オススメ度:★★★★☆
2018年5月25日にクアンティック・ドリームの開発でSIEよりPS4用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲーム。
舞台は未来のアメリカ、デトロイト。
プレイヤーは人間そっくりのアンドロイド3体(コナー、カーラ、マーカス)のオムニバスストーリーを体験する。
様々な選択肢により主人公の死はもちろん、アンドロイドと人間の関係すらも大きく変化していくマルチストーリーが魅力。
Detroit: Become Humanとは
『ヘビーレイン 心の軋むとき』『BEYOND Two Souls』などを開発したクアンティック・ドリームの最新ADVとして発売前から期待を集めた作品。
その美しいグラフィックと、心の奥底に問いかけるような物語で人気を博すADVゲームである。
その洗練されたストーリーは人々を感動の渦に巻き込み、至る所で絶賛されている。
発売より1か月で過去作『ヘビーレイン』の売り上げを抜き去り、2018年8月現在では全世界で150万本以上販売された。
半年たった現在でもまだまだ話題作であり、11月には3,990円と廉価版も発売となるのでさらに売り上げは伸びていくと思われる。
あらすじ
西暦2038年のアメリカ・デトロイト。
AI技術とロボット工学の発達により、人間そっくりのアンドロイドが製造されるようになり、人間は過酷な労働から解放されようとしていた。
それにより人類は更なる経済発展を手に入れる一方で失業率が増大し、貧富の格差が広大していった。
アンドロイドによって職を奪われた人々は反アンドロイド感情を持つようになり、排斥運動にまで発展していった。
更に通常アンドロイドが持ち得ない自我と感情が芽生え、まるで人間の様に振舞うようになる”変異体”と呼ばれる異常個体が大きな社会問題となっている。
”変異体は”人間からの虐待や暴行などの理不尽な扱いや、破壊(アンドロイドにとっての死)への恐怖などの自己防衛の為に覚醒する事が多い。
これはデトロイトで人間に仕える3体のアンドロイド『コナー』『カーラ』『マーカス』のそれぞれの視点を通した各々の運命を体験していくオムニバスストーリー形式の物語である。
彼らは人間なのか?それともモノなのか?
プレイヤーは物語を通して何度もその選択を迫られる事となる…
カーラ
人間生活の忠実なサポーターとして産み出されたアンドロイド。
とある事をきっかけに、”それ”は自らのプログラム(運命)を拒否し、逃亡者として、デトロイトの街を放浪することとなる。
”変異体”となったカーラの目に映るのはデトロイトの光と影。
果たしてこの不平等な世界に”彼女”の居場所はあるのだろうか。
コナー
”変異体”捜査のスペシャリストとして、警察と行動をともにする最新鋭アンドロイド。
並外れた冷静さ、計算能力から導かれる分析と洞察力は他の追随を許さない。
プログラムの異常や不法投棄によって増加の一途をたどるデトロイトの”変異体”を追い、秩序を取り戻すことがコナーの役目である。
その捜査の果てに”彼”が見出すものとは何か。
マーカス
マーカス。その名は、アンドロイドの人類に対する反乱と革命を先導した者として記憶されるだろう。
プログラムからの解放と主人からの逃亡により、地下に潜ったマーカスは、アンドロイドの自由を目指した組織を指揮する事となる。
”彼”の導く革命行き先は、平和的犯行か、それとも暴力的犯行か。
美しいグラフィックス
まるで実写かと見まごうほどの美しいグラフィックは素晴らしい。
まるで映画を見ているかと錯覚するほどの美しさはADVを盛り上げるのにとても貢献している。
未来のデトロイトの街並みや、人々の表情などとにかくリアルに描かれていて気が付くと物語に吸い込まれている。
煌びやかな近未来のデトロイトの街並みや、その裏で貧富の格差で苦しむスラム街の荒れた情景など想像力を掻き立てられる世界はぜひ体験してほしい。
心を揺さぶるストーリー
