オーバーロード ありのままのモモンガ   作:まがお
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「オーバーロード ありのままのモモンガ」はこの話で最終話となります。



最終話 ありのままに生きる者達

 モモンガはこの世界に来て様々な人と関わった。それが良い影響だったのか、悪い影響だったのかは当人にしか決められない。

 これはモモンガに影響された人達の話。

 

 

「ラナー様。実はお話があります」

 

「何ですかクライム? いつもの三割増しで真剣な表情が素敵ですよ」

 

 

 ラナーは何時もの様にからかうが、クライムは表情を変えない。

 

 

「ラナー様に拾って頂いて本当に感謝しております。私の様な孤児を御付きの兵士にしてくださった事も…… 本当はこの気持ちも伝えないつもりでした」

 

 

 ラナーはもう彼が何を言いたいか分かってしまった。だが彼の言葉で最後まで聞きたい。ずっと待ち望んでいた言葉を。

 

 

「ラナー様。心から愛しております。この先何があろうと永遠に。忠誠と違ってお受け取りくださいとは言えません。ですが――」

 

「――クライムっー!! ああ、もう我慢出来ないわ。これはもうゴールしても良いと言う事ですね。最終回ですね。さぁ行きましょう!! 国なんか捨てて旅立ちましょう!!」

 

 

 ラナーは最後まで我慢出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが秘密結社ズーラノーンの本部か…… この中にいる盟主を倒せば、この先ズーラノーンが起こす悲劇は無くなる。いや、それは楽観的すぎるな。まぁいい、行くぞガゼフ!!」

 

「まさかお前とこうやって肩を並べて戦える日が来るとはな…… お前なら安心して背中を預けられる。恐れるものは何も無いな…… 行こうブレイン!! 最後の戦いだ!!」

 

 

 何にも縛られず、自分の信じる正義に従って刀を振るうブレイン。

 王と民の思いを背負って、誇りをかけて剣を振るうガゼフ。

 

 二人はズーラノーンを倒す最後の戦いに挑む。

 

 

「まさかここに辿り着く者がいるとはな…… ズーラノーン盟主としてお相手しよう。先に言っておくが、私はかの逸脱者フールーダ・パラダインを超える魔法詠唱者(マジックキャスター)だ。分かりやすく言うと〈魔法の矢(マジック・アロー)〉を同時に六発撃てる。さあ、最初から全力でかかって来るがいい!!」

 

「逸脱者を超えるとは、嘘か真か…… どちらにせよこれは強敵だぞブレイン」

 

「ふっ、大丈夫だガゼフ。俺は気付いたことがある」

 

 

 そう言って笑うブレインは刀を構え、相手に向かって走り出す。

 

 

「アイツより強い魔法詠唱者(マジックキャスター)なんていねぇ!! 武技〈十光連斬〉!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、このフリフリのドレスならどうかしら!! 私に支配される気になった? そして私ともう一度戦いなさい!! そして結婚よ!!」

 

「支配するのか戦いたいのかどっちだよ…… どっちにしろそんな装備じゃ勝てないだろう。あと最後のはダメだ。そういうのは大きくなってから、ちゃんと好きな人に言いなさい。ロリコン疑惑はもう懲り懲りだ……」

 

 

 トブの大森林に住むモモンガの所には、割と頻繁に彼女がやってくる。手を替え品を替えモモンガを魅了しようとしているが、今更あれが嘘だったとは言い辛い……

 

 

「お姉ちゃん、番外さんまた来てるね」

 

「そうね。モモンガ様をなんとか魅了しようとしてるみたいだけど……」

 

 

 二人が話している中、竜の意匠が所々に散りばめられた白い全身鎧が空から降り立った。

 

 

「やれやれ、本当なら彼女は見逃す訳には行かないんだがね……」

 

「ツアーさん!!」

 

「ツアーさんも来てたんですね」

 

 

 アーグランド評議国の永久評議員であり、白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)であるツァインドルクス=ヴァイシオン。彼はこの鎧を遠隔操作して度々様子を見に来ていた。

 

 

「ああ、こんにちは。今日はフリフリか…… 彼女も飽きないね。いや、構ってくれる相手がいるから内心楽しんでいるのかな……」

 

「ツアーさんは番外さんのことまだ気になっているんですか?」

 

「ん? ああ、もうどうこうしようとは思ってないよ…… 君からのお願いはちゃんと守るさ」

 

 

