緒方雄大
2018年10月31日17時50分
皇太子さまが今夏、お忍びでパラリンピック銀メダリストの伴走をしていたことがわかった。来年5月1日の新天皇即位まであと半年。「国民の中に入っていく皇室」を目指す新しい天皇像の一端が見えてきた。
6月26日夕。木々に囲まれた東京・赤坂御用地。
「走りやすいですか」。皇太子さまが隣のランナーに声をかけた。リオデジャネイロパラリンピックの視覚障害者女子マラソン銀メダリスト、道下美里さん(41)=三井住友海上=だ。
皇太子さまは「伴走」と書かれたビブス(ゼッケン)を身につけ、蛍光の黄色の伴走用ロープを右手でにぎり、左手にロープをつかむ道下さんに声をかけながら約1・5キロの道を走った。
道下さんによると、皇太子さまは最初のでこぼこの道で「これは何とお伝えしたらいいのでしょうか」と戸惑いを見せていたが、数分走ると息が合い始めた。カーブの手前で「右に曲がっていきます」、足場の悪い道の手前で「でこぼこがあります」。1キロ7分のペースが6分のペースに変わり、リズムがよくなった。
皇太子さまは、伴走者の声のかけ方や道下さんの走りの特徴を動画サイトで調べたという。伴走用のロープは自身で用意。走る直前には専用のゴーグルをかけて御用地内を歩き、視覚障害者の感覚も体験した。
ジョギング後は右腕を道下さんにつかませてアテンド。「飲み物は何にされますか」と気遣いもみせた。
2人が出会ったのは昨年11月の園遊会。道下さんが「機会があれば一緒に走りたいです」と伝えたところ、皇太子さま側から返答があり、伴走が実現した。
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朝日新聞社会部