れて短期間で成長を伸ばしていくような、リスクを取る経営スタイルをする起業家となってくると、だいぶ減るのかなとは思っています。
個人的には、必ずしもすべての経営者さんが株式で調達をして、プレッシャーを感じながら急成長を目指すのがいい選択肢とも限らないと思っています。そこはきちんと女性起業家がリスク等を学んだ上で、その選択肢としてベンチャーキャピタルと話して調達していくのであれば、非常にいいかなとは思います。
経営の勉強や情報提供は、私たちとしてもまだまだ足りていないところです。ほかのVCさん含め、例えば専門の弁護士さんも、女性起業家が参加しやすい雰囲気で、ファイナンスの勉強会など経営のリスクをどう伝えていくかといった機会を提供するのが一番大事かなと思っています。
奥田:私もそう思います。私自身、若干エンジェル投資をしているんですが、いつも気づくのが、ファイナンスの知識がぜんぜんなくて、調達するということ自体の知識がゼロみたいなところで起業をして、調達してしまってから「あれ、こういう意味だったんだ?」みたいなことに気づく人たちがとても多いので、私も勉強会などはこれからも開こうと思っています。