現場にアタック

2012年09月04日(火)

担当 山崎 景子

食欲の秋となりましたが・・・・
魚が獲れなくなって困った、という話です。

どこが困っているかというと、瀬戸内海で魚をとっている漁師の方々。
どれ程、兵庫県漁業連合会協同組合、山田隆義 会長のお話です。

      

     極端な言い方をしたら、成り立たない、というくらい、非常に少なくなっている。
     以前だったら瀬戸内海でも回遊魚と言って、さわら、はまち、あじ、このしろ、さわら、
     たくさんとれていたのが、このしろが全然獲れなくなったり、あじ、さばもほとんど
     獲れなくなっている状況ですね。
     築地の方に出すほど魚が獲れてない。昔は出していたが、普通に言われる、明石だこ、明石ダイ、
     大きくならないんでなかなか出せないというか、全てに言えるが魚の成長が悪くなったというのは
     漁業者さんが言っている。
     

 

統計によると、瀬戸内海の漁獲量は、1982年の46万トンをピークに減少し、
2010年は17万5000トンまで落ち込んでいるそうです。
例えば、80年代に比べ、カレイ類が2分の1、イカナゴは6分の1、アサリ類は約190分の1

先ほどの山田さん。現在72歳で、45年近く瀬戸内海で漁業を営んできましたが、
若い頃は、獲れ過ぎちゃって困る、という事も多く、"大量貧乏"という言葉まであったそう。

(大量貧乏・・・獲れすぎちゃって一匹の単価が低いという事。)

成り立たない、という言葉通り、兵庫県では漁業者がここ10年で2000人ぐらい
 減っているそうなんです。(※いい時は1万人ぐらいいたが、今は5500人ぐらい)
     
では、なんで瀬戸内海の魚が獲れなくなっちゃったのか?
原因について、兵庫県の水産技術センター、反田(たんだ)実所長の話です。

 


      海が魚を育てる力というのは、もともと植物プランクトンが海で繁殖して
      それを動物プランクトンが食べて、魚が食べていく、という事になるんですが、
      やはり、植物プランクトンを育てる栄養素、
      その中でも窒素が減ってきている、という風に我々は考えている。
      例えば、瀬戸内海が非常に汚れていた時代には今よりも何倍か窒素の濃度があったんですが、
      それが、たくさん出てくると、赤潮とかの原因になるので、
      それを抑えようという事で規制がなされてきてその効果はあって、
      海はきれいになったんですが、ちょっと減り過ぎているのかな、と思います。

 

 

海がきれいになリ過ぎているのが問題!? 
瀬戸内海の水質改善は実際、進んでいて、工場排水や生活排水による海中の窒素量は、
1983年に1リットルあたり0・34ミリグラムだったのが昨年は0・14ミリグラムまで減少。
海水の透明度も大阪湾で3メートルから6メートルに広がりました。
ただし、これと平行する形で進んだのが、漁獲量の減少。これが予想外だった!

どれだけ、予想外かというと・・・

実は日本の高度経済成長期に瀬戸内海の水質改善を積極的に牽引してきたのは、漁業関係者。
再び、兵庫県漁連の、山田会長です。

 


     昭和43年に熊本で水銀の汚染で、その後、新潟でも同じような病気が発生。
     で、一時、魚が売れなくなって、で、我々、自ら公害問題に立ち上がって国の方に陳情したのが
     昭和48年に瀬戸内海環境保全特別措置法ができた。その時代は魚がよく獲れてたんで、
     あまり気にしていなかったが、それが昭和60年、平成になって年々漁獲量が悪くなってきた。
     そこで、回遊魚が少なくなってきた。  

 

 


公害があった事を考えれば、水質を改善しよう、というのは、当然の流れだと思うんですが、、、   
海をきれいにする為に、国は、特別措置法で工場排水制限や下水道整備など進めて、
さらに赤潮の被害が頻発した事から2001年には窒素やリンの総量規制も定めました。

ただその結果、植物プランクトンを育てる窒素やリンなど(「栄養塩」)が、過度に減り、
瀬戸内海が、魚のいない海になってしまったんです。

プランクトンが育たない。小さな魚が育たない。大きな魚がやってこない、という流れ。

じゃあ、昔みたいに汚すしかないんでしょうか?
「上から窒素をばら撒くのはダメ?」と水産技術センターの反田所長に伺ってみたのですが、
これまで努力して水質改善してきた事を考えると・・・・・という答え。
昔に戻るより、前に進めるべき。

ただ、何よりも難しいのは、何をどこまでやると、海の生態系にどういった影響が出るかが、
海の中の構造が複雑過ぎて、わかっていないとのこと。
実は、「きれい過ぎる」という話も、漁獲量の減少と水質改善が平行して進んでいるものの、
その因果関係がどうなのか、科学的に明らかにされている訳ではない。他の説を唱える人も。

ただ、そうした中、「きれい過ぎる」説を主張して、対策を求める水産技術センター、
反田所長には理由があります。伺いました。

 


     なかなかいろんな大学の先生にも、ここが一番の問題だとか、ここが問題だとか、
     いろんな意見があるし、こうだからトライしよう、という事ができない。
     それはなぜかというと科学的にきっちりと
     した証明が出来ないところが大きい。ただ科学的に証明ができないが、
     実際、それを科学的に証明できるまで待っていたら業者の方は大変な事になってしまいますので、
     私どもはこういう可能性があるのでは、と各所に訴えている。
     瀬戸内海というのは、そういう閉鎖性海域というが、
     東京湾とか伊勢湾とかあるが、そこにどういう風な環境の政策のあり方が必要かな、という時に
     ひとつの先進、というのはおかしいかもしれないが、事例になる可能性はあると思います。
     

 


環境対策が必要という声は高まっているが、徹底的にやればいいという訳でもないかも、
というのが、瀬戸内海の例。
燃料費増、高齢化など、今、漁業をやっている方はたいへん。今後、他のところが
漁獲量激減という同じ過ちを繰り返さない為にも、今後の瀬戸内海の動向が注目されます。

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