もしもシャルティア・ブラッドフォールンがポンコツでなかったら……【完結】   作:善太夫
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◆cap09 カルネ村の聖女

 カルネ村には平和が訪れていた。何より村外れに新しくできた聖ナザリック教会に負う所が大きい。

 

 教会の唯一の修道女(クレリック)ルプスレギナは週に一回、村人を集めて無料で治癒魔法を施した。

 

 それまではわざわざエ・ランテルまで行き高額な代金を支払わなくてはならなかったのだから。

 

 最近村に引っ越してきた有名なポーション職人のバレアレ一家がもたらした知識も村の生活改善に一役買っていた。

 

 村の中央にある集会所では村の主だった人間が集められ、議論が行われていた。

 

 村長が挨拶をする。まず最近村の住人となったバレアレ一家が紹介され、次に聖ナザリック教会のルプスレギナ、最後にエンリが改めて紹介される。

 

「実は皆に相談がある。エンリの家のゴブリンは知っているな? あのゴブリンは実はあるマジックアイテムで召喚されたものだ。そしてこれがそのマジックアイテム『ゴブリン将軍の角笛』だ」

 

 村長は懐からうやうやしくアイテムを取り出す。それはエンリの胸に下げられた物と全く同じ物だった。村長はエンリを促す。エンリは意を決して村人に語りかける。

 

「私はこのアイテムでゴブリンさんたちを呼び出しました。そして、ゴブリンさんたちは今では大切な家族であり、村の一員です。実はある依頼を果たし、ゴウン様に謝礼としてこのアイテムをいくつか頂きました。この場ではこのアイテムの使い道について皆と相談したいのです」

 

 村人は互いに顔を見合わせた。咄嗟のことで誰も何を言って良いかわからないのだ。と、一人の少年が手を挙げた。

 

「えっと……ンフィーレアと言います。エンリは、その……ゴウン様から使い方について何か言われてないのかな? 例えば後で返さなくてはならないとか?」

 

 エンリは考えながら答える。

 

「特になかったと思うけど……ただ『大切に使え』と『召喚は状況を考えなくてはならない』とは仰っていたわ」

 

「その……価値はいか程なんかの? 売ってしまうのはまずいかな」

 

 おずおずと老人が訊ねる。

 

「それはゴウン様に対する裏切りになると思います。やはり大切にしないと……」

 

 エンリの意見に皆押し黙る。かといって誰もが家族としてゴブリンを迎える自信はない。静寂がいつまでも続くと誰もが思えたそのとき、ルプスレギナが立ち上がった。

 

「皆さん。偉大なる神はこの世界に様々な種をお造りになられました。それが人間でありゴブリンでもあります。私は偉大なる神が降り立たれた楽園を知っております。そこでは様々な形の御方がたが楽しそうに過ごしておられました。皆さん、楽園とは各々の心の中にあるのです」

 

 村人は皆、神々しいまでのルプスレギナに神の意思を感じるのだった。

 

 とりあえずアイテムはエンリが預かり後に必要がある場合に考えることになった。

 

 

 

 

 

 

 それから一週間が過ぎると村人の中にゴブリンが増えていた。また、周辺の放棄された開拓村を建て直しにいく人がアイテムを受けとることもあった。

 

 いつしか人口も増え、村には笑い声が戻った。そして幸運をもたらしてくれた仮面の魔術師アインズ・ウール・ゴウン様への感謝をしない村人はいなかった。

 

 そんな日々を急転させる出来事はなんの前触れもなく、突然やってきた。

 

 月末になり、いつもの徴税人が村を訪れたのだが、彼は物々しい兵士を帯同していた。村人は理由を聞かされないまま、広場に集められた。神殿から来た神官が勅書を読み上げる。

 

「リ・エスティーゼ王国所在カルネ村において神殿の許可なく聖ナザリック教会と称する不敬なる者による数々の無償治癒行為につき、神殿は異教徒と認定。首謀者ルプスレギナなる者を王都に送り処刑、教会は焼き払うものとす」

 

 やがてルプスレギナが縛られて連れてこられる。村人の怒りは頂点に達した。

 

「お前ら帰れ!」

 

「ルプスレギナ様はお前らに渡さん!」

 

 村人は暴徒となりルプスレギナを解放する。エンリは必死に止めようとするが、もはや村人は止まらない。

 

 神官を撲殺し、兵士と徴税人を追い返す。彼らはエンリを頭にいただき、カルネ村自警団の旗を掲げたのだった。

 

 カルネ村を中心とした開拓村住人の人間とゴブリン合わせて約二百名ほどが事実上の独立宣言をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 バハルス帝国首都アーウィンタール──フールーダは留守中の指示をようやく終えて自室のソファに座る。明日はいよいよスレイン法国との国境に向かって進軍する。今回は皇帝自らの親征であり、不様な様子は見せられない。勝利する必要は無いがどのタイミングで講和や休戦するか、それが問題だった。

 

 フールーダは胸元の人形に触れる。それにしてもあの村娘が話していた謎の仮面のマジックキャスターアインズ・ウール・ゴウンとはいったい何者であろう?

 

 と、突然空間が歪んだ。目の錯覚かと思い、目を擦ると……フールーダは知らない場所にいた。

 

「ようこそナザリックへ。私はアインズ・ウール・ゴウン。ここの主だ」

 

「………おお…………おお……」

 

 フールーダは思わずひれ伏す。彼は強大な魔力の渦の中心に(アインズ)を見た。

 

 

 

 

 

 

「今帰ったっす。ソーちゃんはまだ仕事っすか?」

 

「……ええ。セバス様のお供をされているわ」

 

「ナーちゃんは暇そうっすね? 聖女やらないっすか?」

 

「ナーベラルには無理じゃないかしら? どう?」

 

「そうね。村を滅ぼすというのならやりたいけれど……人間(ゴミムシ)の相手はご免ね」

 

「まあ、ナーちゃんはそうっすね」

 

「で、次はどうするの?」

 

「うーん……よくわからないっす。ただ、王都から討伐軍が来るかもっす」

 

「可哀想に。全滅ね。村の人たち」

 

「まあ、仕方ないんじゃないっすか? でもなんだか王都の方もきな臭いっすから何かあるかもしれないっす」

 

「アインズ様の思惑通りに進んでいるってことかしらね」

 

「きっとそうっすね」








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