消費増税の影響を緩和するためのポイント還元策をめぐり、世耕経済産業相が「カード手数料に上限を設定すべき」と発言したことからクレジットカード業界が騒然となっている。
日本のカード会社は加盟店に対して高めの手数料を徴収しているが、この手数料負担の大きさが、日本でカードが普及しなかった要因のひとつとも言われている。カード手数料の高さについては、これまで議論されることがほとんどなかった。業界関係者からは「とうとうパンドラの箱が開いた」との声も聞かれる。
世耕経済産業相は10月19日、記者会見において突如、クレジットカード会社に対し、手数料の引き下げを要請する考えを明らかにした。世耕氏は「日本はキャッシュレス対応が遅れている」とし、その理由のひとつとして「手数料負担の重さ」に言及。消費増税対策として議論されているカード利用者へのポイント還元策と平行し、手数料の引き下げ措置が必要との考えを示した。
これは政治家としての個人的な発言というよりも、経済産業省の事務方と事前にスリ合わせたものと考えられ、同省全体の意向を示している。この発言に株式市場は動揺。クレディセゾンなど、一部カード会社の株価が急落するという騒ぎになった。
最近ではQRコード決済など、安価な手数料で決済できる新しいインフラも登場してきているが、クレジットカード以外にキャッシュレス決済ができなかった時代においては、カード会社の高額な手数料がキャッシュレス普及の妨げになったという話はあながちウソではない。
顧客がクレジットカードで買い物をすると、カード会社は加盟店に対して利用料の一定割合を手数料として徴収するが、この手数料はカード会社にとって重要な収益源のひとつとなっている。
一方、カード決済を受け付ける飲食店や小売店など加盟店にとって手数料の負担は重い。カード利用の顧客に対して手数料分だけ金額を上乗せすることは規約で禁じられており、顧客には現金と同一金額を請求する必要があるので、手数料はそのまま損失となる。
これは消費者保護のルールとして国際的に一般的なものとなっており、一部の国を除いて、顧客が望む決済手段を拒否したり、特定の決済手数料を顧客に負担させることはできない(現実にはカード払いの場合、価格を引き上げる店は存在しているが……)。
事業者にしてみればカード加盟店になると損するわけだが、カード払いの顧客は高額の買い物をしてくれる可能性が高いことや、カード決済ができないことで他の店に顧客が流れるリスクなどを考えると、カード対応しておいた方が得策ということなる。