 じゃないと世界がいくつあっても足りない……

 経緯は省くがこのネムという少女との約束で、番外席次が問題を起こさない限りツアーは手出し出来ない。

 もし約束を破れば私の本体がまたゲロってしまう。

 あんな心臓に悪い体験は二度とゴメンだ。

 

 

「君は本当に凄いね。ありのままで居るだけで、神を超える存在を従える事が出来るんだから」

 

「ネムは神を超える存在なんて従えてないですよ?」

 

 

 この少女はこれで良いのだろう。

 生まれながらの異能(タレント)も、他の特殊な才能も何も無い。

 そんな彼女だからこそ彼も力を貸すのだろう。

 

 

「人間種も亜人種も、異形種も一緒か…… ここはかつての仲間たちを思い出すね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 バハルス帝国の皇帝ジルクニフの私室。

 ジルクニフは鏡の前で立ち、ずっと上の方を凝視している。

 

 

「はははっ!! 戻った、戻ったぞ!! 髪の量、色艶、完璧だ。もう禿げとは言わせない!!」

 

 

 一時的とはいえ同盟を組んだおかげで、平和になり仕事も減った。

 なによりラナーが最近は落ち着いている。

 

 健康を取り戻したジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは、鏡の前で三十分ほど喜びを噛み締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ こんな未来もあるかも

 

 

「私がネム達と出会ってもう数十年か……」

 

「そうですね、色んな事がありましたね」

 

「モモンガ様、今更ながら聞きたいことがあるんですけど……」

 

 

 これだけ長い付き合いだというのに、エンリが言葉を躊躇うのは珍しい。

 

 

「なんでネムが老けてないんですか!? どう見たって20代前半の見た目ですよね!! あとラナー様とかクライムさんも前会ったら変わってなかったんですけど!!」

 

「ん? 気付いてなかったのか? ラナーはクライムと永遠に一緒にいるとか言って、私のアイテムを使って天使に転生してたぞ。クライムも寿命が無い種族に転生したんだが…… 犬っぽい種族だったな」

 

「初耳なんですけど!? モモンガ様も渡しちゃって良いんですか!!」

 

「ラナーと口論して勝てるわけないだろう。見事に丸め込まれてしまったよ」

 

 

 何を当たり前のように言ってるんだこの骨は。

 知らない間に友人が人間を辞めていたとは……

 

 

「はっ!! もしかしてネムも天使に!?」

 

「はっはっは、そんなわけないだろう――」

 

 

 ああ、良かった。私だけ取り残されたのかと――

 

 

「――ネムは既に大天使だ!!」

 

「同じですよ!! えっ、渡しちゃったんですか!?」

 

「ネムにお願いされて断れるわけないだろう。もちろん転生は衝動的ではなくちゃんとネムが理解してのことだし、エンリと離れたくないという理由もあったんだぞ」

 

「お姉ちゃんも心配しなくても大丈夫だよ?」

 

 

 一体何を言っているのか分からないし、混乱してきた。まるで私の方が先に変わったかのような……

 

 

「そうだぞエンリ。お前だって老けて無いじゃないか」

 

 

 私までいつの間にか転生してるの? 確かに年齢の割には見た目も若いし、自分でもネムと同じくらいで通せるって自信は密かにあった。

 おかげで結婚できてなくてもまだいけるって思ってたけど……

 

 

「言っとくが私は何もして無いぞ。自力で仙人か何かの職業(クラス)を手に入れたんじゃないのか? この世界は職業(クラス)を手に入れる前提条件とかないからな……」

 

「私は修行なんてしてません!!」

 

 

 原始的な村での生活。

 年々こなせる量が増えていった仕事。

 時々付いて行った冒険。

 

 ユグドラシル判定では、仙人の修行と呼べるものだったのかもしれない……

 

 

「まぁ何にせよ、ありのままの自分を受け入れることだな。転生して人間をやめても、自分は自分だ。全部が変わるわけじゃない。現にエンリはラナーとクライムの変化に気がつかなかったしな」

 

 

 これまでの経験で色々と悟っているモモンガ。

 

 変わるモノ、変わらないモノ。

 ありのままの全てを受け入れ、モモンガ達はこれからも生きていく。

 

 モモンガの冒険は終わらない。

 

 

 

 




 「オーバーロード ありのままのモモンガ」を最後まで読んで頂きありがとうございました。
 本当は1つ前の「モモンガは悟」を最終話にするつもりだったのですが、ifルートの方が本編最終話より長くなってしまいました。
 それが個人的に気になり、今回の話を追加で書きました。
 駆け足気味でしたが、軽く読んで軽く笑っていただけたのならば幸いです。









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