「偏差値」とは?これだけは知っておきたい「偏差値」の意味と使い道
模擬試験や学力テストのときに明記される「偏差値」ですが、「数字の見方がわからない」、「どうして大事なのかがわからない」という声をよく聞きます。今回は「偏差値とはなにか」について、知っておきたい基本的な項目にしぼって説明します。
「偏差値」は「平均点」とはまったく別物
うちの子が先日受けた模擬試験の結果が返ってきました。「テストの点数よりも偏差値が大事」と学校で言われたそうなのですが、どうしてですか?
私も知りたいです。そもそも「偏差値とは何なのか」から教えていただけると幸いです。
わかりました。私も「偏差値がどういうものかよくわからない」という声をよく聞きますので、順を追って説明していきましょう。学力を測る指標は、「点数」「順位」「平均点との比較」「偏差値」の4つが主に挙げられます。点数と順位はわかりやすいかと思いますが、偏差値と平均点とを混同している方は多いようです。
平均点は、全員分の点数を足して、人数で割った数字ですよね?
そのとおりです。なぜ平均点が必要かというと、自分の点数と平均点との差を見るためです。テストの得点は、受けるテストによって変わります。国語が70点、英語が75点だったからといって、英語のほうがよい成績とは限りません。みんなが50点しかとれないような国語のテストで70点だったらよい結果ですが、みんなが90点取れている英語のテストで75点だったら、あまりよい結果とは言えません。
自分が平均より、どれだけ得点できたか、できなかったかを見るために平均点があるんですね。
はい。平均点より上の点数なら、受験者のなかでよい得点ということになります。次に「偏差値」について説明していきましょう。もし、お子さんが7月と9月に2回模擬試験を受けたとしましょう。国語の平均点は、7月も9月も50点でした。この模擬試験で、お子さんは2回とも60点だったとしたら、おふたりはお子さんになんと言いますか?
両方とも平均点よりよい結果ですから、いずれも「よかったね」とほめると思います。
確かに平均点だけ見るとよい結果ですね。では、7月は70点台の人と40点台の人が多くいたために平均点が50点だったのに対し、9月は50点台に得点が集中していたとしたらどうでしょうか?
9月は50点台が多いなかで60点を取れているなら、喜んでもいいと思います。でも、7月はどう考えればよいのかしら?
難しいですね。70点台の人も多かった7月は、60点がよい点数かどうかわかりません。
グループ全体での点数のバラつきがわからないと、60点が全体のどの位置にあるのかわからないですよね。
今、美香さんがおっしゃったように、平均だけでは「全体での自分の位置」がわからないんです。同じ平均点や得点でも、ほかの受験生たちの得点分布によって、自分の位置は違ってきます。自分の位置を知るために見るのが「偏差値」です。
なるほど。
まとめると、偏差値とは、ある集団のなかでの位置を示す数値のことです。平均点を取った人の偏差値を50として、そこからどれだけ上か下かを見ます。基本的に、平均点より得点が上なら偏差値は50以上になり、平均点より得点が下なら、偏差値は50未満になります。
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偏差値60以上は約6人に1人
偏差値について、もうすこし詳しく見ていきましょう。偏差値は統計学を使っています。統計学には、「正規分布」というものがあります。たとえば、「日本人の成人男性の身長」や「中学1年生の女子50m走のタイム」などを測ると、下図のようになります。これが正規分布です。
中央が高くて左右対称で、「釣り鐘」のかたちに似ていますね。
受験者数の多い全国模擬試験などの得点も、基本的に正規分布になります。正規分布になるときは、偏差値と順位とが対応します。つまり、偏差値50の人は順位も真ん中あたりになるイメージです。偏差値と順位の対応を表したのが下記の表です。
この表は、どのように見たらいいんでしょうか?
偏差値60以上は全体の上位15.87%とあるので、約6人に1人の割合だということがわかります。ですので、たとえば、受験者数10,000人のテストで偏差値60なら、だいたい順位は1,587番くらいということになります。
この正規分布は、学校のテストなどでも同じですか?
人数の少ないテストだと、きれいな釣り鐘形の正規分布にはなりません。たとえば、10人しか受験していないテストでは、たまたま得点のよい生徒さんだけが受けている場合もありますよね。すると、釣り鐘のかたちが右よりにずれてしまいます。統計というのは、サンプルが少ないと成り立たないものなんです。
つまり、受験人数が多いテストほど、偏差値の信ぴょう性が増すということですね。
そのとおりです。サンプルとなる数が多くなるにつれて正規分布に近づいていきます。一口に「全国規模の模擬試験」といっても、全国規模のセンター試験準拠の模試のように何十万人も受けるテストもあれば、各大学の模擬試験のように受験者が限られるテストもあります。すべてが美しい正規分布になるとは限りませんので、偏差値を見るときは、その点に注意が必要です。
偏差値は、違うテスト同士で成績を比べるための「ものさし」
偏差値って奥が深いんですね。使い道や意味がわかってきました。
テストというのは、科目や試験問題の難度によって平均点や得点分布が変わってきます。さまざまな要素の兼ね合いなので、1つの数字だけでは自分の成績は正確に測れません。そんなときに、偏差値は役立ちます。平均点の異なるテスト同士でも、「偏差値」という共通のものさしを使えば、自分の成績を見比べることができます。
偏差値って、とても便利なんですね。
偏差値を見れば、教科ごとの得意・不得意もわかります。たとえば、国語の偏差値が50で、英語が60だったら、国語は標準的な学力があり、英語は標準より上の学力があるというふうに見ることができます。また、同一教科での伸びも、偏差値を使うとわかりやすくなります。夏に受けた国語のテストが偏差値50で、秋に受けた国語のテストが60だったら、夏から秋にかけて学力が伸びたということです。
今まで、偏差値は見方がわからずきちんと確認していませんでした。でも、これからはちゃんと見ようと思います。
お子さんにも「テスト結果は、教科ごとの偏差値の差を見たり、毎回の偏差値の推移を見たりすることが大事だよ」と伝えてあげてくださいね。偏差値を用いることで数字で自分の位置が見えるので、勉強の励みになると思います。