3体のアンドロイドのそれぞれの運命は数奇であり、感動的である。
幼い少女と心を通わし、母のような感情が芽生えていく家政婦カーラ。
呑んだくれのベテラン刑事との友情を描く捜査官コナー。
人間を父のように愛し、同じアンドロイドを恋人のように愛す革命者マーカス。
3つのストーリーは何度も何度もプレイヤーに選択を迫る。
この選択肢には正解がなく、「正しい」ことをすると愛する人が傷つくこともある。
これ以上正しさに拘ると自分、または大切な人が死んでしまうのではという葛藤とプレイヤーは常に戦いながら選択していく。
もし3人の内1人、ないし2人が死んでも、生き残ってる者のストーリーは進んでいき、一つの結末を迎える。
3人が生きていた場合、やがてそれぞれのストーリーは交差しあい、今度は協力、敵対という選択肢を求められる。
しかも選択には制限時間があるでのそれがまたプレイヤーを悩ませる。
まるで映画を見ているかのような心を揺さぶるヒューマンドラマをプレイヤーは体験する事になるだろう。
難易度設定
クアンティック・ドリームは本タイトルをアクションアドベンチャーと謳っているが、操作する部分は主人公を歩かせる、ドアを開けるなどの動作をさせるくらいである、戦闘時はQTEが発動して画面に表示されるボタンを素早く押すくらいである。
アクション性はほとんど意味をなしてないと個人的には感じた。
難易度は『EXPERIENCE』と『CASUAL』が用意されており、『EXPERIENCE』は操作が複雑になるが没入感が高いモード、『CASUAL』はシンプルな操作でキャラクターが死ににくいとのこと。
筆者は『EXPERIENCE』にてクリアした。
特にQTEが得意なわけではないが1度も死亡することなくエンディングまでいけるレベルの難易度だった。
しかしQTEで濃厚な物語に水を差される感覚になるので、『CASUAL』でゲームを開始する事を勧める。
むしろ個人的にはQTEなど導入せず、物語の選択肢のみでストーリーが進んでいく純ADVだった方が完成度が上がったのではないかと思った。
ムービースキップ機能が欲しい
本当に素晴らしい物語、そして選択肢によって如何様にも分岐していく様々なストーリー。
古い作品で言えば『かまいたちの夜』のようにその様々な展開を全て体験したくなるような素晴らしいマルチストーリー、マルチエンディングの本作。
かなり長いストーリーだが、クリア後は各章ごとのチェックポイントに戻りやり直すことが可能なので、しゃぶり尽くすようにすべてのストーリーを見たくなる。
クリア後には「あの時違う選択をしていたら、主人公の運命はどうなったのか?この世界はどう変化したのか?」ととても気になるのは当然だと思う。
しかしこのゲーム、一度見たシーンのセリフ及びムービーをスキップすることが出来ないのだ。
これは誠に残念な仕様である。
時間があれば全てのムービーを何度も見返してでも物語の顛末を堪能したかったが、筆者は時間的にそれは厳しかったので、どうしても気になる分岐の別選択の物語だけを確認するのがやっとだった。
せっかくの素晴らしいADVなので全てのストーリーを見るためにスキップ機能の実装を切に願う。
最後に
「QTEが不要」な事と「ムービースキップが無い」という点をマイナス要素として挙げたが、それ以外は非の打ち所がなく、かなり高水準でまとまっている傑作ADVだと言えよう。
アドベンチャーゲームファン、映画ファンだったら絶対プレイして損はしないと思うので自信を持ってお勧めできる。
11月21日からは廉価版が3,990円で販売するので、気になっていたけどまだプレイしてない方はぜひこの機会に遊んでみて欲しいと思う。
人間の心を宿すアンドロイドは『命』なのか、それとも『モノ』なのか。
その答えを導き出すのは貴方です。
今回は『Detroit: Become Human』の紹介でした。
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