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だからマーケティングは面白い

妄想にみんな巻き込め 吉野家CMOのマーケター論 吉野家CMO兼グリッド社長 田中安人氏

2018/10/31

吉野家CMO兼グリッド社長の田中安人氏

 牛丼の吉野家にあって野菜だけの「ベジ丼」を企画し、すかいらーくホールディングス(HD)の「ガスト」との共通割引券を実現するなど、異例の企画を成功させてきた田中安人CMO(最高マーケティング責任者)。新卒で入社したヤオハンジャパンの経営破綻で学んだ危機意識の重要性を説き、「妄想マーケター」と自称する田中氏にマーケターの役割を聞いた。

■マーケターは「桃太郎」になれ

 ――田中さんは自身を「右脳マーケター」と表現しています。

 「もっと言うと妄想マーケターです。私は妄想からしかアイデアは生まれないと信じています。今まで潤沢な予算がつく仕事なんてしたことがないから、頭を使うしかなかった。それが妄想を大切にするということです」

 「2013年、吉野家ホールディングス傘下のはなまるうどんの宣伝企画部長だったときに、当時の河村泰貴社長(現吉野家HD社長)から『予算がないけど売り上げを上げたい』と言われてひねりだしたのが、『まるごとダイオウイカ天を発売する』というエープリルフール企画でした。NHKのダイオウイカ特集をたまたま見て、2ちゃんねるがすごく盛り上がっているのに気づいたんです」

 「結果は大成功で、店によっては売り上げが前年の4倍、平均でも1.8倍になりました。予算がなくても最高のものをつくりたいという関係者の熱量があり、本気でやってくれたのが大きかった。デザイナーがふんどし一丁で日本海までダイオウイカの撮影に行ってくれたり、エンジニアがダイオウイカのイラストに見えるようにソースコードを書いたり。このとき私が桃太郎になればいいんじゃないかと気づいたんです」

 ――桃太郎とは?

 「桃太郎である私は、常に社会課題という鬼を探し、パッション(情熱)というきびだんごを持っている。お金で集めた仲間は、敵が強大だと逃げてしまいます。これをパッションに置き換えたとき、一流の人は鬼が強大なほど燃えてくれるんです」

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