“カープ女子”NHK「ニュースウオッチ9」でわずか4秒初登場から流行語大賞トップテンに!
惜しくも日本一は逃したが、セ・リーグ3連覇を果たした広島の熱心な女性ファン「カープ女子」が話題となったのは、平成26(2014)年のこと。同年の新語・流行語大賞でトップテンに選ばれ、その後、さまざまなジャンルで女性ファンを指す愛称が生まれる走りとなった。
2013年にメディアで初めて「カープ女子」の単語を使ったとされるNHK「ニュースウオッチ9」の特集を担当したディレクター・丸岡裕幸さん(35)が当時を振り返った。
「地方の不人気球団」と言われていたのも今は昔。広島は、魅力あふれるチームとして知られるようになった。ホームゲームの観客動員は2014年から5年連続で過去最高を更新し、今年は約223万人に。原動力となっているのが「カープ女子」の存在だ。
単語の誕生の場とされているのが、13年9月30日放送の「ニュース―」。「急増カープファン 首都圏でなぜ?」という特集内だったが、当時「カープ女子」という5文字が画面に映し出されたのは、わずか4秒に過ぎなかった。
担当ディレクターの丸岡さんは「『カープ女子』の特集をしようとしたわけではなくて、『弱い時代しか知らない人たちが、なぜ負けてもカープの応援をし続けて来たのか?』というのがテーマでした。だから、文字は一瞬しか出ていないんです」と振り返る。そんな中、広島が16年ぶりのAクラス、球団初のクライマックスシリーズ(CS)進出を決めていたこともあり、翌週以降に民放がこぞって「カープ女子」のフレーズで特集を始めた。
それを見た丸岡さんは、チーフプロデューサーの松木秀文さんと顔を見合わせた。「そういう特集の作り方もあったのか。『カープ女子』で番組を全面展開すれば良かったのか…と思いましたね(笑い)」。ただ、それらの番組が作られたのも「カープ女子」という絶妙な呼称がNHKから生まれたのが理由かもしれない。
特集内に登場した女性ファンは、自身のことを「カープファン女子」と名乗っている。それを「カープ女子」と“命名”したのは、丸岡さんと松木さんの「番組で紹介した時の愛称が新しい潮流になれば」という思いと、入念に練られた戦略があったという。
「2つの単語をくっつけて造語するとして、チームを表すのは『カープ』か『鯉(こい)』の2つかな、と。さらに、女性を表すのは『女子』『ガール』『ジョ(女)』の3つ。2×3で6パターンの中から、見た目と聞こえ方がいいのはどれだろうと考えたんです。例えば『カープガール』だと長音(伸ばす音)が2つあって語呂が悪い。その中で残ったのが『カープ女子』と『鯉女』でした」
当初、丸岡さんは「鯉」が「恋」にも通じることから、女性を表現するにはいいのでは、と「鯉女」を選ぼうとしたという。だが、松木さんと意見を交わす中で、ふと気が付いた。
「『カープ=鯉』というのは、野球ファンでないと分からない。おそらく、多くの人には『コイジョ』というカタカナ4文字の音では意味が通じないのではないか。それなら、見ても聞いても分かりやすい『カープ女子』だろうということになりました」。その後は、もはや説明するまでもない。現在ではさまざまなジャンルの女性ファンに愛称をつける習慣が広がっている。
丸岡さんは「カープ女子」という単語が“市民権”を得た理由を、どのようにみているのだろうか。「先入観として『野球は男性、もしくは男性に連れられた女性が観戦するもの』というものが一般的にあり、意外性があったからだと思います。しかも、女性だけで野球を見に行くという行為が、自然発生的に起きており、そこにたまたま『カープ女子』という言葉が寄り添っただけだったということだと思います。その意味で、我々の番組は、単なる『発火点』だったんでしょうね」