朝鮮日報

【社説】半強制的に訪朝させられた揚げ句、北の高官に侮辱された韓国財閥トップたち

 北朝鮮・祖国平和統一委員会の李善権(リ・ソングォン)委員長が先月平壌で行われた南北首脳会談の際、サムスングループなど韓国大手企業グループのトップらに対し「今冷麺がのどを通るか」(編注:周囲の空気を読まずに食事する人をなじる言葉)などと面と向かって皮肉を言い、侮辱していたことが後から分かった。当時、韓国企業トップらは北朝鮮の有名レストラン・玉流館で冷麺を食べていたが、その席に李氏が突然現れ、韓国と北朝鮮との経済協力が進まないことに不満を示すためこのような言葉を口にしたという。韓国統一部(省に相当)の趙明均(チョ・ミョンギュン)長官は29日に行われた国政監査で野党議員からの質問に「そのような話を聞いた」「北朝鮮は南北関係を速やかに進展させたいという思いがある」などと答弁し、一連の事実関係を認めた。

 サムスン、現代自動車、SK、LGグループなど韓国大手財閥のトップらは大統領府の要請を受け半強制的に平壌での首脳会談に同行した。北朝鮮側が企業経営者らの訪朝を強く要請したのがその理由のようだが、言い換えれば北朝鮮は彼らの訪朝に関する実質的な決定権を持っていたことになる。北朝鮮は核開発によって今も国際社会から二重、三重の制裁を受けている。このような状況で韓国の世界的企業が北朝鮮への支援に乗り出すのは事実上の自殺行為に他ならない。

 北朝鮮は世界で最も貧しい、文字通り失敗した国の一つだ。喜劇のような封建王朝体制によって政権を三代にわたり世襲し、住民を外部の世界と隔離することで絶対的な権力を維持している。経済規模に至っては韓国の中小都市一つにも及ばない。このような国の政府関係者が世界的企業のトップらを呼びつけ、自分たちに金が回ってこないと言っては「冷麺がのどを通るか」などと侮辱した。無礼と卑しさが北朝鮮政権の本来の姿ではあるが、それにしてもこんな言葉まで黙って聞かなければならないのか。なぜ韓国政府は自国で最高の企業経営者らに対し、北朝鮮のような貧しい国でこれほど非常識な仕打ちを受けさせたのか、全くもって理解できない。

 北朝鮮がここまで威勢が良い理由は核を持ったという自信から来るのだろう。世界が注目する中で米国大統領と首脳会談を行ったことも、また新たな自信を持つ理由になったはずだ。だからこそ李善権氏は趙長官をぞんざいに扱ったのだ。今からこのような状況では、今後もし彼らの戦略が成功し、インドやパキスタンのような事実上の核保有国になった場合、韓国に対してどのような態度を取るか十分に想像がつく。北朝鮮がどのような国であっても、交渉は続けねばならないし、北朝鮮に住む同胞も助けねばならない。しかし北朝鮮政権がどのような集団であるかは一瞬たりとも忘れてはならない。

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