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【プロ野球】

ソフトバンク平成最後の日本一! 工藤監督、連覇導き15度宙を舞う!

2018年11月4日 紙面から

広島-ソフトバンク 日本シリーズを制しナインに胴上げされるソフトバンク・工藤監督=マツダスタジアムで(北田美和子撮影)

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◇日本シリーズ<第6戦> ソフトバンク2-0広島

 平成最後の日本一はソフトバンクだ!! SMBC日本シリーズ2018は3日、マツダスタジアムで第6戦が行われ、初めてパ・リーグのレギュラーシーズン2位から勝ち上がったソフトバンクがセ・リーグ3連覇の広島を2-0で下し、初戦に引き分けた後の4連勝で2年連続9度目(南海、ダイエー時代を含む)の日本一に輝いた。ソフトバンクの工藤公康監督(55)は就任4年で3度目の日本一を球団史上初の「下克上日本一」で達成。日本シリーズの最高殊勲選手(MVP)には「甲斐キャノン」で広島の機動力を封じた甲斐拓也捕手(25)が初めて選ばれた。

    ◇

 約7カ月前の開幕時に描いた山頂へのルートとは違っていた。球団史上初のレギュラーシーズン2位からの日本一。今季初めての歓喜の胴上げ。工藤監督がナインらの手で15度も宙を舞った。

 「最高に幸せです。(リーグ)2位という悔しい思いをして、日本一を目指して頑張ってきた。選手のみんな本当にありがとう!」

 道は1合目から険しかった。昨季94勝の独走Vと日本一を支えたサファテら主力が開幕直後から次々と故障離脱し、93試合を消化した8月5日の時点で今季最多の借金2。昨季の同時期の貯金は30。「俺の決断力が足りない」。勝ち気な男が初めて近い関係者に弱音を漏らし、自分を責めた。

 「何かを変えたいなら、まず自分が変わらないと」。8月の遠征中。選手を食事に誘って意見に耳を傾けた。要望の多かった試合中のガムを解禁。若手には理想の打順も聞いた。

 「当たり前だけど、誰しも抱えているものは違う。人は同じじゃない」。選手との対話で再確認したのと歩調を合わせるように、風向きが変わった。8月12日からの1カ月間で喫した黒星はわずか4。開幕から独走した西武を猛追した。リーグ優勝は逃したが、終盤の勢いそのままに、CSを突破。セ3連覇の広島を破って「下克上日本一」を成し遂げた。

 横浜市内の自宅に家族を残した単身生活も4年目。常勝を義務づけられたチームを率い、負ければ厳しく批判される指揮官を支えるのは、今も家族だ。俳優、プロゴルファーと多忙な子供らを支える夫人に代わり、福岡での暮らしは主に三女の阿偉さんが手伝ってくれる。ナイター後は消化に障らない軽食で迎え、大一番の前には勝利を祈ってカツカレーやメンチカツを用意してくれた。

 「ベンチの表情が険しすぎる」「あのコメントはないよ」。家族で組むLINE(ライン)のグループで、5人の子供らからストレートで厳しい意見も飛ぶ。「直そうとは思ってんだけどね」と苦笑いで画面を見つめた。夫人からは本を多く薦められた。京セラ創業者の稲盛和夫さん、徳川家康など各時代のリーダーの思考を読み解いた。

 ひとときの癒やしだった父娘での映画鑑賞も、今年は日程上、福岡での休みが少なく、近所の喫茶店がお決まりになった。他愛のない家族の会話。今まで笑っていたのに、いつの間にか娘の存在を忘れたかのようにスポーツ紙のプロ野球面に没頭する姿があった。

 監督就任から4年間で3度の日本一。それでも立ち止まることはない。「まだまだ。俺も変わらなきゃいけないところがたくさんある」。世代交代などの課題も多い。「ホークスがずっと強くいられるための何かを残したいんだ」。現在の契約が最終年となる5年目の来季。未来へと続く、新たな山道を登る。 (倉成孝史)

 

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