田中の平行棒でのミスはあったが、中国、ロシアもミスはあった。これが現段階の実力通りの順位だと思う。もともとDスコア(演技価値点)の高い中国とロシアが体操の質、美しさを上げている一方で、日本はEスコア(実施点)への取り組みが遅れている。いま日本の「美しい体操」のアドバンテージはない。
DとE、どちらに重点を置くのか。その課題が見つかったのは収穫だった。個人的な意見を言えば、体の小さい日本は正確性と美しさを追求し、Eで勝負すべきだと思う。リオ・オリンピック(五輪)まではそういう戦い方ができていた。例えば、萱はつま先や姿勢にもっと意識を向けられるはずだし、白井も空中時の足割れや着地の姿勢で、まだまだ伸びしろがある。内村を筆頭に、キメや間の取り方まで意識した演技で「美しい体操」を取り返してほしい。(04年アテネ五輪団体金メダリスト、日刊スポーツ評論家)