アセットアロケーション(資産分散とその配分)の目指すところは、株式をどれくらい買うか、債券をどれくらい買うか、その効率が最もいいラインを、リスクを踏まえたうえでとっていくことです。
実は、同じリターンをキープしながら、リスクを下げる資産の組み合わせというものが存在します。
「相関性」とは、一方の値が変化すれば、他方の値も変化するという、2つの値の関連性を意味しますが、「外国株式」「外国債券」「国内株式」「国内債券」「金」などの資産は、相場の中で互いに相関関係があって、シーソーのように一方が上がれば、一方が下がるというような傾向があるのです。
その一例として一般的に、債券と株式は一方が下がれば一方が上がるというふうに説明されますが、完全に逆相関になるものはありません。
私の考え方としては、債券はもともとリスクが低いので、株式と債券を両方持っておくと、株式だけを持つよりも全体のリスクを下げることができる。金に関しては、株式が下がると上がるという逆相関の傾向があるので、金を入れることでさらにリスクを減らすことができる。
株式相場は20%程度のリスクがありますが、その半分のリスクを想定したうえで、最適な運用効率となる資産の組み合わせを計算した結果、次のアロケーションに決まりました。
・「外国株式」30%
・「外国債券」10%
・「国内株式」20%
・「国内債券」30%
・「金」10%
この5つの資産をこの割合で保有することで、資産相互の相関性を低くし、変動幅を抑えることで、安定的に資産を増やしていくことを目指すのです。
まず、このアロケーションの元となる大事なお話をさせてください。
やっと日本の個人投資家にも広がってきたインデックス投資ですが、もともとアメリカでは、1960年代から投資信託(ミューチュアルファンド)が開発され、インデックス投資商品も金融商品として人気を得てきました。
アメリカでは日本のような国民健康保険はないし、郵便貯金やかんぽ生命もありません。政府が国民に対して日本のように手厚くないのです。ですから、一人ひとりが少しでも貯金を増やす自助努力をしなければならないのです。
一方、欧米は階級社会ですから、株式投資はもともと資産家や富裕層のためのものでした。労働者や一般庶民が株式に投資するようになったのは、1970~1980年代からだと思います。株や債券がインデックス投資信託(投信)の形で販売されて、一般の人たちでも少額で少しずつ購入し、長期に投資ができるようになったからです。
実際、個別株や債券を複数買い揃えて分散を図るとなると、手元にまとまった資金が必要です。しかし、インデックス投信のようにあらかじめ分散の効いた金融商品が開発され、個人でも少額で買えるようになり、こうしたあらかじめ分散の効いた商品を貯金で少しずつ購入して、積立投資ができるようになったのです。
インデックス投資は、個人が個別銘柄を選んで投資するよりはずっと効率的だという理論に裏付けられています。一言で言うと、「市場は常に効率的である」という仮説に立つのが「ランダムウォーク」理論です。個人投資家がアレヤコレヤと考えて「ランダム(あてずっぽう)」に銘柄を選ぶよりは、市場に連動するインデックスに投資するほうが効率的だというわけです。
実際に、金融工学の理論的枠組みは、「効率的な市場仮説」のうえに成り立っています。市場価格は常に適正であり、もし適正価格から乖離して不均衡になることがあっても、価格が高すぎれば売られ、低すぎれば買われます。このように市場参加者が合理的に行動することで、やがて価格は均衡すると考えます。その意味で、市場は常に正しいのです。